「筋肉痛」を早く回復させる方法は? 予防策はあるの? #もやもや解決ゼミ
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日常に潜む「お悩み・ギモン」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。
今回は「筋肉痛を早く回復する方法はあるの?」です
大学生読者の皆さんの中には、体育会系サークルに入り、日々鍛錬している人もいらっしゃるでしょう。練習後に筋肉痛に悩まされているという方はいないでしょうか。また、急に運動して筋肉痛になった、といったこともあるかもしれません。
一般的に筋肉痛 (遅発性筋肉痛と呼ばれるもの)は、運動中ではなく、運動が終わった後、数時間から数日後に起こる筋肉に感じる痛みのことをいいます。
では、この筋肉痛を早く解消する方法はあるのでしょうか?
「筋肉痛を早く回復する方法」について、『筑波大学』体育系 運動生理学研究室 藤井直人助教にご回答いただきました。
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「筋肉痛はこれで起こっている」というメカニズムについては、まだよく分かっていない部分もあるのですが――運動によって筋線維に微小な損傷が起こり、それをきっかけに炎症が起こり、最終的に腫脹に伴って痛みが発生するのではないか――という説が多くの研究者に支持されています。
●運動後の冷却は炎症を抑えるという論文がある
運動後の冷却には筋肉痛を緩和する効果があるといわれています。
スポーツをした後にアイスバスに入ったり、冷たい水に漬かったりすると炎症を抑えるのに効果がある、という論文があるのです。
また、湿布やシャンプー、ガム、のど飴などに含まれているメントールという成分は、冷感をもたらす物質として有名ですが、メントールを筋肉痛が起こっている部位に塗ると、痛みが少し和らいだという報告もあります。
ただし、気を付けていただきたいのは、「運動後の冷却」「メントール」のどれも筋肉痛を完全に解消できるというものではありません。
あくまでも程度の問題ですが、例えばアスリートにとっては、小さくても「効果がある」ことが大事ということもあります。
ただし、本来なら筋肉痛があるから運動せず体を休めていたのに、筋肉痛を和らげることで無理して運動を続けると 、回復が遅れたり、ケガに繋がったりする 可能性もあります。スポーツの試合のように、筋肉痛を少しごまかしてでも頑張る必要がある場合は別ですが、本当に筋肉痛がひどい場合は、体を休めることも大事です。
●筋肉痛を起こさないためには? 予防策はある?
筋肉痛を起こさないためには、
・エキセントリック運動を避ける
・前もってトレーニングする (repeated bout effectといわれる適応現象)
―― のが効果的であると思います。
「エキセントリック運動」というのは、収縮した筋肉が伸ばされる運動で力が掛りやすく筋肉が傷を受けやいのです。下り坂を走るのは、典型的なエキセントリック運動です。
これを避けると筋肉痛を抑えることができると考えられます。ただ、スポーツ、運動は大なり小なりエキセントリック運動を含んでいますので、筋肉痛を完全に避けて運動するというのは難しいです。
前もって筋肉痛が起こる運動をしておくと、強力な予防効果が生じます。
激しい運動をして筋肉痛が起こっても、次に同じような運動を実施したときに感じる筋肉痛の程度は大きく軽減されます。
つまり、体がその運動に適応するのです。これが「repeated bout effect:繰り返し効果」といわれるものです。しかも、その効果は2カ 月程度持続し得 ることが分かっています。
●筋肉痛の回復に最近注目されている「クルクミン」
筋肉痛を早く回復させたいのであれば、タルトチェリー摂取や「クルクミン」などのサプリメントが有効であるとの報告があります。
クルクミンは「うこん」に含まれています。うこんはカレーに使われるスパイスなので皆さんもご存じかもしれません。
最近、クルクミンに「筋肉痛の回復に役立つ・痛みを和らげる」といった効果があるかもしれないということで注目されており、にわかに研究が進んでいます。
ただし、カレーに入っているうこんの量は少なく、吸収が良くないので、カレーを食べたから筋肉痛が回復するということではありません。あくまでもサプリメントを服用することで効果があったという研究があります――ということです。しかし、効果がなかった、という報告もあり、誰にでも効果があるというわけではないかもしれません。
●歳を取ると筋肉痛が遅れてくる?
「歳を取ると筋肉痛が遅れてくる」といわれますが、加齢が筋肉痛に及ぼす影響の結果は一致しておらず、少なくとも遅れるとははっきり言えないと思います。
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◇けつろん!
筋肉痛がどのようなメカニズムで発生するのかは、現在でも正確には分かっていないとのこと。
ただ、研究は進んでおり、「運動後の冷却」「メントール」「クルクミンなどのサプリメント」などには筋肉痛の軽減に効果があるかもしれない 、という論文があるそうです。
しかし、人間の体の適応能力はすごいもので、「repeated bout effect」を利用すれば筋肉痛は起こしにくくなるのです。つまりは、筋肉痛を起こさないためには普段から運動しようということですね。
大学生読者の皆さんも急に激しい運動をするのではなく、普段から運動しておくのが筋肉痛の予防にもなってお勧めです。
◇教えてくれた先生
藤井直人
Profile
『筑波大学』体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。『筑波大学』体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を生かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。
取材協力:筑波大学 体育系『ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)』
https://www.arihhp.taiiku.tsukuba.ac.jp/
文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部