【パナソニックIS×京都女子大学】産学連携ワークショップに潜入!「IoTデータを活用した、くらしを豊かにする提案」とは
2024年12月4日、パナソニック インフォメーションシステムズ (以下、パナソニックIS)は産学連携企画として、京都女子大学データサイエンス学部と連携し「IoTデータを活用した豊かなくらし」をテーマとしたワークショップを開催しました。
ワークショップが実施されたのは、2023年5月にオープンしたばかりのPanasonic XC KADOMAです。
本イベントでは、同学部の2年生9人が「パナソニック製品のIoTデータを活用した、くらしを豊かにする提案」を考え、パナソニックISの社員に対してプレゼンテーションを実施。学生の目線から、はたしてどのようなアイデアが生まれたのでしょうか?
熱のこもった学生たちの発表が目白押しのイベントについて、当日の様子をお届けします!
求められるのは「提案力」。グループワークで社員とともに資料をブラッシュアップ
開会に先立ち、パナソニックISを代表して専務執行役員でデータ&アナリティクスソリューション本部長を務める片岡栄司さんから挨拶がありました。
本日は「パナソニック製品のIoTデータを活用した、くらしを豊かにする提案」を発表いただくわけですが、まさに企業では「提案力」が求められます。それを支えるのが、技術力であり、ビジネス力であり、行動力/マインドです。最終的に市場のお客さまの満足度を向上したり、お困り事を解決したりするのがデータアナリティクスの目的ですので、ワークショップを通じ、企業の中でデータサイエンティストがどのような役割を担っているのかをご体験いただき、俯瞰の視野で提案力を高める機会にしてもらえれば嬉しく思います。
続いて、データ&アナリティクスソリューション本部 アナリティクスソリューション事業部所属のパナソニックIS社員4名が自己紹介を行いました。
駒田叡司です。経営指標・収支管理数値可視化やSFAデータ活用などを支援しています。新規事業に携わっていたこともあるので、そういった視点でも何かお伝えできればと思います。
眞梶結衣です。2023年にパナソニックISに入社し、現在はパナソニックのビューティー商品のアプリログの可視化支援や、データを活用した業務プロセス改善に従事しています。
保母健吾です。マーケティング・ECMデータ分析部で、主に海外家電事業の1to1 marketingやBtoBの営業データ活用を推進しています。
尾藤由衣です。大学ではソフトウェアバグの発生予測モデルの研究をしていました。パナソニックISではSCM領域におけるデータ活用を支援・推進しています。
その後、京都女子大学 データサイエンス学部の中村智洋教授からも挨拶がありました。
中村です。データサイエンス学部では自治体様や企業様との社会連携を担当しております。
将来データサイエンティストになると、本日実施する問題解決型のワークショップやプレゼンテーションといったスキルが大事になってきます。
私自身も今日の発表を楽しみにしているので、ぜひ本日はよろしくお願いします。
学生9名も自己紹介を行いました。緊張の面持ちながら、趣味や取り組んでいる活動の話を交え、1分という短い時間に一人ひとりの個性が感じられる内容でした。
そして、ワークショップがスタート。改めてテーマとねらい・目的が説明されました。
テーマ:
パナソニック製品のIoTデータを活用した、くらしを豊かにする提案
ねらい・目的:
・データ分析のビジネスへの適用を考えた、
実践的な提案経験とする
・答えのない仕事に対して、自分たちで考え、
提案するスキルをつける
テーマは「パナソニック製品のIoTデータを活用した、くらしを豊かにする提案」。ねらい・目的は、データ分析のビジネスへの適用を考えた、実践的な提案経験とする点と、答えのない仕事に対して、自分たちで考え、提案するスキルをつけることの2点。
プレゼンテーションに移る前に、パナソニックISの社員とともに発表資料をブラッシュアップするグループワークの時間が40分間設けられました。
「課題やターゲットをもっと具体的に」「このソリューションが、どの課題にアプローチするのかをより明確に」など、日々ビジネスの世界で説得力を問われる提案を続けているからこその指摘の数々に、学生たちは「難しい……」と本音を覗かせる一面も。
駒田さん、眞梶さん、保母さん、尾藤さんは時間の許す限り学生たちに寄り添い、一緒に資料をブラッシュアップしていきました。
2チームによるプレゼンがスタート!子育て中の女性や高齢者の課題解決を目指すソリューションとは?
