2日降った雨が止み、雲の隙間から陽がさしこんできた。......|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:夏のある日
エッセイキーワード:夏のある日
エッセイタイトル:『爽や夏ーさわやかー』/著者:木島幸太郎 さん
1183文字/3分くらいで読み終わります。
2日降った雨が止み、雲の隙間から陽がさしこんできた。遮光でない白いカーテンがボヤッとひかりを放つ。その光のせいか、日頃からの早起きの習慣か、何の予定もない土曜日なのに、私は朝6時に目が覚めた。
習慣というのは怖いもので、月曜から金曜までの規則正しい生活が、休日まで侵食することを許してしまう。まだ眠りたいと思い、漫然とスマホを見て深夜のように寝落ちを目指す。何分かわからないが画面を眺めていると瞼が重くなってきた。そろそろ眠れそうだというときに、カーテンが一層明かりを増した。その光量に耐えきれず、私は完全に目を覚ましてしまった。勢いよくカーテンを開けると、雲は散り散りになっていて、青空が拡がっている。幸い普段よりは遅く起きることができた。時刻は6時30分。
—今日、2回洗濯機回せるかな。
2日間洗濯ができなかったので、洗濯待ちの服がある。今日はそれを全て洗って、ベッドのシーツも洗いたい。私は洗濯が好きだ。一人暮らしであまり洗濯物が溜まらないのをもどかしく思うくらいである。服を洗濯槽へ入れて、洗剤、柔軟剤を投入し、30分とちょっと待てば、綺麗になった服が出てくる。この意味で洗濯というより、全自動洗濯機の洗濯というはたらきが好きなのだろう。そして夏だとすぐに乾く。夏と洗濯は相性抜群なのだ。洗濯すべきものがあれば、何度か回してしまえ。夏という季節から背中を押される。
そんなことを思いながら、洗濯機を回す。その間にコーヒーを飲む。朝は夏でもホットコーヒーを飲む。冷たいのはなんとなく体に悪い気がする。これから頑張ろうという朝に、体を冷やしてしまうのは効率が悪い気がする。偏見がこだわりになって、今朝もホットコーヒーを啜るのである。気温も高く、なかなかコーヒーもぬるくならないから、猫舌の私はゆっくり時間をかけて飲むほかない。時刻は7時すぎ。
カップが空になって間も無く、洗濯機から洗濯の終わりを教える音が聞こえた。洗濯機から洗濯物をカゴに移し、ベランダに行く。1Kの狭い部屋の狭いベランダで洗濯物をハンガーにかけて干す。窓に遮断されていた蝉の声が耳に入ってくる。あんなに煩かった音も、秋に片足を突っ込んだ今では、寂しいとさえ感じる。洗濯物を干しながら、今日は何をしようかと考える。やるべきはもう一度洗濯機を回すことくらいか。朝ごはんを食べたいなと思い、考えを巡らせる。そういえば、近くに朝8時から開いている蕎麦屋があった。夏はざるそばが堪らない。体が冷えるのではないかと思われるかもしれないが、最後に蕎麦湯を飲んで結局体が温まるので問題ない、という算段である。妙案を思いついた、その時刻は7時半。
いつの間にか雲一つなくなった青空の中、私は蕎麦屋へ歩み始めた。
—こんな夏の日を過ごしたかった。そう思った晩夏、起き抜けの昼。時刻は12時半。
著者:木島幸太郎 さん |
学校・学年:熊本大学 4年 |
著者コメント:夏の昼間は暑くて苦手な人は多いと思いますが、爽やかな夏の朝は、嫌いな人は少ないと思います。私も夏の朝が好きで、至福の時間を丁寧に表現してみました。 |
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