セカンドキャリアは起業家!元サッカー日本代表・鈴木啓太さんが「腸内細菌」を研究する理由【お仕事図鑑】

編集部:ぜんや

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アスリートの腸内細菌を解析・研究するAuB株式会社。研究で得られた知見を活用し、健康食品やサプリメントの開発・販売、サービスの開発などを行っています。

この会社を立ち上げたのは、元サッカー日本代表の鈴木啓太さんです。鈴木さんは、2015年シーズンに16年間の現役生活を引退後、セカンドキャリアとして起業家の道を歩み始めました。

なぜ、サッカー選手から起業をしようと思ったのか。腸内細菌に着目したきっかけとは?起業に至るまでの背景や仕事の面白さ、こだわりなどを伺いました!

プロフィール

PROFILE

鈴木啓太(すずきけいた)

元サッカー日本代表。静岡県出身。2000年に高校を卒業すると同時に、Jリーグ浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)に加入。ボランチとして活躍し、チームの中心選手として2006年のJ1リーグ年間優勝、2007年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などに貢献。ベストイレブンを二度獲得。日本代表では国際Aマッチ通算28試合に出場。引退後は実業家に転身し、アスリートの腸内細菌を研究しフードテック事業を展開するAuB(オーブ)株式会社の代表取締役を務める。


サッカー界をより発展させる。引退後に起業を決意した理由

ーー事業内容について教えてください。

アスリートの腸内細菌を解析・研究しているベンチャー企業です。コンディションを整えるプロであるアスリートのお腹の菌を調べ、約7年間の研究で2,200検体(950名以上 ・40競技)を保有。研究によって得られた知見を活用し、健康食品やサプリメントの開発・販売サービスの開発などを行っています。

ーーなぜ「腸内細菌」に着目し、起業しようと思ったのでしょうか?

大きく二つあります。一つ目が、自分の実体験が強く印象に残っていたからです。

サッカー選手から腸内細菌を研究する会社を起業するのは、「全く畑が違うのではないか」と言われていましたが、僕の中では遠い話ではありませんでした。

というのも、子どもの頃から母親に「人間は腸が一番大切だよ」と言われていたからです。腸の健康を維持するために、食事内容に気をつけたり、便の状態を観察したりしていました。おやつに納豆や海苔、漬物などが出てきて(笑)、20年以上前から「腸活」を行っていましたね。

プロになってからも、日々のコンディションはお腹で測っていました。実際に腸を意識することで、筋肉の状態やパフォーマンスの向上に繋がり、「腸内環境って大切なんだ」と実感する日々が多かったです。自分の実体験から腸への興味があったことが、起業のきっかけの一つとなっています。

二つ目が、お腹の研究をしている人との出会いです。僕が子どもの頃から意識していることを研究している人がいると知り、会いに行ったんです。そこで「特徴的な被験者を調べると、大きな発見に繋がりますよ」という話を聞きました。特徴的な被験者とは一体誰か考えたところ、「アスリートなら一般の方と肉体が違うので、研究すれば何か面白いことがわかるのではないか?」と思いました。

子どもの頃から腸を通して「これはどういうことだろう?」と考えていたことが、引退後のキャリアと結びついた時に、腸内細菌を研究する会社を作ろうと起業を決意しました。

ーーセカンドキャリアはいつ頃から考えていたのでしょうか。また、サッカー界に留まる気持ちはなかったのでしょうか?

サッカー選手は平均26〜28歳で引退を迎えます。引退する年齢層が概ね予想できたこともあり、18歳でプロになった当初から、引退後のキャリアについて考える機会は多かったです。

ただ、最初から「引退後は起業しよう」と考えていたわけではありません。先輩方の引退後のキャリアを調べ、さまざまな人たちと話をする中で「サッカー界に留まるのではなく、一度外の世界を見て学んでから戻ってこよう」と思うようになりました。

ーーなぜ一度外に出ようと思ったのでしょうか?

サッカー界を大きくしたかったからです。当時僕が所属していたチーム、浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)は日本で一番大きなクラブチームだと言われていて、年間約80億円を売り上げる年がありました。
※2007年

浦和レッズの名前を聞いたことがある人が、10人に1人いると仮定して、日本人口の約1億2,000万人の10分の1だとすると、1,200万人もの人が僕たちを知っているわけです。しかし、売上が80億円というのは、僕は少ないと感じていたんです。

バリューがあり、エンターテインメントとして楽しんでいただいているのに、利益が少ないままだと、サッカー界を発展させるのは難しいです。選手たちのセカンドキャリアの選択肢も狭くなりますし、何よりも未来にサッカーを繋いでいけなくなります。

「サッカー界を発展させるために自分には何ができるのか」と考えたときに、一度外に出て勉強をしてからまたサッカー界に戻ってこようと思ったんです。サッカー界、スポーツ界へ還元したいからこそ、外に出ることを決意しました。