グループワークが終わり、いよいよプレゼンテーションに。持ち時間は7分。ここからは、2チームの発表をご紹介します。
「A Better mother life, A Better child care」
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左から、田中莉子さん、川俣実憂さん、井上紫苑さん、駒井暉璃さん
このチームがターゲットに設定したのは、子育て中の女性。中でも、子どもを産んだばかりで育休を取得しているような女性をターゲット像として描きました。
まず現状分析として挙げたのが、出生率の減少です。「出生数、合計特殊出生率の推移」によると、2040年には日本の女性の大半が一生で子どもを産む人数は1人と予測されていると紹介。しかしながら「夫と妻の家事関連時間の推移」では女性の育児時間が増加傾向にあり、「夫婦の差は縮小としているものの、依然として女性の家事時間および育児時間が長い」と指摘しました。
次に挙げたのが、20代~50代の子育て当事者が感じる課題です。課題と感じる人の割合が高い項目として並んだのは「身体的負担(疲労)が大きい」「家事の負担が大きく、時間的余裕がない」「子どもをずっと見ていなければならず、安らぐ時間がない」でした。
さらに「6歳未満の子どもを持つ夫・妻の家事関連時間」の表から、「食事の管理時間が乳幼児の世話時間に次いで長い」との実態を明らかにし、多くの子育て中の女性たちは「育児と家事時間が長く、精神的・身体的に負担が大きい(特に料理に関する時間が長い)」「子どもをずっと見ていなければならず、自分の時間がほとんど取れない」といった課題を抱いているのではないかと想定。
そのうえで、家事・育児の負担軽減することで子どもとのコミュニケーションが円滑になったり、自分の時間や休息時間を確保したりできるようになることを「理想の姿」と位置づけました。
この「理想の姿」を実現するために考案したソリューションが「赤ちゃんカメラ」と「料理に関する補助」です。「赤ちゃんカメラ」を通して、起床時間や危険行為の傾向、表情や泣き声の種類などに関するデータを収集・分析できれば、見守る時間が短縮され、子育て中の女性はもちろん、赤ちゃんにとってもより良い環境をつくれるのではないかと提案。また、「料理に関する補助」については冷蔵庫を活用し、庫内の商品情報を収集・分析することで、献立の提案や栄養バランスのサポートができるのではないかと述べました。
「赤ちゃんカメラ」も冷蔵庫も、ともに初期の開発費用は高く、センサー技術やAI分析の統合に時間がかかる可能性はあるものの、既存のIoT技術を活用することで一部のコストを削減できると評価。
「赤ちゃんカメラ」は危険行動認知機能や声掛け把握などが他社製品との差別化につながり、冷蔵庫は栄養管理や健康志向の高まりにより需要は拡大するなど、それぞれの将来性にまで言及したプレゼンテーションは、子育てに奮闘する女性の負担軽減に光が射すものでした。
先ほどのグループワークでは「ターゲットや提案内容を絞りましょう」とお伝えさせていただきましたが、短時間でブラッシュアップし、より深掘りされたわかりやすい発表になっていたかと思います。
現状分析から課題を導き出していた点が優れていると思いました。「赤ちゃんカメラ」の提案がおもしろく、実現できたら世の中のお母さんたちはとても助かるのでないでしょうか。
「単独高齢者世帯の課題解決に向けたデータサイエンスとパナソニック製品の融合」
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左から、加古あやりさん、伊澤里咲さん、辻来未さん、菅沼小虹さん、古賀日捺さん
このチームが着目したのは、高齢者に関する課題です。令和4年(2022年)厚生労働省の国民生活基礎調査によると、全世帯数に対する高齢者世帯数の割合は約3割に及び、中でも単独世帯が最も多く、高齢者世帯数の過半数を占めていると紹介。そこで高齢者の視点、高齢者と離れて暮らす家族の視点、社会的な視点の3つの側面から考察を展開しました。
まず高齢者自身は、一人暮らしの孤独感や、緊急時に助けを呼べない不安感による心理的問題と、病気や老いに伴う身体の不自由から自己管理や外出が困難になるなど身体的な問題を抱えているのではないかと指摘。特に、孤食によって欠食や食事の簡素化を招くことが課題として挙げられると述べました。
次に高齢者と離れて暮らす家族は、定期的に会えない場合が多く、高齢者の体調悪化や緊急時の対応について不安や心配があり、心理的な負担も大きいのではないかと推察。また、社会的な視点から見ると、十分にサービスを受けられない場合もあり、高齢者の孤立により地域の支え合いが機能しなくなるという懸念点も挙げていました。
高齢者は「安全で健康な生活・自立した生活」を「理想の暮らし」と考えていて、離れた家族は「健康で長生きしてほしい」と願い、社会は「医療・介護サービスが充実した社会の実現」が求められていると、課題を総括。これらを同時に叶えるソリューションとして披露されたのが、高齢者の生活状況や健康状態を正確に把握するためのデータ活用です。
