「過去を振り返って1ミリでも前進できているなら人生を円滑に進められていると思う」Novel Core連載vol.10
「ステージが見えなくても聴いているだけで涙が出るライブを目指したい」Novel Core連載 vol.9
新世代のラッパー、シンガーソングライターとして多彩な活動を続けるNovel Coreさんのキャリアや表現者としてのこだわりに迫る連載企画。連載最後となる第10回目は2024年1月18日にサプライズリリースしたメジャー3rdアルバム『HERO』の制作秘話、影響を受けたアニメ、今後のヴィジョン、そして学生の窓口読者へのメッセージなどを語っていただきました。
ピースをはめていくように制作したメジャー3rdアルバム『HERO』
――メジャー3rdアルバム『HERO』の制作はいつぐらいから始まったのでしょうか。
去年の3月ぐらいだったと思います。アニメ『キングダム』のエンディングテーマということで、アルバムに収録されている「RULERS」の制作が先に走っていたので、そこからがスタートで。アルバム全体に着手し始めたのが5月ぐらいで、1ヶ月に2、3曲のペースで曲を作っていって。同時に武道館のプランを動かしていましたし、その時期は対バンツアーもやっていました。
――多忙な中で進んでいたんですね。制作当初からコンセプトはあったんですか。
当初からコンセプトと、何となくの曲数と、やりたい曲のテンション感は決まっていて、ピースをはめていくような制作でした。とはいえ、今思い返すと我ながら頑張ったなと(笑)。デモに関しては並行して作っていた曲が多くて、Novel Coreあるあるなんですけど情緒不安定を疑われるレベルで、全く振り幅の違う楽曲同士を同時で作ったりするんです。過去にも「DOG -freestyle-」と「THANKS, ALL MY TEARS」を同時に作っていましたから。
――そのほうがやりやすい部分もあるんですか。
そうですね。日によって感情の起伏が違うので、今日のテンションにハマる曲を制作したほうがいいから、先に形だけでも作っちゃおう、みたいな。今回のアルバムに関しては、一番カロリーを使ったのがTHE WILL RABBITSとゼロイチから作った「HERO」と「カミサマキドリ」でした。特に「カミサマキドリ」はヤマタクさん(山中拓也/THE ORAL CIGARETTES)にオファーしていたのもあって、自分以外のボーカルが乗ることを考えたときに、ちゃんと納得してもらえるものにしなきゃという別のプレッシャーもありました。1曲につきTHE WILL RABBITS 全員で複数回スタジオに入って、ああだこうだ言いながら、丸一日作業する日が何日もありました。
――もう一人ボーカルが入るとバンドアレンジも変わるものですか。
ヤマタクさんと僕の声、ヤマタクさんと僕の音楽性がぶつかり合ったときに、どういうテンションだと一番かっこいいかというところからスタートだったので、アレンジの段階では全体像が見えてはいたんですが、バンド全員で「ここは声の帯域を開けといたほうがいいよね」とか、「ごちゃごちゃし過ぎなんじゃないか」とか、それぞれの意見を出し合いました。
――「カミサマキドリ」はボカロの影響が大きいとお聞きしましたが、バンドでボカロ色の強い曲をやる難しさはなかったのでしょうか。
僕がめちゃくちゃハマっていた時期のボカロPの楽曲ってバンドマターのものが多くて。たとえば当時流行っていた、じんさんが手がけていたカゲロウプロジェクトのヒット曲を聴くと、「バンドじゃん!」みたいな作品が多いんです。「カミサマキドリ」もバンドのテンション感がありつつ、超王道のド真ん中というよりは、ひねくれた要素、皮肉の要素を歌詞にも音にも混ぜて、そうするとボカロっぽくなっていくんですよね。どちらかというとバンドサウンド以上に、上に乗るメロディー、トップラインに意識を使ったかもしれないです。
――ラップとボカロは親和性も高いですよね。
高いと思います。ボカロの曲も言葉数が多いので、ラップとの相性が良くて。僕は反骨精神を歌う曲が多いんですが、ストレートに抗っている様を歌うというよりは、あえて皮肉るみたいな手法が好きなので、そこもボカロとの親和性が高くて。ボカロの歌詞を参考にしながら書かせてもらいました。
