【パリ五輪は “ 誤審 ” が多い⁈】 その理由を「行動経済学が勝敗を支配する」著者に聞いてみた #4行動経済学がパリ五輪を支配する
こんにちは!出版甲子園実行委員会です。
今年度はパリオリンピックということで、日本中が盛り上がっていると思います。
今回、そのパリオリンピックの競技に関する内容について「行動経済学」という観点からひも解いていくべく、『行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも"つい"やってしまう不合理な選択』の著者である今泉拓さんへ取材を行いました。
大注目のパリオリンピックを、新しい視点で楽しんで頂ければと思います。
▼前回の取材記事
【パリ五輪におけるバスケの試合でも無意識に影響があった??】
「行動経済学が勝敗を支配する」著者の今泉拓さんに聞いた〇〇の力とは? #3行動経済学がパリ五輪を支配する
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/75196
パリ五輪で注目される“ 誤審 ”
連日盛り上がりを見せる、2024年パリオリンピック。数々のメダルラッシュや『無課金おじさん』の銀メダル獲得など、ポジティブな話題で盛り上がりを見せる一方、ネガティブな話題も多く見られます。
その中でも、特に顕著なのが、“ 誤審 ”と騒がれる判定の数々です。
柔道の永山選手の判定に始まり、男子バスケ フランス戦での八村選手の退場処分や河村選手のファール、男子サッカーのスペイン戦での関根選手、細谷選手のオフサイドなど…。議論を呼ぶような判定が多く、『誤審ピック』ならぬワードさえ出てきています。
なぜ、これほど “ 誤審 ” と言われる判定が多いのでしょうか。『行動経済学が勝敗を支配する』の執筆者で、行動経済学×スポーツに詳しい今泉さんに、その要因を行動経済学の観点から、2点に分けて分析していただきました。
視聴者と審判の判定の分類
今泉さんは、誤審が増えているだけでなく、実は視聴者の ” 誤警報 ” も増えているのではないか、と指摘しています。誤警報というのは、心理学などで使われる用語で「実際には正しいものを、我々が間違っていると判断すること」です。判定に置き換えると、実際には審判の判定は合っているが、視聴者が間違って “ 騒いでいる “ 場合も増えているのではないか、ということです。
一体、なぜでしょうか?
ダニング=クルーガー効果
今泉さんは、誤警報が増える一つ目の理由として、ダニング=クルーガー効果をあげています。簡単に説明すると、少し知識を持っている人がかえって自信過剰に陥りやすく、結果として、知識を全く持っていない、または十分に持っている人よりも、間違った判断をしてしまう可能性が高いということです。オリンピックでは普段みないスポーツを観戦することも多く、この効果が生まれやすいと考えられます。
例として、スペイン戦のオフサイドを考えてみましょう。
前半 26 分、関根選手が山田選手にパスを出した際、主審が笛をふきオフサイドが宣告されました。しかし、山田選手は明らかにオフサイドではなかったため、実況から困惑した声が上がり、SNS上では、オフサイドでないことを示す写真が出回りました。
しかし、実はオフサイドをしていたのは山田選手ではなく関根選手であり、関根選手がパスを受け取った際にすでにオフサイドであったものの、『オフサイドディレイ』によってオフサイドの判定を遅らせたために、判定と笛のタイミングがずれてしまったのです。
しかし、その知識がない場合、自分の知っているオフサイドに関する知識だけで、『明らかにオフサイドではない』と決めつけてしまう可能性があるわけです。
また、副審が旗をあげておらず、主審が独断で判定したといった論調もみられましたが、副審は旗をあげずとも無線で主審と判定のやり取りするといったこともあり、それを知っているかどうかでまた見方が変わってきます。
さらに別の例として、バスケットボールでは、実は国内のルールと国際ルール(すなわちパリ五輪のルール)が異なり、フランス戦の河村選手のファールの場面では、国際ルールの方がファールを取りやすくなっている事実があるのですが、視聴者は十分それを把握できていないのではないか、といった指摘もありました。
以上から、特にオリンピックでは普段そのスポーツを見ない視聴者も多く含まれることから、十分ルールやシステムの知識がないがゆえに、疑わしい判定に対して早急に判断をしてしまう傾向がある(そしてその判断について自信をもって支持してしまう)と言えそうです。
利用可能性ヒューリスティック
続いて今泉さんは、利用可能性ヒューリスティックの影響をあげています。これは、“利用可能性が高い” 情報(たとえば、記憶に残る画像や思い出しやすい映像)を判断の根拠にしてしまう効果を指します。
具体的な例としては、ファールを“していなさそうな”1枚の画像やオフサイドを“していなさそうな”1枚の画像が SNS で急速に広まったことが挙げられます。
実際は、そもそも投稿者は自分の主張に合致する写真を選ぶことが多いです。スポーツで厳密にファクトチェックをするためには、静止画だけでなく動画を視聴する必要もあり、更に動画の角度によっても判断が変わってくる可能性もあるわけです。
しかし、そういった写真は容易に拡散されていくため、 「これは誤審だ」という論調が勢いを増す一つの要因になっているのではないか、と今泉さんは指摘しました。
「行動経済学が勝敗を支配する」日本実業出版社
著者:今泉拓
東京大学大学院学際情報学府博士課程に所属。認知科学・行動経済学の研究をしている。学部時代からスポーツ分析にも取り組み、行動経済学✕スポーツで第18回出版甲子園準優勝を経験。日本実業出版社より「行動経済学が勝敗を支配する-世界的アスリートも”つい”やってしまう不合理な選択-」を出版。
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