元世界一即戦力の男・菊池良が見た #就活ホンネ会議「大学生の疑心暗鬼と饒舌ではない私たち」

菊池良
2018/12/27
生き方を知る
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2018年12月19日。東京証券取引所には多くの人間が集まっていた。

その日はソフトバンクが上場をし、海外テレビクルーが取材している姿も見える。ほかにも上場を果たした会社があり、断続的な鐘の音と拍手が場内に響く。頭上では円環型の電光掲示板が、各社の株価を表示させながら。

はじめて東証にやってきた私は、これが日本の資本市場の中枢かと、少し浮き足立っていた。だが、ソフトバンク上場の取材にやってきたわけではない。その日、日本最大の証券取引所の一角では、大学生と企業が集まってあるディスカッションをするイベントが行われていた。

そのイベントの名前は『就活ホンネ会議』。


就活中の髪型に関する #1000人の就活生のホンネ | パンテーン (Pantene)

ー自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?

過度に画一化する「就活スーツ」や「就活ヘア」に対して問題提起をするパンテーンの広告だ。グラフィック全体が、就活生へのアンケートで集まったメッセージによって構成されたモザイクアートになっている。多くの企業で内定式が行われた2018年10月1日にむけて発表されたこの広告は、Twitterなどでのたくさんの議論を呼んだ。

この広告の反響をうけて、大学生向けWEBメディア『マイナビ学生の窓口』が、今回のイベント『就活ホンネ会議』を開催した。大学生と企業たちに、今の就活について本音でディスカッションしてもらおうというイベントだ。同誌の依頼で、最近社会ムーブメントを仕掛け続けているPR会社マテリアルでエグゼクティブ・ストーリテラー関航氏がイベントの企画に加わっている。

私は『マイナビ学生の窓口』から「イベントレポートを書いてほしい」と頼まれ、この会議に招待された。なぜ私が選ばれたかについては、少し説明が必要だろう。


世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ 

私は大学3年の就活シーズンの時期に『世界一即戦力な男』というWebサイトを立ち上げ、自分を雇いたい企業を募集し、それで就職先を決めた(今は独立している)。通常の就活をしていない人間の視点から、レポートをしてほしいのだろう。

私は就活がしたくなかったので、就活せずに就職できる方法を考え、実行した。別に就活に対して反抗心を持っていたわけではない。「就活」という方法では苦労することが目に見えていたので(なにせ4浪だった)、奇策に打って出ただけだ。逆に言うと、「就活」をして優良企業に入れそうなら、やっていただろう。『即戦力』のサイトを見た人間のなかには、私が就活に否定的だと捉える人間もいたが、自分では肯定でも否定でもない中立の立ち場だと思っている。

さて『就活ホンネ会議』は、大学生と企業が2グループにわかれてディスカッションが行われる進行になっていた。

議題はパンテーンの広告を踏まえて「就活ヘア」「就活ファッション」がテーマだ。

画一化する就活ヘアやファッションについて、大学生や企業たちはどう思うか。暗黙のルールに従うか、否か。そんなものには、「NOに決まっている」「どこまでもNOを付きつけろ」……と私なら思ってしまうが、大学生の「ホンネ」は聞いてみないとわからない。

会場には続々と大学生たちが集まっていた。就活中の学生から、まだ就活を行っていない学生、就活を終えた4年生など、さまざまな顔が並ぶ。


議論のようすは来年1月末に映像でも配信されるそうだ


服装の指定に賛成かどうかは、意外にも……

まずは大学生だけでディスカッションが行われた。最初の議題は「就活生が企業側に服装や髪型を合わせることに賛成かどうか」。それぞれ手元の画用紙に、賛成か反対かを書く。

