【知ってるようで知らない豆知識】国債のことどれだけ知ってる? #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・lunaです。
大学受験で、倫理、政治・経済を選択した学生は少なからずいるのではないでしょうか。 ですがみなさん、受験を終えたあともしっかり内容を覚えていますか? 倫理、政治・経済は生活に欠かすことのできない一般教養です。もしも忘れてしまったという方は、改めて世の中の仕組みや常識を学びなおしておきましょう。
今回は、社会人や学生の学び直しにもおすすめの『大学入学共通テスト 倫理、政治・経済が1冊でしっかりわかる本』を一部抜粋してご紹介します。
※本記事は栂明宏、吉田泰史、中川雅博著『大学入学共通テスト 倫理、政治・経済が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)より一部抜粋し、再編集したものです。
国債とは --あなたは答えられる?
■国債とは
租税収入が不足すると、国債を発行して財源をまかなう必要があります。つまり、国債の発行は、借金をする手段です。
国が発行した国債は、金融機関などが購入します。なぜ購入するかというと、利子をもらうことができるからです。たとえば、最も一般的な10年物の国債は、額面が5万円の本券とその下に利子の支払いを受けることができる利札がついています。この利札と交換に半年ごとに利子を受け取り、10年経過すると額面5万円の本券と交換に元本の5万円を受け取ります。
なお、2003年以降、国債はペーパーレス化され、紙の国債はなくなり、口座の電子記録のみになりました。
■市中消化の原則
国債は民間の金融機関が引き受けることになっており(市中消化の原則)、日本銀行の国債引受け(政府から直接購入すること)は禁止されています。
日本銀行は金の保有量に制限されず日本銀行券をいくらでも発行することができるので、国債引受けには限界がありません。したがって、日本銀行による国債引受けを認めると、国の借金に歯止めがかからなくなります。1930年代に日本銀行による国債引受けによって調達した資金で財政支出を拡大する政策が採用されると、国債の発行に歯止めがきかなくなり、激しいインフレーションが発生しました。こうした歴史的教訓を踏まえて、財政法は、日本銀行による国債引受けを禁止しています。
■建設国債と赤字国債
国債は、建設国債と赤字国債(特例国債)の2つに分類されています。
1.建設国債 公共事業費(道路や港湾の建設)の財源にあてる国債です。財政の基本について定めている財政法は建設国債の発行を認めており、建設国債は1966年から現在まで毎年継続して発行されています。
2.赤字国債 税収の不足を補填するための国債です。ただし、財政法は赤字国債の発行を認めていないため、赤字国債を発行しなければならないときには、その年度ごとに特例法を制定する必要があります。このため、赤字国債は特例国債とも呼ばれます。赤字国債は、1965年に一時的に発行されたあと、第一次石油危機後の経済成長の鈍化を背景に1975年からほぼ継続的に発行されています(1990年から1993年までは発行ゼロ)。
■国債発行の現状
1.国債依存度と国債残高 国債が継続的に発行されるようになって、歳入に占める公債金(国債発行による借金)の割合である国債依存度が30%を超える状態が続いています。また、2019年3月末の(普通)国債の発行残高は約880兆円となり、国内総生産(GDP)の約550兆円を超える規模になっています。
2.問題点 国債残高が巨額になると、様々な問題が発生します。まず、国債は将来の世代の支払う税金で返済されることになるので、世代間の公平が損なわれることになります。また、国債残高が巨額になると国債の返済費用が増加し、財政の硬直化によって他の項目に柔軟に支出ができなくなります。さらに、国が多額の借金をすると、民間企業の資金調達が困難になってしまいます(国に押しのけられて借金ができなくなる)。その結果、民間の設備投資が抑制されて、経済成長が阻害されてしまいます。
■実際に読んでみた感想
大学に入って塾講師のアルバイトを始めましたが、私は大学受験で世界史と倫理を選択しており、政治・経済は高校の授業でさらっと学習した程度でした。そんな私が、小学生に向けては社会科目、中学生に向けては歴史だけでなく、公民に関しても子供たちに教えることになりました。教える側は、自らが教える内容の数倍上回った知識を持っていることが必要だと考えた私は、まずこの参考書を読んで学び直しをしようこの本を手に取りました。
この本は、「倫理分野」と「政治・経済分野」に分かれていて、それぞれの分野ごとに詳しく説明が書かれています。単元が非常に多く、解説も詳細に載っているため、大学入学共通テストの範囲を十分に網羅していると言えます。ただ読み進めるというよりは、問題を解き、わからなかった問題の単元を読んで理解したり、教科書の補足資料として活用するのが個人的には良い方法だと感じました。(luna)
『大学入学共通テスト 倫理、政治・経済が1冊でしっかりわかる本』
定価 : 1,650円(税込)
頁数 : 360頁
ISBN : 978-4-7612-3005-0
発行日 : 2020年7月8日
■著者情報
栂 明宏(とが あきひろ)
河合塾講師。公民科目の授業はもちろん、模擬試験やテキストなどの作成、入試制度改革や高校教育課程の分析・研究なども担当している。
とくに目的を定めず、徒歩・バス・鉄道などであちこち出歩くことが趣味の一つ。『教科書よりわかる政治・経済』(旺文社)など、参考書・問題集の著書多数。
中川 雅博(なかがわ まさひろ)
河合塾講師。いくつかの大学で哲学や倫理学関連の講義も担当。専門は国際倫理学。話をすると猫が寄って来るらしい。共著に『いまを生きるための倫理学』(丸善出版)がある。
2007年には、「ロシア精神史における戦争道徳論の系譜について」(『倫理学年報』)で日本倫理学会「和辻賞」を受賞。
吉田 泰史(よしだ やすし)
河合塾公民科講師。河合塾の『政治・経済』のテキストや共通テスト模試の作成・編集を担当。
専門は憲法。徳島市立高校理数科卒、早稲田大学政治経済学部政治学科卒、同大学院政治学研究科修士課程修了。2015年8月北海道知床の道路上でヒグマと遭遇したが無事生還。