LGBTについて知れる映画特集

編集部:いとり
2018/12/31
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かつてはセクシャリティーについて堂々と映画内で語るのは難しいことでした。特に「同性愛」については、法律で禁じている国もあったため「それとわからないように潜ませる」「わかる人にはわかる演出でほのめかす」などの手法が取られたりしました。また現在でも直接的な表現を用いず、同性愛について表現する映画もあります。
今回はそのような同性愛についての表現を潜ませた映画をご紹介します。

以下の記事にはネタバレを含みますので注意してください。

LGBTについて知れる映画特集

『太陽がいっぱい』(1960年)

アラン・ドロンをイケメンスターに押し上げた名作映画です。物語は、ドロン演じる貧乏な青年・トムが、大富豪の息子・フィリップを殺害して大金をせしめる計画を立てるが……というサスペンスストーリーです。

一見普通の犯罪映画に見えるのですが、トムがフィリップの衣装を身に着け、鏡に映った自分にキスするシーンがあります。映画評論家の故淀川先生はこのシーンを指して、これはトムがフィリップを愛していて、トムはフィリップになりたかったんだよと指摘されました。トムのセクシャリティーがこの演出で描かれているというのです。

淀川先生は本作をずばり「ホモセクシュアル映画の第一号なんですよね」と評したこともあります。また当代一の映画評論家・町山智浩先生は、このような淀川先生の「作品に通底する制作者の意図を見抜く姿勢」から映画の見方を教わったと語っていました。

『アラビアのロレンス』(1962年)

『アラビアのロレンス』は、イギリス人ながらアラブ独立闘争をけん引した実在の人物「トマス・エドワード・ロレンス」を描いた作品です。この映画はロレンスの葬式から始まり、ロレンスがどのような人物であったのか、どんなことを成し遂げたのか、過去に戻って観客に示し、最後にまた現在へ視点を戻します。

本作も淀川先生が「ホモセクシャルの映画」と指摘する映画です。例えば、本作内で描写される「トルコ軍に拷問を受けるロレンス」「ロレンスのしもべとなった遊牧民の2人の少年との関係」などにそれが見て取れるとされています。もし機会があれば、これらのシーンを確認してみてください。

イギリスでは長く同性愛は違法でした。例えば、ドイツのエニグマ暗号を解読した救国の英雄アラン・チューリングも同性愛者だったため悲劇的な最後を遂げています。男性同士の性交渉が合法とされたのは、イングランド、ウェールズでは1967年のこと。ですから、公開年が1962年の本作、またロレンス自身の著書『知恵の七柱』※でも決してそのような直接表現はありません。

※『知恵の七柱』はトマス・エドワード・ロレンス自らが著した自身の活動についての記録。1916年6月の「アラブの反乱」から1918年10月の「ダマスカス入城」までを記載しています。

『狼たちの午後』(1975年)

実際にあった銀行強盗事件を基に制作された映画で、監督は名匠シドニー・ルメットが務めています。主演は『ゴッド・ファーザー』などで有名な男くさい名優アル・パチーノです。ニューヨーク、ブルックリンの銀行に押し入った3人組の強盗団が警察に取り囲まれて籠城。強盗なのになぜか市民たちからの共感を得て、同性愛者差別に対する抗議デモなども巻き起こり、事態は混迷を深めていく……というストーリーです。

この映画に同性愛者の団体が登場するのには理由があります。この映画の基になった1972年に起こった銀行強盗事件というのは、犯人(ジョン・ウォトビッツ:男性)が「恋人(男性)に性適合手術を受けさせるための費用」を稼ぐために起こしたものだったのです。当時ニューヨークではLGBT運動が大きな注目を集めていました。

1969年には「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」というゲイバーで、強制捜査に踏み込んだ警官に対して同性愛者が団結して立ち向かう事件が起きています。この翌年には、事件の1周年を記念してパレードが行われました。今や世界的に行われているゲイ・パレードはこれが元祖といわれているのです。

本作はこのような時代背景の下に制作されており、一見普通の犯罪映画に見えますが、元々の事件が事件だけにその底にはセクシャリティーの問題が流れているのです。ちなみにアル・パチーノはこの後ハードゲイの世界を描いた『クルージング』(1980年)にも主演しています。この「クルージング」とはゲイ用語で「男を漁る」という意味。『エクソシスト』を撮ったウィリアム・フリードキンが監督を務めています。

