【パリ五輪でのバレーボールにおける攻めのサーブは正解だった?】「行動経済学が勝敗を支配する」著者に聞いてみた #6行動経済学がパリ五輪を支配する
こんにちは!出版甲子園実行委員会です。
今年度はパリオリンピックということで、日本中が盛り上がっていると思います。 今回、そのパリオリンピックの競技に関する内容について「行動経済学」という観点からひも解いていくべく、『行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも"つい"やってしまう不合理な選択』の著者である今泉拓さんへ取材を行いました。
大注目のパリオリンピックを、新しい視点で楽しんで頂ければと思います。
▼前回の取材記事
【五輪ゴルフ男子で日本快挙!】メダルを獲得のキーは「オリンピックの性質」により働きやすい〇〇だった?! #5行動経済学がパリ五輪を支配するhttps://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/75286
重要なサーブ
5日に行われたバレーボール男子準々決勝で、大健闘の末日本はイタリアに2-3で敗れ、惜しくも52年ぶりのメダル獲得とはなりませんでした。
日本は第1、2セットを連続で奪ったものの、第3、4セットをイタリアに取られ、フルセットにまでもつれる熱戦となりました。
そんな中、第5セットのあるプレーが物議を醸していました。
15-14と勝利まであと1ポイントとなった場面で、小野寺太志選手がサーブミスした場面です。
小野寺選手を擁護する声が上がった一方で、ミスを非難する声もありました。
このプレーについて、スポーツアナリストであり行動経済学とスポーツ分析を掛け合わせた研究を行っている今泉拓さんが得点率の計算を用いて見解を述べてくれました。
攻めたサーブは正解だったか?
今泉さんは、日本ーイタリア戦のデータのうち、サーブレシーブに着眼しました。イタリアの日本戦におけるサーブレシーブ成功率は53.3%。つまり、約半分の確率でサーブレシーブに失敗していたという点です。
ここで、実際にイタリアの得点率はどの程度だったのかを計算してみると、49%という数値になります。
下記の計算式が、イタリアの得点率を求める簡易的なモデルです。
日本のサーブが入る確率×スパイクの成功率 + サーブが入らない確率×1.00
この試合の実際の数値を当てはめると、
0.85*0.40+0.15*1.00=0.49
となります。
一方で、安全にコート内に入れるサーブをした場合の得点率は、スパイクの成功率をXとすると、
1*X=X
です。
コート内に入れにいくサーブは、サーブレシーブが成功し、かつフルパワーのスパイクを打てる確率が高くなります。つまり、イタリアのサーブレシーブが成功し、フルパワースパイクをした際の得点率が0.49を上回る場合、日本は入れに行くサーブではなく、攻めたサーブをするべきと言えるのです。
実際の試合では、イタリアのサーブレシーブが成功したとき、フルパワースパイクを打てる確率は、おおよそ7~8割とみられ、明らかに通常のサーブをしたときよりも得点率が高いと見込まれます。よって、日本の作戦として、攻めたサーブを選択したことは、統計的には合理的であったと今泉さんは考察しました。
視聴者の心理
以上より、小野寺選手の攻めたサーブは非難を受けるようなプレーではないと考えられますが、なぜ非難の声が上がったのでしょうか?
その原因について、今泉さんは視聴者に損失回避バイアスがはたらいていると考えます。
損失回避バイアスとは、得をすることよりも、損を避けるような選択肢を取ってしまいがちになる認知バイアスのことです。
普段あまりバレーボールを見ない人がオリンピックを見たとき、「サーブで失敗するくらいなら、確実にコート内に入るサーブをするべきじゃないか」と考えてしまうことが損失回避バイアスにあたります。こうした考えの人が、攻めたサーブに対して否定的な意見を持ってしまったのではないだろうかと推測しました。
統計や認知科学など、様々なデータを用いるようになっている現在のスポーツ界において、ファンもこうしたデータを知ることで、よりスポーツを楽しめるようになるのではないでしょうか。
*参照データ
https://olympics.com/OG2024/pdf/OG2024/VVO/OG2024_VVO_C83_VVOMTEAM6-------------QFNL000100--.pdfhttps://olympics.com/OG2024/pdf/OG2024/VVO/OG2024_VVO_C69_VVOMTEAM6-------------QFNL000100--.pdf
「行動経済学が勝敗を支配する」日本実業出版社
著者:今泉拓
東京大学大学院学際情報学府博士課程に所属。認知科学・行動経済学の研究をしている。学部時代からスポーツ分析にも取り組み、行動経済学✕スポーツで第18回出版甲子園準優勝を経験。日本実業出版社より「行動経済学が勝敗を支配する-世界的アスリートも”つい”やってしまう不合理な選択-」を出版。
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