祖母の家で横になりテレビを見ていると飼い猫のミーが顔の前に居座り始めた。…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:あなたの2022
エッセイキーワード:あなたの2022
エッセイタイトル:『別れと再会』/著者:タンイクレ さん
1089文字/3分かからないくらいで読み終わります。
祖母の家で横になりテレビを見ていると飼い猫のミーが顔の前に居座り始めた。
「邪魔だよー。テレビ全然見えないー。ハウス!ハウス!」
もちろん猫小屋なんてものはない。
「ハウス!ハウス!はぁ。俺にハウスなんてねぇよ的な?正解。」
その瞬間、ミーは僕がテレビをみれるように低く伏せた。
「偉いじゃん。よしよし。」
急に触れると十中八九ブチギレてくるため、恐る恐る手を近づける。すると、あろうことか自分から頭を近づけてきた。
「今日はやけに素直じゃん。ほらおいで!」
体を起こして、ミーを膝の上に誘導する。
その瞬間。
僕はベットの上。
『あぁ。チャミは2月に死んだんだ。』
久々に見た愛猫の夢にテンションだだ下がり。
18歳だった。あいつは僕が幼稚園生の頃に祖母の家にやって来た。
ミーにはじめて会ったのは、いとこのアヤが遠方から遊びに来てる日だった。家具の隙間の奥の方に隠れて一切出てこないミーに対して、彼女は必死に語り掛ける。
「ミイ!ミイ!出ておいで!」
少し違和感のある呼び方に苛立つ。
『ミーだっての。』
1つ年下ながら気の強い女の子だったのでそんなこと絶対言えない。
人見知りのせいもあり、たまにしか会えない彼女のことが苦手だった。
ただ、その後すぐに叔母夫婦は離婚し、彼女には一切会えなくなった。あれから18年。もう顔も覚えていない。街であっても絶対に気が付かない自信がある!
『朝から嫌なものをみたなー。でも相変わらず可愛かったなー。』
九月なのに夏休み。両親も妹も家にはいない。寝ぼけ眼で庭のポストの中身を確認しに行く。日課だ。大学に入ってから大学院生になった今まで、九月は自分だけが休んでいるという罪悪感が拭えない。その罪滅ぼしのような気持ちでポストの確認やお風呂洗い、皿洗いを頑張る。
ポストを開けてみるとそこには1通の便箋があった。いつも見慣れた企業や国から送られてくる正式な封筒ではなく、明らかに一個人からの手紙だ。こんなものを見るのは何年ぶりだろう。差出人の欄を見てみると愕然とした。アヤからであった。
どうして?しかもミーの夢を見た日に?こんな偶然があるのだろうか。僕は急いで中身を確認した。そして再び驚いた。彼女は結婚するらしい。そしてそこには「連絡をください。」という文と共に電話番号がかかれていた。
母の帰宅後すぐにその手紙を見せると母は驚き、心底喜んでいた。するとすぐに近くに住んでいる祖母を呼び寄せ、彼女の番号に電話した。18年ぶりに聞く孫の声に祖母は涙していた。そして今冬に再会する約束をした。
ミーが我々家族を再会させてくれたような気がした。ミーの夢の話は誰にもしていない。ミーと僕の秘密だ。
著者:タンイクレ さん |
学校・学年:宇都宮大学大学院 2年 |
著者コメント:普段耳馴染みのある言葉は『出会いと別れ』ですが、僕にとっての2022年は「別れと再会」でした。一年間で一番印象に残っている1日を文に残したく投稿しました。2022年で起こったのはミーとの別れ、アヤとの再会ですが、文章内にはアヤとミー、それぞれとの別れと再会を詰め込んだつもりです。 ※登場人物の名前は仮名です。ご了承ください。 |