「生き残るためなら何だってやる」HOWL BE QUIET竹縄航太が前進し続ける理由 #19才のプレイリスト #19才のプレイリスト
人生はきっかけの連続だ。だからこそ、自分のやりたいことをどう選べばいいのかわからない。今何をするべきなのか迷ってしまうという大学生のために、「音楽」という道を選んだアーティストに直撃し、19才の頃に聴いていた楽曲を元に人生観を語っていただく連載『#19才のプレイリスト』。
今回は2017年にリリースした 「ラブフェチ」が動画投稿アプリ「TikTok」で総再生数は2200万回を突破したHOWL BE QUIETのVocal, Guitar, Piano竹縄 航太さんにインタビュー。SNSでのバズを経験して今思うことや、大学時代に感じた葛藤など幅広く語ってもらいました。
文:於ありさ
写真:島田香
編集:学生の窓口編集部
▼INDEX
1.TikTokでのバズで、バンドとしてもターニングポイントとなった2020年
2.全曲がメイン!名刺代わりとなるEPリリース曲のポイント
3.「少しでも見てくれている人がいるなら」で頑張れた
TikTokでのバズで、バンドとしてもターニングポイントとなった2020年
――今回リリースされた「歴代の仲間入り EP」ですが、竹縄さんにとってどんな作品になりましたか?
僕たちの中で生まれた新しいモチベーションの中で、必死に作ってきた曲たちが詰まったEPに仕上がりました。もちろん今までのHOWL BE QUIETらしさがありつつ、死に物狂いでやってきた1年間の集大成でもある作品ですね。
――そもそもこの1年間、HOWL BE QUIETにとってはどんな1年でしたか?
コロナ禍になるギリギリのタイミングで「ラブフェチ」がTikTokでいろんな方に聞いてもらえるようになって、ターニングポイントのような1年でしたね。 いろんな方に自分たちの曲を聞いてもらえたことで「自分たちがやってきたことが間違ってなかったんだな」とも思えましたし、バンドへの新しいモチベーションも生まれました。
――正直「ラブフェチ」がこのような形でバズることは想定していたのでしょうか?
いや、1ミリも想像していなかったですね。2017年の曲が今になっていろんな人にピックアップして聴いてもらえるようになるなんて、誰も想像できないですよ。 しかも場所が1番のサビとかではなくて、2番のAメロっていうのが「ここなんだ」って驚きました。最初は「なんで今なんだろう」「なんで2番なんだろう」って理解が追いつかず、でも「嬉しいな」って。混乱しながらも喜んでましたね。
――予期せぬタイミングでバズを経験するというのは、どういう気持ちなんでしょうか?
音楽をやっている中で「聴いてもらえる」ということが何よりも嬉しいので、「これだけたくさんの人が聴いてくれるんだ」というのがめちゃめちゃ嬉しかったですね。 自分が学生時代のSNSってmixiや前略プロフィールなど文字だけで成立していたのですが、今の学生たちにとっては写真や動画がコミュニケーションの一部。そこに自分たちの曲がマッチしたのは光栄だなと思いました。
――実際に新しいファンの方からの反響も届いているのでしょうか?
YouTubeのコメント欄に「TikTokで知って、他の曲も聴きにきました」とコメントが来ることは多いですね。 今まではラジオや音楽番組専門チャンネルで知ったという人が多かったのですが、曲から知ってくれたという声を聞いて1曲1曲の重みは感じましたね。
――曲の重み?
TikTokで知ってくれた方の場合「この曲のこの歌詞の部分がすごく好き」って、かなり深く聴いてくれているようなんです。 実際HOWL BE QUIETではなく「ラブフェチの人」「歴代の元カレたちよの曲の人」として見られていることが多いんですから。 だからこそ、どうやって他の曲につなげていくか、バンドを愛してもらえるかというところに次は挑みたいと考えてます!
全曲がメイン!名刺代わりとなるEPリリース曲のポイント
――それぞれの楽曲についてもお伺いしたいです。まず3月に出した「ベストフレンド」はコロナ禍以降初めてリリースした楽曲ですね。
そうなんです。コロナ禍初であり、2年前に「Andante」というアルバムを出して以来のリリースでした。 新しいファンの方が増えた中で、メンバー一同「どんな曲がいいかな」というのは悩みました。
でも、やはり僕自身がぱっと浮かんでくるのは恋愛の歌、そして届かない恋の歌にしたいなと思って出来上がったのがこの曲でしたね。 「これが僕たちです」とHOWL BE QUIETが言える1曲に仕上がりました。
――バズ以降、1発目とのことでプレッシャーはなかったんですか?
正直ありましたね。ラブフェチがアッパーな曲だったので、ミドルアッパーくらいが良いかなとも頭をよぎったのですが、そこは良い意味で影響されすぎず、自分たちが「俺らってこうだよね」って言えるものを作りました。逆に「俺らっぽくないけど、好きでしょ?」っていう曲を作ったら、後で後悔しちゃうかなと思ったので。
――「コーヒーの歌」は、毎週定時の弾き語り配信からできた曲なんですよね?
ツアーがなくなったり、リリースしようとしていたものを白紙にしたりということがあったなかで、ファンの方と繋がる場所というのを作っておきたかったんですよね。それはライブやリリースがないのは音信不通と一緒だと思ったし、僕らとしてもせっかく知ってもらったのに忘れられるのが怖かったから。
それで配信を行う中で、辛い1年ではあったけど「これ楽しかったよね」と思えるようなものを、みんなで作ろうと歌詞やメロディを相談しながらできました。
――「ラブフェチ- 歴代の仲間入りver-」は、どのような点にこだわってリアレンジされたのでしょう?