――「ex」はAyumu Imazuさんをフィーチャリングしていますが、2年前から親交があったそうですね。
同じ年なのもあって、すごく仲良くしてもらっていて。Ayumuが日本に帰ってきたタイミングで、ちょくちょくご飯に行って、いろんな話をしています。よく音楽シーンやソロミュージシャンシーンを盛り上げる火種を作りたいよねみたいな話をしていて。日本はコラボレーションも海外に比べて少ないし、一緒にやりたいよねと言ってたんですが、なかなかタイミングが合わなかったんです。そんなときにAile The Shotaが大阪でオーガナイズしたイベントにプライベートで遊びに行って。プロデューサーのA.G.Oさんも出演されていたんですが、打ち上げで一緒になって、ShotaがA.G.Oさんを紹介してくれたんです。話してみたらめっちゃフィーリングが合って、Ayumuとも共通の知り合いという流れがあったので、「ずっと前からAyumuと一緒に曲を作りたくて、3人で作りませんか?」と、その場のテンション感でオファーをしたらやってもらえることになって。そこから制作がスタートしました。
――どういうやり取りをしたんですか。
Ayumuがニューヨークにいるので遠隔でやり取りをしながら、僕とA.G.Oさんで1回セッションをさせてもらって、トラックの原型とトップラインを作って。トラックを聴いた瞬間、秒でサビのメロディーが出てきたので、そこだけ僕が吹き込ませていただいて。Ayumuとやり取りをする中で、歌詞のテーマも力が抜けた面白いものにしたいよねという話になって。僕とAyumuが作ると聞いたら、みんなバチバチのダンスミュージックか、チャーチでハッピーな曲の2択を想像するだろうから、もっと裏切る曲がいいだろうと。だったら女の子目線で歌う曲にしてみようかということで、「じゃあAyumuはクズ男をやってよ。それに怒ってる女の子は俺がやるわ」というやり取りで生まれました(笑)。
――レコーディングも遠隔で行ったんですか?
そうです。遠隔でレコーディングをして、改めて文明の進化を感じるというか(笑)。過去にも遠隔での制作はちょくちょくあったんですけど、海外と日本というのは初めてで。でもやりづらさは一切感じずに楽しかったですね。これを機に、海外アーティストとのコラボも積極的にやりたいなという気持ちになりました。
――『HERO』の曲順はどんなことを意識しましたか。
最後の最後で一気に決めたんですけど、あまり深いことを意識せずに、純粋に通して聴いたとき、気持ちよくすーっと心に落ちてくる流れを選ばせてもらいました。バラバラで制作していた曲もあったのに、結果的に流れが綺麗にまとまったので、一貫性を持って作れている証拠だなと大きな自信になりました。
この3年間、ヒップホップシーンの最前線にいる方々とのやり取りは続けていた
――アニメ『ぶっちぎり?!』に使われている魅那斗會のチームソング「ステゴロ」はどのような制作だったのでしょうか。
事前にアニメチームサイドと細かく打ち合わせをさせていただいたんですが、チームソングなのでキャラクターに寄り添ったものにしていく必要があって、普段の作品作りとは全然違っていて新鮮で楽しかったです。「RULERS」のときは、自分自身の人生観と照らし合わせて、共通項を見つけていくみたいな作り方で、それはそれで楽しかったんです。ただ今はパーソナルなものより、いろんな目線に寄り添って作っていくタイミングなのかなという思いもあって。今回のようなタイアップ曲の制作は楽しいですし、どんどん関わっていきたいです。
――和のテイストを取り入れたトラックも最初から決まっていたんですか。
そうです。トラックの段階から世界観が決まっていて、それに沿って作っていきました。オファーをいただいて、作り始めた段階のときは、まだコンテの段階で。キャラクターの相関図と、3話までのマンガでいうネームみたいな下書きを渡されて。そこからキャラクターの立ち位置を理解して作っていったので手探りではあったんですけど、すごく新鮮でした。
――普段アニメは見ますか。
めっちゃ見ます。姉の影響なんですけど、昔からアニメもマンガも大好きで。以前、姉と一緒に住んでいたときは、姉のマンガとフィギュアで溢れかえっていました。フィギュア目当てに、よく姉と一緒に中野ブロードウェイに行ってました(笑)。
――影響を受けたアニメはあります?
