【2040年の日本はどうなってる?】デロイトトーマツが本気で取り組む大学生×企業の未来共創プロジェクト「夜明け会議2025」に迫る
先行きが見えにくく、不確実性の高い時代。そんな不安の多い状況(=夜)を、ただ受け身で待つのではなく、自分たちで未来を予想し、切り拓いていこう。そんな思いのもと進められてきた未来共創プロジェクト「夜明け会議2025」。その集大成となるフォーラムが2026年3月23日、帝国ホテルで開催されました。合同会社デロイト トーマツが主催するこのプロジェクトには、大学生と社会人あわせて約300名が参加。15社・15校が賛同し、食卓、健康、旅行という身近な3つのテーマについて、約半年にわたるワークショップで描いた「未来シナリオ」を共有しました。その他にも、2つのセッションが行われました。学生と企業が立場や世代を超えて交わり、未来を本気で考えた模様をレポートします。
学生の感性と社会人の知見が重なり合う。2040年の未来シナリオ
第1部では、「食卓」「健康」「旅行」の3つのテーマについて、学生と社会人がペアで登壇し、約半年にわたるワークショップの成果として、2040年の未来シナリオが発表されました。ベースにしているのは「シナリオ・プランニング」という手法です。不確実性の高い未来を一つに決めつけるのではなく、複数の可能性を描いたうえで「どの未来を目指すのか」を考えるアプローチで、テーマごとに2つのグループが異なる視点からシナリオを提示しました。
「食卓」では、食の選択肢や食卓の役割がどう変わるかが整理されました。ひとつのグループでは、食卓が人と人をつなぎ、幸福を高める場として機能し続ける未来を提示。もうひとつのグループは、食文化の多様化が進み、食卓が自己表現の場にもなっていく可能性を共有しました。方向性は異なっても、「食が人の生活を豊かにする存在である」点は共通しており、特に学生の発表からは、多様性や個人の価値観を重視する視点が強く感じられました。
「健康」では、人々の行動変容とデータ活用のあり方が軸となりました。ひとつのグループは、国の後押しとテクノロジーを活用しながら、一人ひとりが無理なく自分に合った健康を追求できる社会を提案。もうひとつのグループは、データ連携とサービスの融合によって、自然と健康になれる環境が整う未来を描きました。登壇した医学生は、健康の定義が多様化していくことに触れ、「一人ひとりの価値観に寄り添う医療の重要性」を語りました。
「旅行」では、体験の多様化と地域との関係性に焦点が当てられました。ひとつのグループは、先端技術による新たな体験と地域固有の魅力が融合し、日本全国が目的地となる未来を提示。もうひとつのグループは、個々の価値観に応じた自由な旅が広がり、地域と共生する形で観光が発展する姿を描きました。学生からは「2040年が身近に感じられた」という声もあり、未来を自分ごととして捉える変化が見られました。
経営者とZ世代の対話により、リアルに見えてきた 2040年の論点
第2部では、「経営者×Z世代ラウンドテーブル」として、企業の経営層3名と学生3名が登壇し、「2040年を見据えた優先課題と共創の条件」をテーマに議論を交わしました。第1部で発表された「食卓」「健康」「旅行」の未来シナリオを踏まえ、現実の課題と重ね合わせながら語られていた点が印象的でした。
「食卓」をめぐる議論では、株式会社Mizkan 代表取締役社長 兼 CEOの槇亮次氏が「コスパ・タイパ・ウェルパ」という視点を提示し、効率性だけでなく、幸福感や心地よさまで含めた価値の重要性を語りました。
一方、食卓のプロジェクトにも参加した慶應義塾大学2年の小野日向汰さんは、日常ではタイパを重視しつつも、友人との食事では「人とのつながり」を大切にしていると発言。効率とつながりをどう両立させるかが今後の食卓の鍵であることが浮かび上がりました。槇氏はさらに、人口減少に伴って食も変化していくとしつつ、「食を楽しみたい」という欲求は不変であり、そこに食産業の可能性があるとも語りました。
「健康」のテーマでは、第一三共ヘルスケア株式会社 代表取締役社長の内田高広氏が、医療資源が限られる2040年に向けて、OTC医薬品を活用したセルフメディケーションの重要性を提起しました。
これに対し、国際基督教大学2年の福井凱大さんは、その重要性は認識しつつも「どの薬を選べばよいかわからない」と率直な不安を共有。内田氏は、薬剤師や登録販売者への相談、情報提供の充実など、適切な選択を支える環境整備の必要性を示しました。さらに学生側からは、ウェルビーイングは食や旅行とも密接につながるとの視点が示され、健康を支えるには業種を超えた連携が重要だという提案もありました。
「旅行」をめぐっては、株式会社JTB 執行役員の玉垣知子氏が、若い世代を中心に日本人の海外渡航が伸び悩んでいる現状を課題として提示。
これに対し、立教大学3年の日高愛梨さんは、若い世代には海外へ行きたい気持ちはあるものの、物価高などが大きな壁になっていると説明しました。実際、費用面の制約から渡航先がアジアに偏るなど、選択肢が狭まりやすい現状も語られました。一方で、「SNSで見ても満足はできず、実際に行きたい気持ちは残り続ける」「偶然の出会いや予期せぬ体験こそが旅行の価値」といった声も上がり、リアルな体験の重要性が改めて共有されました。
玉垣氏は旅行を「移動」ではなく「交流を創造する事業」と位置づけ、世代や地域を超えたつながりの価値を強調しました。さらに槇氏は、国内市場が縮小する中で海外展開の重要性は高まるとし、海外経験は単なる消費ではなく、企業や個人にとって将来の価値につながる「投資」だと説明。円安などを理由に立ち止まるのではなく、海外経験を前向きに捉えるべきだと提言しました。
議論から実装へ 未来を形にするためのアクション提言
第3部では、主宰者でデロイトトーマツグループの伊東真史氏がモデレーターを務め、企業経営者ら3名とともに社会実装に向けたアクション提言が行われました。
ロイヤルホールディングス株式会社 代表取締役会長の菊地唯夫氏は、外食各社が連携してプラントベースフード(植物由来の原料でつくった食品)の品質向上に取り組んだ事例や、ロイヤルホストの定休日を活用した子ども食堂の取り組みを紹介し、社会価値と経済価値の両立の可能性を示しました。
株式会社西武ホールディングス上席執行役員 経営企画本部長の原田武夫氏は、沿線自治体との連携やサーキュラーエコノミー、西武ラボでの共創を通じた地域価値の創出を説明。
やる気スイッチグループ 代表取締役社長の高橋直司氏は、教育格差や日本の学歴水準の課題、努力が軽視される風潮といった根源的な問題を挙げ、「教育こそがすべての社会課題の基盤である」と強調しました。
また伊東氏は、第1部のワークショップを受けて、2つの社会実装がすでに動き始めていることも共有。まず一つ目は若者の海外体験を支援する「学生向け“旅”ソーシャルインパクトファンド(仮称)」、次に食や健康に関する望ましい行動の習慣化を目指す「“食・健康”のNEW NORMAL 2040(仮称)」についての取り組みに触れ、未来を語るだけでなく、具体的な施策として動かし始めている点に、このプロジェクトの特徴が表れていました。
取材を終えて
学生と企業が世代や立場を越えて意見を交わし、その中から生まれた構想が実際の施策として動き始めている点に、このプロジェクトの大きな価値を感じました。
2026年には新たなテーマでの議論も予定されているとのこと。今回の取り組みがどのように社会に広がっていくのか、そして参加した学生たちがその後どのように関わっていくのかも、引き続き注目したいと感じました。






