『ウーマン・イン・レッド』(1984年)

ジーン・ワイルダー監督の手に成る傑作コメディーです。サンフランシスコ市の冴えない職員テディは、ある日地下駐車場で赤い服に身を包んだ魅力的な女性シャーロットを見掛けます。シャーロットは市のキャノペーンに起用された女性でしたが、彼女に魅了されたテディは家庭も顧みず追い掛け続ける……というストーリー。

一見、普通のドタバタコメディーなのですが、中に一カ所同性愛者についての深刻なシーンがあるのです。テディが悪友たち(親友ともいう)と屋外でランチを取っていると、一人の男がやって来て、悪友の一人のランチにチェーンのブレスレットを投げ込みます。その悪友の一人は悲しそうにブレスレットをナプキンで拭います。

実はそのブレスレットは悪友が「彼」に送ったもの。彼と一緒に住もうと部屋まで借りていたのですが、投げ込んだ男に彼を取られてしまったようなのです(詳細な説明は一切ありません)。テディは悪友の部屋を訪問し、やけになって「(彼と2人で塗ろうとしていた壁を)真っピンクに塗ってやろうか」と言う悪友を下手なジョークで慰めます。本筋とは全く関係なく、詳細な説明はありませんが、ゲイに寛容な街として知られるサンフランシスコを舞台とした物語だからこそ挿入されたエピソードといえるでしょう。

『リプリー』(1999年)

『太陽がいっぱい』と同じく、パトリシア・ハイスミスの小説『リプリー』を映画化した作品です。主人公のトム・リプリーをマット・デイモンが、大富豪の息子ディッキー・グリーンリーフをジュード・ロウが演じました。

本作では『太陽がいっぱい』よりもトムのセクシャリティーが明確に描かれています。トムはディッキーを愛するようになりますが、ディッキーはトムを疎ましく感じるようになり、ついには殺人が起こるのです。また、本作ではトムが愛する第二の男性・ピーターが登場します。トムはピーターと二人で船旅に出るのですが……。

同じ原作を基にしながらも、制作された時代が違うためセクシャリティーの表現も大きく異なる『太陽がいっぱい』と『リプリー』。淀川長治先生は惜しくも1998年に亡くなられましたが、もし淀川先生がこのリメーク作『リプリー』をご覧になっていたらどんな感想を口にされたでしょうか。

『J・エドガー』(2011年)

もはや巨匠の域に達しているといわれるクリント・イーストウッドが監督を務め、レオナルド・ディカプリオが主人公ジョン・エドガー・フーバーを演じた作品です。

フーバーは初代FBI長官になった人物ですが、1972年5月2日に死ぬまでずっとその地位に留まり続けました。これには理由があって、調査・盗聴などで大統領や政府高官のスキャンダルを収集し続けていたため、歴代政権の誰も彼の首を切れなかったのです。

フーバー長官は生涯独身を通した人で、現在では「彼は同性愛者で、異性装者だった」といわれています。本作でも彼を生涯支え続けた副官、クライド・トルソンとの「友情関係」が描かれます。ただし、あくまでも上品な描写で直接的な表現はありません。ですからフーバーについてよく知らない人が見れば、寂しい人だったんだなといった印象だけを持つかもしれません。

しかし、本作の奥底に流れているのはFBI長官という重職に上り詰めたが故に際立つ、メジャーではないセクシャリティーを持った男性の悲しいまでの孤独さなのです。ラストには、ベッド脇の床にパンツ一枚で死んでいるフーバーに副官のトルソンがブランケットを掛けそっと肩を抱くシーンがあります。


というわけで、同性愛についての表現がひっそりと行われている映画についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。同性愛を違法とする時代には直接的な表現ができず、それとなくほのめかしたり、わかる人にはわかる演出でしか観客に伝えられませんでした。
現在では、より直接的に表現し、大上段にそれをテーマにすることも可能となっています。同性愛をテーマにした映画はこれからもたくさん作られるでしょうね。

(柏ケミカル@dcp)

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好きなものはチョコとビールと音楽と映画。ネトフリ廃人。ときどき絵を描きます。
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