たくさんあるんですけど、分かりやすく影響を受けたところで言うと、『テニスの王子様』を見て、テニスプレイヤーになりたいって思った時期があったり、『SLAM DUNK』を見てバスケをやってみたり、マンガですけど『バクマン。』を読んでマンガ家を目指してみたり。『週刊少年ジャンプ』の作品が多いんですけど、『キングダム』は原作もアニメも大好きでした。マンガじゃなくてライトノベル小説も好きで、異世界転生モノを始め、いろいろ読んでいます。
――3月17日から始まる「HERO TOUR 2024」についてもお聞きします。言える範囲で、どんな内容を考えていますか。
距離感を縮めるツアーにしたくて。武道館が終わった後なので、正直どうしたらいいのか分からないというOUTER(※ファンの呼称)も少なくないのかなと。あれだけの長い期間、一緒に共通の目的を持って目指してきたステージをクリアしたという感覚があるので、次は何を目的に応援しようかと、もやっとしている時期だと思うんです。なのでライブを見てもらって、「やっぱ最高だわ」、「何も考えなくても楽しいからライブに行きたい」ってなってもらえるツアーにしたいんです。僕自身、あまり深く考えずに作りたいし、来てくれるみんなも細かく自分の感情を言語化しなくてもいい。「楽しい」しか残らないものにしたいなという気持ちが強くて。セットリストも遊び心のあるものにしたいなと思っています。
――5月にはJAPAN JAM 2024への出演が決まっていますが、一方で今年はヒップホップシーンにも攻勢をかけると公言しています。
今年はよりラップに重きを置きたくて、もっとラップする時間を増やしたいし、ヒップホップマナーを意識したことを、たくさんやりたいなと思っています。というのも武道館単独公演という目標を掲げてから、実現して当日を迎えるまでの3年間は、事実上ヒップホップシーンからは完全に離れていたんですよね。ヒップホップシーンの中にいない状態で、外のシーンをいろいろ見てきたことで、たくさんのことを感じて。中も外も知っている僕の目線だからこそ言えることや、できることってあるんじゃないかなっていうのはすごく思うんです。だからヒップホップシーンに対するアプローチは今年・来年とより意識したいですね。
――具体的に考えていることはありますか。
フェスもそうですし、コラボレーション面も含めて、ヒップホップシーンを意識したいなと思っています。意外と外に見えていないだけで、この3年間も、ヒップホップシーンの最前線にいる方々とのやり取りは続けていたので、お互いの状況は分かっているんです。だから今後もコミュニケーションは円滑に取っていきたいですね。
過去を振り返って1ミリでも前進できているなら人生を円滑に進められていると思う
――今のヒップホップシーンは、Coreさんと同世代の活躍が目覚ましいですよね。
それぞれのスタイルで、ちゃんと結果を出している人たちばかりなので、そこに関しては僕から言及できることはなくて。でも世代ごとのコミュニティの強さ、ユニティの強さは大事なことだと思います。割と今は個々での爆発がドカンドカンと偶発的に起こっている。それを何となく一括りにして「ヒップホップが好き」という層が多いと感じています。『HERO』の1曲目「I AM THE」の歌詞に書いているんですが、フェスだと何万人単位の人が集まる状況になっているのに、個々の単独公演の規模で言うと、みんながZeppクラスを当たり前のようにやっているかというと、そうではない。そういう不思議な状況に今のヒップホップシーンは陥っているので、そこは自分がプラスな影響を与えられたらいいなって気持ちもありつつ、逆にヒップホップシーン独特の雰囲気から学ぶものもいっぱいあるので、その中に入って染まりつつ、染めつつみたいなのをやりたいですね。
――もうすぐ新年度ですが、ライブ以外で考えているヴィジョンはありますか。
明確なところで言うと、アルバム単位での制作を一旦ストップしようと思っています。まとまった作品を作るのに、一年の大半のカロリーを消費するよりかは、デモ段階のものも含めて、シングルを量産しようかなと思っていて。クオリティが高くて、自分が納得いくものを突き詰める作業を、もう少し丁寧にやったほうがいいフェーズな気がするので、1曲単位の向き合い方を変えて。一方で良い意味での緩さというか。仕事・制作・締め切りが決まっているものじゃなく、友達のプロデューサーやアーティストとノリでセッションして、1分半のワンコーラス尺のデモができて、みたいなことを、もっといっぱいやって、自分のポテンシャルや引き出しを増やしたいです。
――シングルを量産することで、どんな収穫がありそうですか。
