弁護士に聞いた! TPP交渉で「コミケ」の存立が危ない!? 3ページ目

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目次
  1. ■TPP交渉でコミケが困る!? なぜ?
  2. コミケは「著作権法違反」なの?
  3. TPP交渉で変わる著作権の考え方とは

■TPP交渉で著作権の考え方が変わる!? 何が問題!?

――TPP交渉によって著作権について具体的に何が問題になるのでしょうか?

篠田弁護士 TPP交渉における著作権の検討内容として、

●著作権侵害の非親告罪化

●著作権保護期間を現在の50年から70年に延長

●著作権侵害における法定賠償金の導入

などが挙げられます。

現在の日本では、上記のように、著作権法違反は「親告罪」なので、著作権者が「告訴する」というアクションに出ない限り、犯罪として罪に問われることはありません。

しかしながら、これが「非親告罪」となると、著作権者が意図しなくとも、捜査機関が自らの判断によって「著作権法違反だ」と考えた場合には、「取り締まり」や「捜査を開始」することができてしまうことになります。

――これは大きな変更ですね。

篠田弁護士 これまでは事実上「黙認」されてきたコミケの開催やコミケでの販売行為ですが、TPPにより「著作権者が黙認していても、犯罪行為として扱われることになる」という可能性があるわけです。

また、著作権の保護期間が70年に延長されることにより、「50年前に作成された作品を使う予定だった」など、50年の保護期間を前提に著作物の利用を予定していたようなケースでは、予定どおりに著作物が使えなくなったという弊害が生じる可能性があります。

ただ、この点はコミケにおいては、最近話題のコミック、アニメということが多いと思いますのであまり関係ないかもしれません。

――しかし、かなりのインパクトがありそうです。

篠田弁護士 法定賠償金制度の導入も、大きな影響があると考えられます。

法定賠償金制度とは「損害の立証がなくとも、裁判所が、法律で定められた金額を賠償として支払わせることを命じることができる」制度です。

これまでは、損害の額を著作権者が証明しないと賠償してもらえなかったのですが、例えば一つの作品につき「数百万円」という賠償金の計算が形式的にできる可能性が出てくるということです。

賠償請求をしやすくなったことにより、これまでは「さほどの額にはならないだろう」と考えていた作者が、法的措置に至る可能性や、作者自身が訴訟を起こさなくとも、その相続人らが利益の獲得を狙って訴えを起こす等の可能性も出てくるわけです。

コミケの主催者側としても、著作権侵害をほう助したとして、訴えられる相手方になる可能性があります。

■コミケを開催できなくなる可能性がある!?

――TPPによって実際に日本のコミケはどうなってしまうのでしょうか?

篠田弁護士 このようにTPPによる影響を見ていくと、「コミケは一切開催できなくなるのではないか」と懸念の声が上がるのも当然です。

ただ、実は、そう大きな問題とならないことも考えられます。というのも、著作権法違反となるのはあくまで、「著作権者の同意がない」場合です。なので、コミケの開催に先立って、事前に著作権者の包括的な同意を取っておくことにより、著作権法違反として犯罪視・問題視されること自体を防止できるという対応策もあり得ます。

――事前に著作権者の許可を得るわけですか。

篠田弁護士 また、実際に捜査機関が動いたとしても、まずは「著作権者の同意があるかどうか」を確認するでしょうから、著作権者が「同意あり」と回答した場合に捜査機関が立件できるか、というとこれは相当に困難であろうと思われます。

今後、著作権にまつわる制度の改正や、捜査機関の運用次第といったところはありますが、著作権侵害については「著作権者の同意があれば侵害とならない」という大前提に変化がない以上、さほど危惧することではないようにも思われます。

――なるほど。

篠田弁護士 むしろ、実際の捜査がどうなるかよりも、事実上の影響を危惧すべきといえるでしょう。例えば、「著作権法違反が非親告罪化される」という事実により、著作権者が過度に意識し、これまで黙認していた態度を一変し、「著作権侵害は許さない」という態度に変化することが考えられます。

また、コミケで自費出版物を販売する側、すなわち「二次的著作物」を作る側が、「著作権侵害として訴えられるのではないか」「犯罪者になってしまうのではないか」と恐れてしまい、作品を作らない、販売はやめる、という姿勢に変わっていくことが懸念されます。

コミケ主催者側も、「著作権侵害や犯罪をほう助している」と判断されるのは怖いので、主催自体やめてしまうか、相当な小規模で開催せざるを得ないという方向に転化していくことも予想されます。

TPPにより「著作権侵害に対する取り締まり強化」などとニュースになれば、やはりトラブルに巻き込まれたくないという思いから、上記のような各立場での萎縮は避けられないように思います。

――確かに十分にあり得ますね。

篠田弁護士 コミケは、元の作品の著作者に対する敬愛を示す場であるとともに、作者にとっても思い出の場所です。そして何よりも、豊かな表現力を養う場であるとともに、未来のクリエーターを作り出す大切な場となっています。

コミケは、日本の芸術の発展の一翼を担っているといっても過言ではありません。このように、コミケが、「日本の芸術を豊かにする機会」を与える場であると考えると、TPPによりそのような機会が奪われることとなるのは非常に残念なことです。

――今後の課題は大きいと考えないといけませんね。

篠田弁護士 TPPに対する危惧ばかりが独り歩きしているイメージもありますが、TPPによっても日本における「芸術分野の成長」が妨げられないための方途がないか、検討することが重要です。

コミケの開催に関する法整備を充実させることや、「著作権侵害を未然に防ぐルール」を主催者側で制定するなど、TPPによっても「コミケの存立が危うくならない」よう制度を充実させていく努力が要求されそうです。

――ありがとうございました。

TPP交渉によってコミケが制約される可能性があることは確かなようです。しかし、コミケの存立を危うくしないようにその方法を模索することが求められています。

⇒アディーレ法律事務所

http://www.adire.jp/

(高橋モータース@dcp)

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