結果は、賛成5人に、反対2人。

賛成意見としては、

服装や髪型を指定している企業は、そうする思惑があると思うので合わせたほうがいいと思う」というもの。

それに対して反対意見には、

好きな服装や髪型をしていたほうが自分が出せる
就活ヘアは似合わないので、自分はあまりやりたくない

といった声がおもに女性から多く出た。

ちなみに今回、議論に参加する企業側へ事前にしていたアンケートによると「大学生が自由な服装・髪型で就活することに対して賛成か、反対か?」という項目は賛成が100%となっていた。この結果を司会者が明かすと、大学生側からは疑問の声があがった。

そこで司会者が「企業から服装自由と言われたら、どういう服装で面接に行くか」と聞くと、私服とスーツで半々に分かれ、あいだをとってオフィス・カジュアルで行くという声もあがった。

この議論のなかで多く飛び交ったのが「戦略」という言葉。大学に通いながらCYNHN(スウィーニー)というボーカルユニットで歌手活動をしている崎乃奏音さんは、自身がオーディションに参加した経験を例に出しながら、「自分という商品をどう見せるかが大事。オーディションでは自分のスタイルがよくわかるように、冬でも半袖のシャツと短パンで行くこともあった」と話した。

お笑いサークルに所属する上原子育志さんは「そもそもの大学生の考え方がまちがっている」と声をあげた。絶対に行きたい企業があるのなら、そこへ合わせたらいいという意見だ。

つまり、入社したい企業に合わせて、自分がよく見えるよう戦略的に行動すればいい、ということだ。しかし、それが行き過ぎた結果、現在の均一化が起きているのでは……と私は感じていたが、そこは話されなかった。

そんななか、現在就活中という山田真由美さんは「自分自身は、ひっつめ髪が似合わないのであまりしたくないが、現在は周囲に合わせている。このパンテーンの広告をみたり、企業に服装自由でいいよと言われても、ひっつめ髪をほどいて就活をする最初のひとりにはなれない」と正直な気持ちを語ってくれた。

最後に「企業にいちばん聞きたいことは?」と聞かれると、自由な服装・髪型について賛成が100%になったアンケートについて「自由というけど本心なのか?」「”服装自由”の許容範囲は?」といった声があがった。

大学生と企業はほんとうにホンネで話せるか?

約1時間の大学生だけのディスカッションが終わり、いよいよ企業で働く社会人との対面になる。

前半のディスカッションでは、

佐伯真唯子さん(脱毛サービス「キレイモ」COO)
青木葉子さん(「ぐるなび」で学園祭イベントの運用を担当)
渡辺宰二郎さん(ベンチャー企業「favy」人事部長)
森奏子さん(PR会社「マテリアル」1年目社員)

という4人が顔を揃え、対する大学生側には女子学生の3人が座った。

改めて、大学生たちに企業側に聞きたいことをフリップに記入してもらうと、まず出たのは「入社後の髪型と、就活中に求められる髪型が違うのは変じゃないのか」というもの。

その問いに対して、キレイモ佐伯さんとマテリアル森さんは「変だ」と回答。佐伯さんは「弊社はエステティシャンを採用をしていることもあり、面接時には入社後と同じ髪型を指定して臨んでもらっている」と答えた。

favy渡辺さんは「弊社はIT企業なので、髪型や服装はほんとうに自由ですが、接客業の場合なら『その面接時のような髪や服で接客するの?』と採用側がイメージしてしまうことはあるかと思います。結局、企業や業種によるのかも」とつづけた。

ぐるなび青木さんは「個人としては金髪とかでもいいと思うけど、そうじゃないと感じる企業の方がいるのも事実」と言ったあとで、誰にでもよく見せるために就活ヘアがあるのではないかと大学生に話した。

この答えに対して、大学生側は「たしかに接客業やアナウンサーなど人と接したり、人から見られる仕事なら、相手から見てどう思われるかを考えなければいけないと思う」と歩み寄りを示した。

さらにキレイモ佐伯さんは「接客業なので、髪型や服装だけじゃなくて面接時の爪の長さや清潔感も選考基準にしている」と言い、ぐるなび青木さんは前職でモデル業をやっていたことを明かして「制約のなかでどれだけ自分を表現できるか」と持論を展開した。

