「きみ、この仕事は向いてないから他の職業を探したほうがいいよ」——自分の仕事ぶりについて上司や取引先からこんなセリフを言われたらショックではないだろうか。しかも二十代の若手から中堅に差し掛かるころとなれば、ダメージはもっと大きい。そんなショッキングな評価が、世界一のサッカー選手にもくだされていた。
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その選手の名は、世界最強のクラブチーム、FCバルセロナのエースストライカーで、アルゼンチン代表のサッカー選手、リオネル・メッシ(26)。『キャプテンメッシの挑戦』の著者で、アルゼンチンに住みながら25年間同国のサッカーを取材し続けてきた藤坂ガルシア千鶴氏によると、2011年のコパ・アメリカ(南米選手権)では、無得点に終わったメッシに対して、猛烈なブーイングが巻き起こったという。
「役立たず」「国歌も歌えない」「愛国心に欠けている」「他の職業を探した方がいい」——。代表にかかる期待とプレッシャーは半端なものではなく、日本代表を例にとっても、結果が伴わなければ選手や監督は批判されるが、そこはサッカーこそ最高の娯楽である南米。その中でも盟主の座をブラジルと長年争ってきた自負があるアルゼンチンだけに、当時すでに2年連続でバロンドールを受賞し、クラブ世界一にもなったスーパースターにも容赦はなかった。大きなミスを犯したり、低調なパフォーマンスに終わったりすれば、激しい非難やバッシングが起きてしまう。
そんな中、ブラジルワールドカップ本大会出場を目指すべく就任したサベーラ監督により、もともと性格的に無口で人見知りだったメッシが、アルゼンチン代表キャプテンに任命された。厳しい環境の中で、いちプレイヤーの立場から、チームを束ね、大きな責任を負うリーダーへの階段を上ることを強制的に求められた。
前出の藤坂氏によると、当初アルゼンチンの世論は、「スペイン育ちの内気なメッシにキャプテンは務まらない」と大半が否定的だったという。しかし、メッシは「相応しくない」と言われたアルゼンチン代表キャプテンとして厳しい南米予選を戦い続ける中で、周囲からどれだけバッシングを受けても、自分にしかない力を信じ、決して雄弁ではないが闘志あふれるプレーでひたむきにチームを引っ張っていった。
そして「アルゼンチン代表の信頼されるキャプテン」として、ついに本大会出場の切符を手に入れたのである。
いよいよ6月に迫ったワールドカップ・ブラジル大会。本田圭佑、香川真司を擁する日本代表はどこまで勝ち上がれるのか、優勝する国はどこなのか、スーパースターはどんな名勝負を魅せてくれるのか、など興味はつきないが、内気な青年から国民の信頼を集めるキャプテンに成長したメッシのピッチ上でのリーダーシップにも注目してみると、仕事やプライベートに活かせるヒントが見つかるかもしれない。
文●編集部
『キャプテンメッシの挑戦』(藤坂ガルシア千鶴 著/朝日新聞出版)
http://publications.asahi.com/...
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