一人暮らしで感じたことをエッセイに!|テーマは”ほっとするもの”のエッセイコンテスト優秀賞受賞 久保獎太朗さんインタビュー
大学生になったのを期に、大阪で一人暮らしをする。新居を前に、不動産屋で受け取った鍵を鍵穴に差し込み左に回す。ドアを開けると、それまで閉ざされていた部屋の中の空気が出口を見つけ一斉に吹き込んでくる。空気の動く流れを感じる。鼻腔に感じる匂いは、新建材やビニールクロス、そして接着剤から出る化学物質の匂い。いわゆる、新築の匂い。少しキツイ匂い。でも、これから新生活を迎える僕にとってはうってつけの新しい匂いだ。弾む僕の心を軽やかに支え、後押しし、景気付けしてくれるそんな匂い。……
これは、11月に実施した#Z世代の目線からでエッセイ部門で優秀作品賞を受賞した、久保獎太朗さんのエッセイ『郷の匂い』の冒頭です。 大学入学をきっかけに一人暮らしを始めた筆者。部屋の扉を開けると出迎えてくれたのは、これから始まる新生活を後押ししてくれる“匂い”でした。匂いにまつわる筆者の思いが綴られた温かな作品になっています。
今回は、そのエッセイを作っていただいた大阪医科薬科大学 3年 作者の久保獎太朗さんへ受賞者インタビューを実施!
このエッセイを考えたエピソードなどを聞きました。
→エッセイコンテスト11月の「ほっとするもの」総評結果はこちら
インタビュー
――11月のキーワード「ほっとするもの」での受賞おめでとうございます。
ありがとうございます!
――今回のキーワード「ほっとするもの」と匂いを紐づけた点が、企画協力の田中さんにも評価されていました。今回の発想にはどのように至ったのでしょうか?
そうですね。僕は割と怠けてしまうタイプでして、執筆するのも本当にギリギリになってから執筆してしまうのですが、一応テーマいただいてから、日常生活の中で、エピソード探しはしていました。
僕自身が下宿しているっていうところから、ホームシックが繋がり、下宿している中で、親の存在を感じれる「親からの仕送り」について書いていこうかなと構想を練っていたのですが、田中先生がちょうど似たようなテーマで、モデル作品の掲載しておられましたのでちょっと困ったなと。
そんな時、家から帰ってきて、玄関を開けて匂いを嗅いで少しリラックスした気分になったときに、これはほっとするもので、匂いのテーマについて書いていけばより共感が得やすいものが書けると思って匂いというテーマに着きました。
僕自身、冬には決まってアロマオイルとかを買って家に置いているんですけれども、お客さんが来た時の、おもてなしの意味と、自分の居心地のいいある種「ほっとするもの」をほっとする空間を目指したいと思って買っている面があると思いました。
――執筆活動は、完全に個人ですか?何か文学部のような団体などに所属しているのですか?
実は文芸部に所属しています。受験生の時もセンター模試の現代文とか大好きだったんですけど、大学に入学してから本を読み初めて、小説を読むのも好きでしたし、絵を描いたり、自分の思っていることを表現したりするのが好きだったので、文芸部入りたいなと思っていました。
でも、書くことは読むこととは違って鉛筆と紙さえあればできるはずなのに、心理的な面でハードルがあったので、何か書いてから文芸部に入りたいなと思っていたときに、学窓のエッセイコンテストを知り、一作品書き上げて、その作品を携えて、晴れて文芸部に所属しているという感じです。
――初めて外向きに書く文章として今回の企画は取り組みやすかったですか?
そうですね。小説賞とか見ると、短くても400字詰めで20枚以上とかなので、自分のジャストアイデアを文字として提出するには非常に取り組みやすい文字数だなと思いましたし、それによって、僕も気軽に応募できたっていうのはあります。
書き始めてしまうと、結構悩んで、いつまで経っても完成せずに悩んでしまうタイプなので、締め切りギリギリに書き上げた部分だけでも、テーマから発想して言いたいことを適切に表現できる長さはあると思っています。
――文芸部ではどのような活動をされているんですか?
文芸部といっても所属しているだけで、会合のような集まりみたいなのはそれ程無くて、年に一回か二回ぐらい作品を持ち寄って冊子を作って学内に置くみたいな活動になっています。
友人の部員には、読んでもらってフィードバックを聞いたり、Zoom をつないで一緒に書いたりしています。テスト時期などにあたって徹夜で書くときは、Zoom でお互いに監視し合いながらやることもあります。
――実際、今回書くときに、久保さんなりのコツってありますか?
僕は例えば、6行ぐらいの文章を断片的に書いて、またそれとは違った見方で6行ぐらいの書くみたいな形で、何個か文章を置いといて、後から話を融合できそうな部分は結合させて最後1つにまとめるというような形でやっています。
――実際、今回のエッセイに関しては、書いた時間はどのくらいで書けましたか?
大体90分ぐらいで、書いて読み直してっていう感じです。
インスピレーションみたいな感じで瞬発的に訪れたものを書いているので、その意味では時間はかかってないですが、常日頃日常の中でテーマになりそうなものを探しているので、時間がかかっているとも言えるかもしれないです。
――久保さんが書きたい気持ちが芽生え始めたきっかけって、何か思い当たることはありますか?
小学6年生の時に冒険もののよくある無人島に漂着して脱出するみたいな物語を、学校の教室でルーズリーフにずっと書いていました。中学、高校は美術関係の授業が豊富だったので、絵を描いたり、美術作品を作ることで、想像力をかきたてるみたいなことをしてたんですけど、大学生になってまた本を読むようになって、小説に戻ってきたっていうような感じですね。
――最近読んだ本でこういうのが好きとかありますか?
僕は村上春樹さんが好きなので、村上春樹さんの『一人称単数』を今、ちょうど読んでいます。あとは小川洋子さんの『妊娠カレンダー』ですね。芥川賞受賞されている作品なんですけど、芥川賞作品の文庫本をよく読んでるので、小川洋子さんとか、あと芥川賞の選考員の山田詠美さんとか、そういった方の文章は好きですね。
――ありがとうございました。今後とも、この企画をより大きく楽しくしていきたいなと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!
終わりに
インタビューにご協力いただきありがとうございました!
小学生の頃から小説を書いたり、絵を描いたりして表現することが好きだった久保さん。
これまでも学窓で沢山の作品を書いて素晴らしいなと思います。
エッセイをはじめ、コンテスト「#Z世代の目線から」は、今の大学生がどんな風に過ごしているか、どんなことを考えているのか、たくさん教えてほしいなと思ってはじめた企画です。
作品としてのクオリティも大事ですが、「今の学生っぽい目の付け所」が評価ポイントになっています。久保さんのようにお友達も誘ってみてくださいね!
初めての方でも気軽にできるので初心者も大歓迎です!
コンテストの過去作品も記事であるので、是非見てください!
文:さっきー(学窓ラボメンバー)
編集:学生の窓口編集部