みんなが自分に対して、どんなものを期待してくれているのかが、シングル単位で出していくことで、もう少し解像度が高くなる気がします。今は「こういうことをやってみるのがいいんじゃないのか」というカンみたいなものや、単純な好奇心がいっぱいあって。それを一つひとつ実際にチャレンジして実行に移していくことで、見えてくるものがいっぱいあるのかなと。ヒットロジックみたいなところも含めて、いろいろ試して実験してみたいことがたくさんあります。
――メディア戦略で考えていることはありますか。
そこが本当に難しいなと思っていて。今はいろんなタイプのアーティストがいるじゃないですか。テレビとかでは全く見ないけど、めちゃくちゃ売れてるアーティストもいれば、逆にそういうところでの露出を綺麗に組み立てて、軌道に乗っていく人たちもいっぱいいるし。もちろん、そのどちらでもないアーティストもいるはずで。TikTokにしろ、インスタグラムにしろ、それぞれがメディアを持っている時代ですからね。大きなメディアに依存しきっちゃう形になるのも良くない気がするし、かといって変に遠ざけて、謎に強いアンダーグラウンド志向を無駄に持つ必要もない気がするし。ちゃんと甘えるところは甘えつつ、自分発信でやるべきところは自分発信でやりつつというのをバランスよく両立してきたいです。
――最後に、武道館公演のラストで「誰もが一人じゃないことを伝えていきたい」といった意味のことを仰っていましたが、将来や人間関係などで悩んでいる学生にメッセージをお願いいたします。
どちらも難しいですよね。僕も悩みます。若いうちから未来に対して漠然とした不安を抱えてみたり、よく分からないけど上手くいかないなってムシャクシャを感じてみたり。でも、それだけ真剣に考えて、真面目に生きている証拠だし、すごく尊いことでもあるのかなと。ただ悩んでばかりではなく、ちゃんと要所要所で自分のことを褒めてあげるのが一番大事なのかなと最近は思います。あと適度に後ろを振り返るのもすごく大切だと思っていて。
――振り返るというと?
僕で言えば、この3年間、武道館を目指して、前だけを見てやってきました。でも前だけ見ていると、失っていくものに対する恐怖心が、どんどん増えていくんですよ。これも、いつかなくなっちゃうのかなとか、後戻りするのかなとか、弱気な部分が出てくるんです。
――今もそういう不安を感じることはあるんですか。
無限にあります。武道館の後なんて一生不安ですよ(笑)。ちゃんと不安になるんだって自分でもびっくりします。でも何もないところからスタートしているのは誰もが共通していることじゃないですか。何もなかった時代を振り返ることで、「あの頃に比べたら、めちゃくちゃいい状態でしょ?」っていう肯定力みたいなのが、自分の中に出てくるはずなんです。だから振り返るのは、すごく大事なことで。その頃に比べて1ミリでも前進できているんだったら十分過ぎるぐらい人生を円滑に進められているなって僕は思うし、特に学生さんはそう思って生きていってほしいですね。適度に振り返りながら、適切に自分を褒めてください。
PROFILE
Novel Core
東京都出身、23歳。ラッパー、シンガーソングライター。
SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル "BMSG" に第一弾アーティストとして所属。高いラップスキルと繊細な歌唱技術を保有する一方で、決してジャンルに縛られることのない特有のスタイルがファンを集め、アルバム作品が各チャートで日本1位を獲得するなど、メジャーデビュー後の短期間で爆発的にその規模を拡大。Zeppを中心とした大型のライブハウスを周遊する全国ツアーや、日本武道館での単独公演を完全ソールドアウトで成功させるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続ける新世代アーティスト。ミュージシャンとしての存在感を確かなものにする一方で、FERRAGAMOやETROなど、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集めている。
公式サイト:https://novelcore.jp/
Twitter:@iamnovelcore
Instagram:@iamnovelcore
TikTok:@iamnovelcore
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/novelcore
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取材・文/猪口貴裕
撮影/武田敏将