つづいて大学生側より、先程の企業側へのアンケート結果に触れて「企業は髪型や服装が自由でいいと言うけれど、ほんとうに自由な格好でいいのか?」と疑いをぶつけた。

キレイモ佐伯さんfavy渡辺さんは「OK」、ぐるなび青木さんは「あなた次第」と回答した。

現在社会人1年目で、自身も就活で苦しんだというテリアル森さんは「自分は採用担当ではないので」と断りを入れたあと「自由な格好が受け入れられる社会になってほしい」と答えた。

また「服装や髪型を指定することで、大学生の内面を見ようとしている(比べやすくしている)にも関わらず、その結果、大学生が話す内容までも一辺倒になっているという現象が起こっているのではないか」と企業側の姿勢に疑問を投げかけた。

これには大学生たちも「森さんとは以心伝心」と共感を示した。

なおも企業に問われる「それはほんとうか」

後半のディスカッションでは、参加者がすべて入れ替わり、

岩熊英一さん大戸屋・広報担当)
渡部兼蔵さんTABI LABO・人事)
神崎拓海さんAnyPay・プロジェクトマネージャー)

という男性3人が席についた。

対する大学生側は男子学生が5人という形になった(うち1人はこのディスカッションからの参加)。

まず、ここでも先ほどのアンケート結果の「学生が自由な服装・髪型で就活すること」に賛成が100%だったことが疑問視された。改めて、ほんとうに賛成なのかと、大学生が企業に問う。

AnyPay神崎さんは「100%OK」、TABI LABO渡部さんは「200%OK」、大戸屋の岩熊さんは「100%OK」と明言した。ただし、岩熊さんはその許容範囲として「接客業だから最低限の身だしなみはある」「好きな人と会うときに身だしなみを整えるのと同じ」とも付け加えた。

これに対して、大学生から「面接以外の採用方法はないのか?」と聞かれると「Web面談」「インターン」「対面での食事」という答えがあがった。「2時間半、飲み食いすると相手のことがわかる」「クリエイターは弟子入りがいい」との声も。

なおも大学生に「本当にありのままの自分を就活で出していいのか?」と問われ「ありのままで大丈夫」と念を押す場面のあった。そこでは大学生だけのディスカッションでも出てきた「戦略」の話になり「誰に好かれたいかを考えて行動するとよい」「自分という商品の強みを見出すことの重要性」などが語られた。

このパートの最後で大学生からは「就活における、学生と企業の問題は解決できるのか」という根源的な問いも出た。そこでは企業側は3人とも「まだ時間はかかるかもしれないが、疑問を持つ人が増えてきているので解決する。そういう時代がきている」と、それぞれの視点から大学生たちに丁寧に答えた。

この瞬間が、今回のディスカッションのハイライトだろう。

大学生の疑心暗鬼と、饒舌ではない私たち 

2つのディスカッションを終え、大学生と社会人が全員集合した記念写真が撮られ、イベントは終了となった。東証側の粋なはからいで、大学生たちは東証を見学することもでき、それを楽しんでいるようだった。

総じて、大学生たちが「それはほんとうか?」と聞き、企業側が何度も「ほんとう」と回答するイベントだった。

私は主催の『マイナビ学生の窓口』の編集長からディスカッションの感想を聞かれて、思わず言いよどんだ。これは就活どうこうの問題ではないと思ったからだ。

全体として言えるのは、大学生たちが疑心暗鬼に陥っているということだ。大学生たちは何度も聞いた。「服装自由と言っているけど、ほんとうは?」。そこには言葉を文字どおりに受け取れない何かがある。そこに「裏のルール」が存在していて、それに違反すると、就活というステージからは退場させられると思い込んでいるのではないか。

しかし、そんな「裏のルール」は存在しないというのが実情ではないだろうか。だれも「服装自由を額面通りに受け取るやつがいたら、その場で落としてやるぜ」なんて意地の悪いことは考えていない。もしそんな会社があるとすれば、担当者は『ハンター×ハンター』の読みすぎだ。

