夜というのは、不思議な力を持っている。 昼間はどうってことなかった…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:夜
エッセイキーワード:夜
エッセイタイトル:『布団の中にて』/著者:imnao さん
![](/system/production/image/image/000/191/206/191206/wysiwyg_63b6c474ae9c98b4c985.jpg)
1021文字/3分かからないくらいで読み終わります。
夜というのは、不思議な力を持っている。
昼間はどうってことなかったはずのものが、夜になると突然不安になったり、昼間に怖がっていたものが、夜になると全く怖くなくなったりする。
ただ日が落ちて暗くなっただけなのに、ただ昼間より少し気温が下がるだけなのに、ただ目を閉じていればそれはいつの間にか自分のもとから離れていくのに。夜という時間、いや、空間が、私に何かしらの影響を与えるのだ。
寝室に入った時、このまま夜が明けないことを祈る日があれば、明けない夜はないと信じたい日がある。目を閉じるその瞬間、夜の“まっくら”が宙に舞うように心地よいときもあれば、たったひとり、海の底に沈んでいくような孤独を感じるときもある。
明日憧れのあの人に会える夜も、大舞台のプレッシャーに押しつぶされそうな夜も、やるべきことを全て終わらせた夜も、ずっと楽しみにしていた予定を終えてしまった夜も、みんな同じ「夜」なのに、それらは全く違う色と形で私の身体を包んでいく。
その日1日が良い日であった人も悪い日であった人も、1日はみんな平等に24時間だったし、何をしていたって数時間後には日が昇り、朝がやってくる。そんなことは時計の読み方を教わったあの頃からわかっているのに、大概、考えを巡らせてしまうのは夜で、何より私が今、この文章を書いているのだって夜なのだ。考えることが必要な時に冴えた脳をもたらしてくれるのは夜であるが、必要以上に考え過ぎてしまうのもまた、夜の所為なのである。
夜更かし、夜遊び、夜食、「夜」であることに背徳感や非日常を感じるのはなぜだろう。
“よいこ”は寝る時間だからだろうか。それとも、私がまだ“若者”だからだろうか。大人になったら、夜更かしして聴くラジオから流れる声は、深夜に作ったラーメンの湯気の匂いは、魅力的に感じなくなってしまうのだろうか。それを寂しいとも思わなくなってしまうのだろうか。
すでに始まりつつある就職活動も、私自身の未来も、まだ長い長い夜の中にいるように感じる。朝が迫ってきていることへの焦りと、まだ夜であるという安心感が同時に私を包む。
この長い夜から目覚めたとき、私はまだ「夜」に背徳感を感じられているであろうか。
ここはまだ夜だけど、きっと夜だから考えられることがある。
明日も今日のこの夜のように、夜明けに、次の日の朝に、希望を持って眠りにつく夜を迎えられる1日であるように、と願いながら、私はこの夜を終える。
著者: imnaoさん |
学校・学年:法政大学 3年 |
著者コメント:衝撃的な出来事ほど何度も情景がリピートされる。そんな経験が一度や二度あるのではないでしょうか。人間は感情の中で生きています。幸せな感情のまま止めることができたら。いつもそんなことを考えてしまいます。 |
instagram:_lmnao_ |
エッセイに共感したらシェアしよう!
==============
あなたもエッセイを書いてみませんか?12月のキーワードは“あなたの2022”