きっかけは? コツは? お肉の目利きで日本一になった宮崎大学の礒島聖良さんに話を聞いてみた!
皆さんは、『全日本大学対抗ミートジャッジング競技会』という大会をご存じでしょうか? この大会は畜産を学ぶ学生が参加し、お肉の目利きの正確さを競うもの。2009年から開催され、7回目となる2015年大会は3月4-6日に行われました。この第7回大会の「総合部門」で1位に輝いたのが、宮崎大学の農学部・畜産草地科学科の礒島聖良さん。今回は、肉の目利き大学日本一になった礒島さんにお話を伺いました。
■きっかけは実際に家畜に触れ合ったこと
――礒島さんが畜産の世界に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
礒島さん 親戚に農家をしている人がいて家畜に触れ合うことがあり、そこで畜産という世界に興味を持ちました。
――実際に家畜に触れ合ったことが最初のきっかけだったのですね。
礒島さん 他にも、お肉を食べることが好きだったので、その生産方法や日本の食肉事情、海外との輸入・輸出の現状を学び、将来食肉に関係する職業に就きたいと思いました。私の出身県である宮崎県は畜産が盛んなので、その技術などを学びたいと考え宮崎大学農学部畜産草地科学科に進学しました。
――大学ではどんなことを学ばれているのでしょうか?
礒島さん 大学ではウシ、ブタ、ニワトリといった、いわゆる家畜と呼ばれる動物の飼育方法や、食肉加工・鶏卵・酪農などの生産過程。またそれらがかかる病気や生態についての生理学的なことはもちろん、飼料としての植物の生産や、家畜とその生産を支える草地、環境についてなど幅広く学んでいます。
他にも、大学に付属の牧場があるので、実際に家畜のお世話をしたり農業機械を動かしたりなど、座学で学ぶだけではなく、学んだことを実践することもできています。
――2015年の『全日本大学対抗ミートジャッジング競技会』に出場されたわけですが、出場が決まってから普段の学習以外にトレーニングなどはされましたか?
礒島さん 競技会ではウシ、ブタの肉の格付けに加え、それぞれの部分肉・精肉の判定があります。まずは資料などを見て格付けの基準や部分肉・精肉の名称、形、特徴を覚えるようにしました。そして、それまでに実際にウシやブタの枝肉を見たことがなかったので、近くのと畜場で見学をさせてもらいました。
――いわゆる実地訓練ですね。
礒島さん そこでは格付けを行う職員の人に、見るべきポイントや資料には載っていない細かな部分を教えてもらいました。その後、本番と同じように時間を計ったりして競技会に向けての訓練をしました。写真で見るのと実物では大きな差があり、覚えることが大変でしたね。
■同じ志を持つライバルたちと切磋琢磨(せっさたくま)
――競技会ではお肉の格付け以外にどんなことを行いましたか?
礒島さん 競技会は3日間あり、まず初日に食肉産業に関するセミナーが実施され食肉産業への理解と造詣を深めました。より食肉について理解を深めるために、ここではなるべく多くの学生や講師の先生と意見を交換することに努めました。次の日はオリエンテーションがあり競技会中の注意点などを詳しく聞いたり、講演や格付けに関する講義と実習がありました。
――競技会ではどんな点に特に注意していたのでしょうか?
礒島さん 使用される枝肉は「商品として実際に出されるもの」を使用しているため、衛生面には特に注意しました。最終日に行われた本番では、短い期間なりに学んできたことを発揮できるよう、ある程度緊張しつつも冷静に競技を進めていきました。競技は休憩を挟みつつ、ウシの格付け3クラス、ブタの格付け2クラス、部分肉・精肉の判別1クラスとトータルで3時間ほどかかるので、とにかく集中力を切らさないように注意しました。
――競技会に出場し、驚いたことや勉強になったことはありますか?
礒島さん まず他の大学の学生の人たちと意見を交えることができたことは、自分の中でとてもプラスになりました。皆さんそれぞれ食肉について興味のある人ばかりなのでその知識はとても勉強になりました。
また、競技の面で、格付けが完全に人の目だけで行われることに驚きました。基準などはあるものの、判断するのは人で、その人が出した結果で格付けが決まり単価が決まってしまいます。そのため、格付けを行うことは大きな責任が伴うことを知りました。この競技会に出場していなければ知ることのなかったことなので、とても勉強になりました。また、セミナーや講演を通して、食肉の生産だけでなく、流通や販売、消費など幅広い視点で学ぶことができたので出場して良かったと思います。
■畜産の魅力を学び、その魅力を伝えていく側に……
――大学で4年間「畜産」について学んでこられましたが、その魅力は何だと思われますか?
礒島さん 食肉や鶏卵、牛乳などは普段の食生活に欠かせないものですが、あまりその生産について詳しく知ることはないと思います。それらがあるということは生み出す家畜がいて、それを支える飼料があり、飼料を育てる環境が整っているということです。何げなく口にしているものは多くの命の上にあります。畜産について学ぶことで命を育み、命を食することの大切さと厳しさを感じることができます。
また、日本は農業が盛んであるので、畜産を学ぶことは日本を支える重要な柱の一つだと思っています。このように「やりがいのあるところ」が畜産の魅力的だと思っています。
――卒業後はどんなことをしたいですか?
礒島さん 食肉関係の企業に就職できたので、日本の食肉のおいしさを伝えることをしたいです。現在日本はTPP合意内容により食品の一部の関税が撤廃、もしくは引き下げられてしまいます。牛肉に関しては現行38.5%の関税が、発効後16年目以降には9%まで引き下がります。そうすると海外の安い牛肉が大量に輸入されて国内消費が低下してしまうかもしれません。その結果農家にも大きなダメージになると思います。そのダメージを少しでも和らげるためにも日本の食肉の魅力を伝え、日本の食肉を支えていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
家畜に触れ合うことで畜産に興味を持ち、ついには肉の目利き日本一になるまで研さんを重ねられた礒島さん。畜産を学ぶだけでなく、今後は畜産というものを「伝える側」へとステージアップされるとのことです。こうした熱い志を持つ若者がいるということは、日本の食肉産業にとって大変に心強いことなのではないでしょうか。
(中田ボンベ@dcp)