若きエンジニアの祭典! JAMES DYSON AWARD に学生記者が潜入してみた【学生記事】 2ページ目
(公式HP http://www.jamesdysonaward.org/ja/projects/oton-glass/ より引用)
制作者が失読症である父親の障がいを何とかしたいという思いから生まれた「OTON GLASS」。視覚的な文字情報を音声に変換する機能を持ったプロダクトであり、最終的には製品化を目指しているそう。本人いわくまだまだ改良する点があるそうなのですが、今回受賞した中でも個人的に一番リアルな像を描いて作られたプロダクトだと感じ、製品化が楽しみです。
▽第2位(国内準優秀作品) 山田泰之「TasKi」
これまで紹介した作品の2つが、障がいを持つ人に寄り添ったテーマ設定でしたが、農業と高齢化社会という彼らとは別の視点から課題解決のアプローチをしたのがこの作品です! 特別な操作を必要とせず、直観的な操作性は、機械に不慣れな高齢者にも使いやすく、製作者の「使用者ファースト」の気持ちがこもった作品だと感じました。自分自身、農家の方々がこれを装着して農作業を行っている姿がありありと目に浮かんできて、このアワードのテーマでもある「問題解決をデザインする」にとても寄り添った作品ではないかと思いました。▽第1位(国内最優秀賞) 三枝(さえぐさ)友仁「Communication Stick」
今年の国内最優秀賞は、こちらの「Communication Stick」が選ばれました! 介護施設で高齢者の方にヒアリングを行ったときに感じた「高齢者の外出問題」をテーマとして掲げ、できあがった作品がこちらです。一見普通の杖に見えるものの、実は「音声からのテキストメッセージ送信」「受信したテキストメッセージの音声読み上げ」「転倒時の位置情報通知」の3つの機能を備えたハイテクな杖なんです! 高齢者と介護者の間にある、外出時の「転倒」「迷子」の2つの不安を解消できる作品であり、審査員の田川氏も「この作品を使用するユーザーの姿が自然に映る」とおっしゃっていました。
そして、今回国内最優秀賞を受賞された三枝さんに、特別にインタビューを行いました!
Q:今回の作品制作の動機は?A:ヒアリングを通じて感じた、高齢者の方々が安心して外出できるように支援したいという気持ちが製作の根底にあります。
Q:杖のデザインがとてもスタイリッシュで、まるでダイソンの製品のようなデザインだと感じたのですが、今回応募するにあたってそこは意識しましたか?
A:特に意識して製作はしていません。ただ自分が通っていた学校で「機能を追求すれば、デザインは必然的に美しくなる」と教わったことはとても印象深く残っていますね。今回の製作においても、まずは高齢者の持つ杖への「嫌悪感」を払拭しようと思いながら製作を重ねていくうちに、突起物やコード類は見えなくなり、このデザインになりました。
Q:この賞を受賞したことで期待をしていることはありますか?
A:この賞がなければ、自分の作品が大きく取り上げられることもないと思います。道具1つで生活が変わると自分は思っているので、今回の受賞をきっかけにもっと知名度を上げ、少しでも役に立つものを世の中に送り込めたらと思っています。そのためにはどんな形でもいいから製品化をしたいですね。10本でも100本でもいいので。
Q:最後に、学生に向けてメッセージをお願いします!
A:まずは手や体を動かすことが重要だと思います。このアワードに応募するだけでもかなりのハードルがあり、専門外の知識が必要だしとても大変でした。ただ積極的に手や体を動かし、協力者の支えもありながら、何とか完成までこぎつけました。自分が動いたから、まわりも動いてくれたのではないかと感じますね。今までと違うことするときは誰しも乗り越えるべきハードルがあると思うんですけれど、まずはそのハードルを越えるために自分から動くことが大事になってくると思います。
自分自身今回の取材を通じて初めて、プロダクトデザインという分野の活動の一部を知ることができました。今後大きく発展していくであろうプロダクトデザイン業界のパイオニアになる方々の話を聞くことができ、問題意識を常に持ち、その解決のために行動する積極性を持つことが大事なことだと学びました! 毎年開催されるこのコンテスト、興味がある学生さんはぜひ参加してみてはいかがですか?
文・慶太