「ラブフェチ」は、前ベースと作った曲だったということもあって、現ベースも入れた今の4人でも出したいといってできました。 リリースした当時から4年経ったこともあって、「今聞いたら、こうだな」と僕らが感じるままの歌詞にアップデートしたのですが、歳をとった自分だからこそ書けた「ラブフェチ」だなと思っています。
――「染み」は、メロディといいアレンジといい新しいHOWL BE QUIETの一面を見れた気がします。
「迷宮ブラックカンパニー」の原作を読んだときに、主人公の二ノ宮キンジのコミカルな 立ち振る舞いや、反骨精神を見て、すごく僕と重なるところがあるなと感じたんですよね。それにどんな災難や不幸があっても「ふざけんな」って、どこか心の片隅で中指を立てているような姿勢って人誰しもあるだろうなって。
その中で新しいHOWL BE QUIETに挑戦したような曲ができるんじゃないかなと思い、大人な恋愛の歌、よくないとわかっているけど辞められない関係というところにたどり着いて、一筆書きでぶわっと書きましたね。
少し前だったら「俺らっぽくないよね」って挑戦できていなかったかもなとは思います。でも、歳を重ねて、今の俺らならゆたっと余裕を持ってできそうだよねと挑むことができました。
――お話を聞いていても楽曲を聞いていても思ったのですが、全てが表題曲といっても納得のいく1枚ですね。
そう言っていただけて嬉しいです。実は今回、EPだから入れる曲、例えばインストだったり、アコギ1本の弾き語りとかは、個人的には好きなんですけど、思い切って入れなかったんです。
今回のEPに関しては、僕らの名刺であり、新しくこの1年で曲を聴くようになってくれた人たちに対して「俺はこういうバンドだよ」って示せるような1枚にしたいなって思ったので、僕らとして全曲メインな気持ちで作りました。
「少しでも見てくれている人がいるなら」で頑張れた
――竹縄さんは10代のころ、どんなことで悩んでいましたか?
中学生、高校生の頃は恋愛関係のことで悩んでいることが多かったですね。好きな子に対して「どう連絡しよう」とか、「嫌われてないか」とかばかり考えていました。
大学生の頃は少しずつ将来について考えるようになっていました。でも、その時になんとなく「俺、音楽やりたいな」って思っていたんですよ。なぜか「どうとでもいける」と思える無敵感があって、音楽に対する不安はなかったんですよね。
逆に大学卒業する頃が1番不安でした。
――どうしてですか?
大学卒業する頃は、もう音楽をやると腹を括っていたので、就活をしていませんでした。それに対して、友達はみんな就活の話をしている。自分が急にマイノリティになってしまったことで不安に思ってしまったんです。
――どうやって乗り越えたんでしょう?
2つ大きいことがあって、1つは一緒に夢を目指すメンバーがいたのは大きかったですね。もし1人だったら乗り越えられていない山もたくさんあると思っています。お客さんが3人しかいないライブハウスでライブをしていたとしても「俺ら間違えてないよな」って励まし合いができて、続けるというのを選べたのはよかったです。
2つ目は、お客さんが全然いなかったようなライブハウスの時でも、ふいに声をかけてくれる人や音楽関係者がいたり、CDを買ってくれる人がいると少しでもいたこと。その人たちにとっていつか誇りになれたらいいなと思って活動していました。
――10代のころに、よく聞いていた楽曲はありますか?
BUMP OF CHICKENの「オンリー ロンリー グローリー」ですね。何年経っても、僕のことを励まし続けてくれる大切な曲です。 出だしが「そしてその身をどうするんだ」からはじまるんですけど、その「そして」の部分は自分に問われているんですよ。あとは、「選ばれなかった名前を呼び続けてる光がある」という歌詞が、学生時代部活でもバンドでも選ばれなかったことが多かった自分にすごく刺さりました。
――ご自身の楽曲の中で学生に届けたい曲はありますか?
「ライブオアライブ」ですかね。大学を卒業して、将来が不安なときに書いた曲なんですけど、当時の僕は「音楽の世界は生きるか死ぬか」だと思っていました。それで「生きるしかない、なにがあっても生き残ってやる」と腹を括ったんです。
それから今でも生き残るためになんでもやりたいなと思っているんですよね。 実はTikTokで知ってもらったのをきっかけに、今僕はTikTokとも繋がっていたいなと思ったので弾き語りをあげているんです。僕は僕の音楽を届けるためにやれることはなんでもやりたいなと思っています。
――10代のころや学生時代にやっておいた方がいいこと、見ておいた方がいいこと、やっておいてよかったことを教えてください。
やったほうがいいことは、旅行ですね。大人になると、思った以上に友達との時間が合わなくなってしまうので。よくその時の仲間と集まると、旅行の話になるのですが、みんなでいく予定だった沖縄旅行だけ行けてなくて。
見ておいたほうがいいものは「秒速5センチメートル」です。いわゆる恋愛映画ではなく、これがリアルな恋愛だよなっていうのが、ずしんと伝わってくるので見ておいて損はないですね。
やっておいてよかったことは、部活です。とくに部活ではなくてもいいんですけど、本気で何かを頑張っていた経験があるって、大きいなって思うんです。長い人生の中でも、何かを頑張ったときの経験って、意外と小さな勇気や自信に繋がったりするんですよね。
――今学生に届けたいメッセージがあれば教えてください。
僕、何事もとりあえずで良いと思っているんですよ。頑張ることもないし、サボっていても良いけど、とりあえず生きよう、やりすごそうで結果的に80年生きれていたらいいなって思うので、あまり気負いしすぎず過ごしてください。