こんな状態を招いているのは、企業側にも原因があるように見える。例えば、前半のディスカッションでは、キレイモの佐伯さんが、「接客業だから爪が清潔かどうかも見る」という発言をしていた。ここまで明確に言われたら、その選考基準に納得することができるが、世間の「応募要項」にはそこまで書かれていないのが現実ではないだろうか

つまり、企業側も言葉が足らないのである。その結果として、大学生側は言葉以上のものを読み取ろうとし、疑心暗鬼になっていく。その結果、就活は「人狼」(誰が村人に化けた狼かを当てる心理ゲーム)をする場所になってしまう。

もっと企業側の選考基準を明確に明示すべきではないだろうか。favy渡辺さんは、ディスカッションのなかでも「うちはIT系だから服装は自由」という趣旨の発言をしていた。採用ページにも「弊社はIT系だから服装は自由です」と明記されいれば、大学生側も安心してラフな格好で面接に行くのではないか。

私たちの社会は言葉でできている。書いていないこと、言っていないことは伝わらない。だから、企業側は言葉を増やす必要がある。ただ、ここには別の壁も存在する。私自身も経験があるが、社外の人間から会社のことを聞かれて「どこまで話していいのかわからない」と困惑してしまうのだ。「自分は会社のいち構成員ではあるが、会社を代表して喋れる人間ではない」。この感覚はおそらく多くの人間が共感するのではないだろうか。私たちは「会社」が主語になると、なぜか言葉を失ってしまう。

そう考えると、今回の『就活ホンネ会議』のように、大学生と企業が「ざっくばらんに話そう」という場所をセッティングするのは、その壁を乗り越えるいいきっかけになるのかもしれない。もっと企業が饒舌になることが必要だ。そして、たぶん大学生も。

私が個人的に大学生たちに伝えたいことは「就活のルールに乗ることがすべてではない」ということだ。「就職」と「就活」は別ものだ。「就活」以外にも「就職」する方法はいくらでもある。バイトやインターンから入社する人間はいくらでもいるし、なにかの活動が認められて企業からスカウトされるようなこともある。あるいはクリエイティブな領域に目を向けると、もはや可能性はどこまでも広がる。「どう就活をこなすか」じゃなくて「どうやって就職するか」も考えてみると、選択肢も広がるかもしれない。

ただし、その場合はルールがまったくないので、どう攻略するかは自分で考えないといけない。その観点からすると、誰もがスタートラインに立てる「就活」にはある種の公平性があると言えるだろう。私としては「逃げたければ逃げろ、色鮮やかな砂漠が出迎えてくれるぞ」と言いたいところだが、そんな言葉は無責任だと批判されるだろう。

主催の『マイナビ学生の窓口』によると、この『就活ホンネ会議』はシリーズ化していくという。次回は来春に開催予定ということで、そこでなにが話されるかはわからないが、ざっくばらんな対話が行われることを、まずは期待したいと思う。

あなたからはじまる、第二の #就活ホンネ会議

あなたはこのレポートを読んで、どう思っただろうか。大学生あるいは企業側の意見に、同意するだろうか、それとも反発するだろうか。何か意見が言いたくなったときに、第二の「就活ホンネ会議」がはじまる。ぜひツイッターなどのSNSで、あなたの気持ちを書いてほしい#就活ホンネ会議  というハッシュタグを添えて。就活の画一化から逃れるために。

ライター:菊池 良
スチール撮影:中邨 誠
映像撮影:mojamojajunction
出演:8名の大学生と7名の企業のみなさん
企画アドバイザー:関 航(マテリアル)
企画・編集:マイナビ学生の窓口編集部

菊池良

ライター、編集者。学生時代に公開した、面接官に向けた逆採用サイト「世界一即戦力な男」がヒット。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)、『世界一即戦力な男』。
Twitter:@kossetsu

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