研究した結果が、世の中の役に立つことが大きな魅力

ーー起業して大変だったことを教えてください。

全てが大変でした(笑)。知らないことだらけなので、「そもそも会社はどのように運営するのか」「求人はどこで出すのか?」というレベルからスタートしました。

特に苦労したのが資金調達です。100社回って断られ、一時期は数ヶ月後に会社が潰れてしまうかもしれない事態にまで直面しました。

眠れず悩む日々が続いていたのですが、ある人に「悩んでいるのならまだまだ時間はある。悩む暇があるのなら考えて行動しよう。何もやることがない・できない状態ではないのだから大丈夫だ」と言葉をかけてもらったんです。

その言葉で気持ちが楽になり、「悩んでいないでとにかく行動をしよう!」と気持ちを切り替えられました。前向きに行動できるようになり、困難を乗り越えられましたね。

ーーこの仕事の面白さ、やりがいを教えてください。

大きく二つあります。

まずは研究です。アスリートの皆さんにご協力をいただいた結果、まだ表に出ていない研究結果を論文として発表でき、「これは知らなかった」と世の中から評価をいただけるのが嬉しく、やりがいに繋がります。

二つ目が研究結果から作り上げた、健康食品やサプリメントを通して「すごくいいですね」といった声をいただけることです。売上に繋がるだけではなく、アスリートの腸内細菌の研究が、世の中の役に立ったことが何よりも嬉しいんですよね。役に立ったと声をいただけることは、弊社にとって一番の喜びだと思います。

サッカー選手時代から意識している、仕事の“こだわり”とは

ーー仕事のこだわりを教えてください。

「楽しくやる」ですね!この気持ちはサッカー選手時代に学びました。

プロのサッカー選手になると、試合に対しての責任やプレッシャーが大きいです。ファンやサポーターの方がお金を払って試合を見に来てくださっているからこそ、期待に答えなければいけません。そうするとプレッシャーを感じて、どんどんプレーが萎縮してしまうんですよね。

あるとき監督から「お前たち、なんてつまらない顔でサッカーをしているんだ」と言われたことがありました。「プレッシャーを感じてしまって……」と答えると、「そうだろうな。しかし今君たちは素晴らしい仕事をしている。サッカー選手になることは子どもの頃からの夢だっただろう?」と。

「毎日芝生の上でボールを追いかけられて、いいスパイクを履けて、こんなに嬉しいことはないはずだ。もし子どもの頃の自分が今の状況を見たら悲しむぞ。サッカーがやりたくてボールを蹴り、楽しくプレーをして上手くなってきたんだそう?だとすると、つまらなそうな顔をしていてもサッカーは上手くならない。上手くなるには『楽しい』『本当にやりたい!』と思う気持ちが何よりも大切だ。これから朝起きたときに『サッカーがしたい』という気持ちになれれば、君たちはもっと上手くなれる」と言ってくれたんです。

この言葉をきっかけに「楽しむ」気持ちを意識し始め、結果31〜34歳の現役引退までの4年間が、一番サッカーが上手くなったんです(笑)。長年サッカーを続けてきましたが、楽しくサッカーをするだけでここまで変わるのかと驚きました。この経験から、どのようなことも楽しむ気持ちを忘れないようにしています。

ーー楽しみ方のコツはありますか?

楽しむことは自分の心の持ちようです。例えばメールを一通送るときに、相手に喜んでもらえるにはどのような文面がいいか考えてみる。他には課題や目標をクリアしたときに、ご褒美を用意してみる。

相手の気持ちを想像したり、自分が楽しくできるポイントは何かを考えて、ゲーム感覚で取り入れてみたりすると、いつもの作業が面白く感じられると思いますよ。

就職活動は、自分の夢と会社のビジョンが近いか調べてみよう

ーーどのような人と一緒に働きたいですか?やはり仕事を「楽しめる人」でしょうか。

楽しむことや勤勉であることは大切ですが、何よりも会社の進むべき方向・夢と、面接を受けられた方の夢が、それぞれ近いかどうかは重視しています。

AuBには「このようなことがしたいです」といった進むべき理念や方向があります。その軸に寄り添うような形で「私も同じ軸で進みたいです」と考えてくれている人と働きたいですね。会社側とスタッフ側が目指している軸が違うと、仕事をしていく中でミスマッチが起こり、結果、離職に繋がってしまうためです。

学生さんは興味のある企業が自分の持っている目標やビジョンと近いかどうか、しっかりと調べるようにすると、ズレがなく納得のいく就職活動になるのではないでしょうか。

ーーありがとうございます。最後に学生へメッセージをお願いします。

これを読んでいる学生の皆さんは「仕事」に対してどのようなイメージを抱いていますか?働いている大人の姿を見て「大変そう」「不安」など、ネガティブな印象を抱いている人も多いかもしれません。

ですが仕事は本来、大変なことも多いけれど楽しいもの。世の中には楽しそうに働いている大人も大勢いますので、働いている顔つきが楽しそうな大人を意識して探してみると、ポジティブな就職活動ができるのではないかと思います。「楽しむ」気持ちを忘れずに、充実した学生生活を送ってください!

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文:田中青紗
編集:学生の窓口編集部
取材協力:AuB株式会社

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活字中毒の中年編集者です。暇さえあれば本やウェブコンテンツを読み漁っています。 文章や言葉で読者を楽しませたり、悩みに寄り添い勇気づけられるよう、日々悪戦苦闘しながら言葉を紡いでいます。

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