ひとつは、高齢者と家族をつなぐデータの活用。冷蔵庫から食品の消費データを取得したり、家電や水道メーターの使用記録を共有できたりするようになれば、高齢者の日常生活を見守ることができるのではないかと提案。さらに、体組成計や血圧、睡眠のデータを取得して高齢者と社会をつなぐことができれば、医療・介護サービスに役立てることができるといいます。特に食品消費データと身体データについては、パナソニックの家電を通して、効果的に収集できるのではないかと期待感を示しました。
具体的には、冷蔵庫にカメラとセンサーを取り付けて使用記録から食事の有無を把握したり、体組成計をIoT化することでスマートフォンから健康状態を定期的に確認したりする仕組みが考えられると解説。家族は遠くにいても高齢者の生活を見守ることができ、社会としても個別の健康情報をもとに適切なサポートが可能になると訴えました。
冷蔵庫については、庫内カメラや重量センサーを利用して食品消費データを収集する仕組みは現実的としながらも、価格帯やセキュリティ対策が問われるのではないかと分析。ただ、実現できれば、食品データを活用した新たなヘルスケア市場の開拓にもつながりそうと将来性にも触れていました。
また、体組成計については、アプリ開発コストやIoT機能追加のコストはかかる一方で、介護や医療分野での利用価値が高いため費用対効果は良好と判断。冷蔵庫と同様、プライバシー保護が必須であるものの、高齢化社会のニーズに合致しているため、病院や介護施設との連携といった将来的な拡張性が高く、孤独死の防止をはじめ、医療費削減や介護負担軽減にも寄与できると結論付けました。
2つの提案について、どういったデータを集めるのが必要で、どのようなメリットを提供できるのかがわかりやすかったです。データ活用を踏まえた製品の高度化に触れられている点も良かったです。
グループワークではいろいろと指摘させていただきましたが、最終的にわかりやすくまとまっていました。課題感とあるべき姿を深掘りしながらソリューションを考えられるようになると、提案の説得力がより増していくように思います。
学生たちのアイデアは、きっと社会に役立つ。いつかパナソニックISでカタチになるかも……!
2チームのプレゼンテーションと講評が終わると、パナソニックISの尾藤さんと片岡さん、中村教授が感想を述べました。
非常に貴重な提案をいただきました。社員の立場から見ても、学生の皆さまがどういったところに課題を感じているかは興味があるところです。皆さまのアイデアはきっと社会に役立つと思いますので、ビジネスでの視点も参考にしてもらいつつ、課題に対するアプローチを考える習慣を持っていただけると嬉しく思います。
2チームともユーザー視点で考えられた発表が素晴らしく、感動しています。パナソニックは暮らしの事業と環境の事業を推進していますが、前者において私たちがビジネスとして考えていることそのものと言っても過言ではない提案ばかりで、驚きの連続でした。強いて申し上げるなら、ビジネスモデルとして成立するのかといった視点はビジネスの世界では欠かせませんので、今後こういった機会があれば、収益性や競合他社との差別化なども深掘りして議論していただけると良いのではないかと思いました。
社員の皆さまにブラッシュアップしていただけたおかげで、より良いプレゼンテーションになったと思います。自分が大学2年生だった頃を思い出すと、このような資料を作って発表するようなスキルはなかったので、京都女子大学データサイエンス学部の学生の未来は明るいと感じた次第です。
パナソニックISの社員たちから大好評のプレゼンを繰り広げた学生からは、こんな声が聞かれました。
ビジネス視点で課題を見つめる力が身に付いたように感じています。
グループワークでは課題とソリューションとの間の“ズレ”をご指摘いただいたのですが、学内では得られにくい気づきでした。
フィードバックを受けて修正するという作業を繰り返しましたが、ビジネスの世界ならではのスピード感を体感できて楽しかったです。
当初はターゲットを「子育て中の女性」としていたのですが、アドバイスをいただいて「子どもを産んだばかりで育休を取得しているような女性」と絞ったことで、発表内容をより明確にできたと思います。
収穫の多かった今回の産学連携の取り組み。並行で実施していた同学の現代社会学部との産学連携企画と同じく、充実感で満たされた学生たちの表情が印象的でした。
中村教授が言っていたように「未来は明るい」。そう予感させてくれるワークショップでした。学生たちの今後の活躍が楽しみです。
パナソニックグループは、「IT」・「オペレーティング・モデル」・「カルチャー」の3つの変革を通じて経営盤を強化するDX戦略「PX(Panasonic Transformation)」を推進しています。 パナソニック インフォメーションシステムズは、パナソニックグループのIT事業会社として「PX(Panasonic Transformation)」の推進をデジタルのチカラでリードしていきます。 また、パナソニックグループの製品拠点で培った「現場に寄りそうIT技術」、グローバルかつ幅広い事業サポートで獲得した「確かな開発・運用能力」、および「現場の業務を確実に支える知見」を活用し、パナソニック グループ以外のお客さまのニーズにもトータルソリューションを提供していくことをお約束します。 「デジタルで、幸せをつくろう。」 それが私たちの想いです。