【お題:"ガチャ"】「#大学生の目線から」エッセイコンテスト優秀作品『「ガチャ」いつも最後に家に帰ってきて、鍵を閉める……、』

編集部:ベッシー

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エッセイコンテスト6月「#大学生の目線から」優秀作品:立教大学 4年 タガヤ コウヘイ さんのエッセイ

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「ガチャ」

いつも最後に家に帰ってきて、鍵を閉める。「おかえり」の返事はなく、ただ鍵の閉まる音が響く。ルーティーンなんて言ったら大層なものだが、毎日行うことだ。

ふと今日一日のことを思い返してみる。どっと疲れが押し寄せてくる。今日も誰とも話せなかったことを思い出した。

みんな無愛想に見える。本当に心の扉を開いて会話しているのか。上辺だけの人間関係なんていらない。

「大学生活はどれだけ友達を作れるかにかかっている」僕の昔からの友達が言っていた。授業のノートを貸し借りする。わからないことを教え合う。サークルを作って遊ぶ。確かにみんな友達がいないとできないことだ。でも友達がいなくても大学で良い成績をとることができるし、様々な遊びもできる。複数人で遊ぶことだけが遊びじゃない。一人で本を読むことだって遊びになる。結局、自分次第でどうにかなるのだ生活は。

そんなことを息巻いて生きているけれど、正直大変だ。

「友達の定義は?」が僕の口癖。友達がいない人に限って「友達」という言葉の定義を限定する。

「一緒に話したらもうその時点で友達」
「いやいやそれは友達じゃなくて、知り合いだ」

そんな不毛やりとりをしてしまう自分に腹が立つ。本当は気づいているのだ。友達という言葉に定義なんてないことに。

人見知り、なんて言いふらして自分に友達がいないことを正当化しようとする。ださい。だって本当は、僕は人と会話することが好きなのだ。心の扉を開いていないのはむしろ自分の方ではないか。自分が心の扉を開いていないから他人も開いていないと思い込んでいるのではないか。本当は嫉妬している。笑顔が弾けて会話しているあの人達に。あの人達は本当に笑っているのだ。

明日は勇気を振り絞って、会話をしてみよう。友達になれなくても良い。まずは、会話をするのだ。

「好きな食べ物はなんですか」

いつか「子供じゃないんだから」と馬鹿にされた質問だっていい。そこから話が広がるかもしれない。何が鍵になるか誰にもわからない。

僕はいつも最初に家を出る。

「いってきます」
「いってらっしゃい」の返事はない。

「ガチャ」

ただ扉の開く音だけが響いている。今日はいつもと違う気がする。


著者:タガヤ コウヘイ さん
学校・学年:立教大学 4年
noteアカウント:football_as
著者コメント:大学生になって急に人と話すのが苦手になりました。そんな時に思っていたことを書きました。
「ガチャ」から連想できるのは何かと随分長く考えました。しかし考えても考えても何も浮かびませんでした。そんなある日、疲れて帰ってきて家の扉の鍵を「ガチャ」と閉めた時、自分の頭の中に「ガチャ」という音が鳴り響き、逆に開かず扉だったこのエッセイへの扉が開きました。

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「#大学生の目線から」6月期エッセイコンテストの結果と総評はこちら

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