弁護士に聞いた! TPP交渉で「コミケ」の存立が危ない!?
年に2回開催される同人誌即売イベント『コミックマーケット』、いわゆる「コミケ」は日本のみならず世界的にも注目されるイベント。動員数は50万人を超え、多くのコミック・アニメ・ゲームファンが楽しみにしている祭典です。しかし「TPP交渉」によってその存立が危ぶまれているという話があります。何が問題で、どうすればコミケを守れるのでしょうか!?
アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士にお話を伺いました。
■TPP交渉でコミケが困る!? なぜ?
――TPP交渉でコミケが困ったことになるという話がありますが。
篠田弁護士 コミケとは、ご存じのとおり「コミックマーケット」の略称です。コミケでは、コミックマーケット準備会の主催により、自費出版物の展示販売が行われています。そこで販売される自費出版物は、コミック(漫画・アニメ、ゲームなど)のキャラクターや設定を基にして、独自の絵柄やストーリーという創作性を加えたいわば「二次的著作物」となります。
――一次創作物もありますが二次創作物は多いですね。
篠田弁護士 皆さんもうすうす感じているかもしれませんが、このコミケで販売されている作品は、「元の著作物を利用している」点において、著作権法の問題が生じる可能性が高いわけです。
ただ、現在のコミケの実情は、日本の法律上も「著作権法違反」となる可能性があるにもかかわらず、これが「事実上黙認」されている状態といえます。
――確かに法的に取り沙汰されたことはあまりないかもしれませんね。
篠田弁護士 コミケは、元の作品の著作権者にとっても、
(1)自身のファンによる活動の一環といえること
(2)自身の作品の宣伝効果もあること
(3)作者自身もコミケに参加した経験があること
(4)侵害を訴えてもこれに見合う損害額が期待できないこと
等の理由から、黙認するのはむしろ当たり前という認識なのかもしれません。
著作権者が同意を与えている以上は、著作権法違反とはなりませんし、著作権法違反が犯罪になるためには、著作権者の告訴が必要とされていることから、日本ではコミケは「事実上問題視されていない」というふうにもいえるかもしれません。
ただ、TPP交渉により、「著作権法違反は告訴がなくても犯罪として扱える(非親告罪化)」など、「著作権法違反」に対する扱いが厳しくなると、話は違ってきます。コミケはもはや著作権法上の問題が多くあるということで、開催が難しくなる、その存続さえ危うくなる、といったことが危惧されているのです。