話し上手になるための8つのステップ ~会話では「中庸」を心がけよう~【世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力】 #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・まえれなです。
みなさんは話し上手になりたい!と思ったことはありませんか?
初対面の人と話す時や、プレゼンで大勢の前で話す時など、「もっと上手に話せたらいいのに」と感じる人は多いのではないでしょうか? 様々な実用書を読んで実践してみても、それでもなかなか上達しない....なんてことはありませんか?
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』の著者であるシン・ドヒョン氏は、話し上手になるということはどういうことか、以下のように述べています。
「話し上手」とは、単に話術に長けているというより、絶えず自分を省みて成長し、他人に関心を傾けて理解し、その場の状況を読み取る目を備えた、総合的な力を指す。つまり、「言葉の勉強」というのは、その境地に至ろうとして努力する過程のことだと言っていい。
話術に関する本はすでにたくさん出回っているが、そのほとんどは実用書だ。そのため、どうしても中身は単調になる。話し上手になるための努力の過程をすっ飛ばして、名スピーチの実例やテクニックの紹介に終始し、ただ言い回しの問題にとらわれているために、どんな意味を言葉に込めるのかという、最も肝心な点を見逃している場合が多い。
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』では、話し上手になるために必要な自分磨きのための8つのプロセスを紹介しています。ここではそのうちの1つを一部抜粋してお届けします。
第七章『話術』
喜怒哀楽のどの感情も起きていない状態を「中」と言う。
感情が起きてもそれが節度を保っていれば、
これを「和」と言う。
----------子思
子思(BC492―431年)。中国春秋時代の哲学者。孔子の孫で、孔子の哲学を継承・発展させ、『中庸』を著した。魯の30代君主穆公の師として政治にも関わった。孟子も子思の弟子筋にあたると推定される。
----------引用文出典:『中庸』
儒教の目指すところは「中庸」だ。「中」と「和」を合わせて中和と言うが、中庸と同義語と見てかまわない。中庸とは感情を「節度を保ちつつ」表すこと、すなわち怒るべきときに怒り、悲しむべきときに悲しむことを言う。
感情をむやみに抑えつけて耐えるのは下策であり、ときと場合に合わせて適切に表現するのが本物の中庸である。
まずは感情を適切にマネジメントすることが大切だが、それは決して感情を抑えつけよという意味ではない。感情のマネジメントとは、感情を内と外に向けて解き放つことだ。内に向けて感情を解き放つことが瞑想と悟りであるとすれば、そのような感情を外に向けて表現することが中庸である。
これを言葉に当てはめると、「中庸的な話し方」となる。それは吐き捨てるように話したり、あるいは言いたいことがあっても飲み込んでしまったりする習慣を捨てて、ときと場合に応じた適切な言葉で自分の感情を表現することだ。
腹の立つ状況ではないのに怒りが込み上げるなら、それは自身の問題だが、本当に腹の立つことが続く場合は、ただ怒りを抑えてばかりはいられない。そんなときは、自分が怒っているということを、それとなく相手に知らせたほうがいい。それが自分の精神衛生と相手との関係の持続のためにもなる。
もちろん怒りを過度に表したり、極度に抑え込むのもよくない。感じた分だけ表現し、常識的にいって怒っても無理のない状況だということを、相手にわからせるのが賢いやり方である。
これは怒りを表すときだけではない。両手を打って初めて音がするように、相手がいてこそ会話は成り立つものだ。悲しい話には悲しい反応を見せ、うれしい話には一緒に喜ぶことが、人間関係と会話の基本姿勢だ。何を言っても手応えのない冷たい人と会話したい人など、この世のどこにもいないだろう。
■実際に読んでみた感想
「一つの言葉には、語り手と聞き手の両方の人生が込められている」という本文に入る前の著者の言葉で私はこの本に出会えたことに感謝した。私達は日々、どんな時でも言葉を使って暮らしている。人々とコミュニケーションをとるとき、何か書類を提出する時などさまざまな環境状況において言葉を使わずに生活することはまずないだろう。
そんな時私達はいつの間にか何も考えず言葉を発していないだろうか。誰かと話をする時必ず語り手と聞き手という立場が発生する。その時にどういった解釈をするのかは人それぞれである。語り手の話す内容を必ずしも聞き手が肯定することはできないとしても理解することはできる。
そうしたことを改めて意識して賢者の知恵から学ぶことができるのがこの本である。今本屋に出ている話術に関する本はたくさんあるが、言葉の使い方を根本から変える方法を提示してくれる本は他に見たことがない。この本を読むことで、自分の言葉の使い方をふりかえり、自分と世の中を変えるために言葉を手段として使えるようになりたいと思う。(まえれな)
『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』
定価 : 1,650円(税込)
頁数 : 224頁
ISBN : 978-4-7612-7488-7
発行日 : 2020年4月15日
■著者情報
シン・ドヒョン
人文学者。大学で哲学と国文学を専攻。幼いころから哲学を学び、東西の古典に親しんできた。世の中を変える勉強と自分を変える勉強は同時に進めるべきで、そうしてこそ本当の変化がもたらされると信じる。その第一歩として、“言葉の勉強”をはじめ、その成果を本書にまとめた。
ユン・ナル
ソウルで高校の国語教師を勤めながら、哲学をはじめとして人文学の勉強にもいそしみ、エッセイを執筆・発表している。他人の視線にとらわれず、新しく深みのある文章を書くために、日々努力している。
米津 篤八
朝鮮語・英語翻訳家。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に勤務。退職後、ソウル大学大学院で朝鮮韓国現代史を学び、現在は一橋大学大学院博士課程在学中。翻訳書に『言葉の品格』『言葉の温度』(光文社)、共訳書に『チェ・ゲバラ名言集』(原書房)などがある。