2週間前に免許を取ったばかりの私は、運転をするのが怖い。教習所に通っていた私は…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:夜
エッセイキーワード:夜
エッセイタイトル:『パワーチャージ!!』/ 著者:ももこ さん

1269文字/3分くらいで読み終わります。
2週間前に免許を取ったばかりの私は、運転をするのが怖い。
教習所に通っていた時は、カーブやグネグネ道でも延々と話しかけてくる教官や、話すことがないからと私にフリートークさせようとする教官、路上教習中に居眠りをする教官、と様々な経験をした。大きな失敗をすることなく無事卒業でき、本免試験に合格した時はこれで公道を走れる!と心が舞い上がったものだ。
まあ今となっては、そんなこともあったなぁ、と遠い昔の事のようだが。
そんな私の現在は、助手席の母に怒られてばかりいる。おかげで自分はまだ教習生なのだろうか、と錯覚することもしばしばだった。
夜7時、仕事が終わった母が帰宅すると決まってスーパーへ買い物に行く、もちろん私の運転で。母もとい鬼教官を乗せ、私は夜の街を走る。そう、これが地獄の始まり。
今日の母は機嫌が悪いのか、いつもより言葉少なだった。運悪く信号にも引っ掛かり、車内には沈黙が流れる。信号が変わるまでの僅かな時間が永遠に感じられた。
「今日はそこ曲がって山道行くよ」
「山道……」
唐突に発せられた母の言葉を反芻する。顔や態度には出さないが、正直逃げ出したくて仕方なかった。昼の山道だって結構怖いのに、夜の山道とか鬼か!と心の中で叫ぶ。こんな初心者マーク貼りたてホヤホヤの車に乗ってて母は怖くないのだろうか??
幸い、ビビりまくりで超がつくほどの安全運転だった私は、何事もなく自宅の車庫に戻ってきた。合計運転時間は1時間にも満たないのに私はげっそりとしていた。
「今日はマジで死を覚悟したわ……」
精神的ダメージで息切れしながら独り言つと、それを聞いた母が
「あなたの隣に乗ってる限り、私はいつも死を覚悟してるわよ」
と、すまし顔で返してきた。
その言葉に私は苦笑いを浮かべることしかできない。
車を降りて家に入ると、やっと肩の荷が下りたような気分だった。もう今日みたいな運転コースは走りたくないよ〜と畳の上で大の字になる。しばらくゴロゴロしていても母はなかなか戻って来なかった。
すると、 「ちょっと来てみな!」
母の大きな声が聞こえてきた。声の張り具合から察するに、きっと私が何かやらかしてしまったんだと考える。出て行けば説教されるに違いない、ただでさえ機嫌が悪かったみたいなのに最悪だ……。そう思いながら恐る恐るドアを開けると、母はどうしたものか、満面の笑みを浮かべていた。
呆気に取られた私がぽけーっとしていると、母はこっちこっちと手招きをする。そのまま着いていくと母がスッと上を指差した。
そこにあったのは、まるで地面に落ちてきそうなほど大きく明るい月。スーパームーンすら2Dにしか見えなかったのに、目の前にある月はちゃんと3Dに見えた。街灯のほとんどない町を月明かりがばっと照らしている。ここまで輝いている月を見るのは人生で初めてだった。
これが本当の月明かりか……と思わず感嘆の声を上げる。隣にいた母も目を輝かせて上空を見つめている。こんな風にテンションの上がった母の姿を見るのも初めてだった。
う〜ん、これはどっちも最高のご褒美。
明日の運転練習も頑張れそう!
教習所に通っていた時は、カーブやグネグネ道でも延々と話しかけてくる教官や、話すことがないからと私にフリートークさせようとする教官、路上教習中に居眠りをする教官、と様々な経験をした。大きな失敗をすることなく無事卒業でき、本免試験に合格した時はこれで公道を走れる!と心が舞い上がったものだ。
まあ今となっては、そんなこともあったなぁ、と遠い昔の事のようだが。
そんな私の現在は、助手席の母に怒られてばかりいる。おかげで自分はまだ教習生なのだろうか、と錯覚することもしばしばだった。
夜7時、仕事が終わった母が帰宅すると決まってスーパーへ買い物に行く、もちろん私の運転で。母もとい鬼教官を乗せ、私は夜の街を走る。そう、これが地獄の始まり。
今日の母は機嫌が悪いのか、いつもより言葉少なだった。運悪く信号にも引っ掛かり、車内には沈黙が流れる。信号が変わるまでの僅かな時間が永遠に感じられた。
「今日はそこ曲がって山道行くよ」
「山道……」
唐突に発せられた母の言葉を反芻する。顔や態度には出さないが、正直逃げ出したくて仕方なかった。昼の山道だって結構怖いのに、夜の山道とか鬼か!と心の中で叫ぶ。こんな初心者マーク貼りたてホヤホヤの車に乗ってて母は怖くないのだろうか??
幸い、ビビりまくりで超がつくほどの安全運転だった私は、何事もなく自宅の車庫に戻ってきた。合計運転時間は1時間にも満たないのに私はげっそりとしていた。
「今日はマジで死を覚悟したわ……」
精神的ダメージで息切れしながら独り言つと、それを聞いた母が
「あなたの隣に乗ってる限り、私はいつも死を覚悟してるわよ」
と、すまし顔で返してきた。
その言葉に私は苦笑いを浮かべることしかできない。
車を降りて家に入ると、やっと肩の荷が下りたような気分だった。もう今日みたいな運転コースは走りたくないよ〜と畳の上で大の字になる。しばらくゴロゴロしていても母はなかなか戻って来なかった。
すると、 「ちょっと来てみな!」
母の大きな声が聞こえてきた。声の張り具合から察するに、きっと私が何かやらかしてしまったんだと考える。出て行けば説教されるに違いない、ただでさえ機嫌が悪かったみたいなのに最悪だ……。そう思いながら恐る恐るドアを開けると、母はどうしたものか、満面の笑みを浮かべていた。
呆気に取られた私がぽけーっとしていると、母はこっちこっちと手招きをする。そのまま着いていくと母がスッと上を指差した。
そこにあったのは、まるで地面に落ちてきそうなほど大きく明るい月。スーパームーンすら2Dにしか見えなかったのに、目の前にある月はちゃんと3Dに見えた。街灯のほとんどない町を月明かりがばっと照らしている。ここまで輝いている月を見るのは人生で初めてだった。
これが本当の月明かりか……と思わず感嘆の声を上げる。隣にいた母も目を輝かせて上空を見つめている。こんな風にテンションの上がった母の姿を見るのも初めてだった。
う〜ん、これはどっちも最高のご褒美。
明日の運転練習も頑張れそう!
著者:ももこ さん |
学校・学年:千葉大学 2年 |
著者コメント:帰省した時に免許を取得したので、夏休みが終わるギリギリまで母の車で練習していました。運転は怖いけど嫌いなわけではないんですよね……。毎日見られたら頑張れるのに〜なんて思ったりします笑 |
エッセイに共感したらシェアしよう!
「#Z世代の目線から」7月期エッセイコンテストの結果と総評はこちら
==============
あなたもエッセイを書いてみませんか?11月のコンテスト実施中