うまいもうけ話を聞いた時などによく「眉唾だね」と言ったりしますよね。「だまされないように用心する」という意味で他にも「眉に唾をつける」「眉に唾をする」「眉に唾を塗る」という言い方があります。
だまされないようにすることと眉毛に唾を塗ることに、どんな関係があるのでしょうか。詳しい解説とともに、「眉唾」の使い方や言い換えなども紹介します。
▼目次
1.「眉唾」とは?
2.「眉唾」の由来
3.「眉唾」の正しい使い方・例文
4.「眉唾」の類義語・言い換え表現
5.自分で眉を数えられる時代になっても
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「眉唾」は「まゆつば」と読みます。どんな意味があるのでしょうか。
「眉唾」は辞書には次のように書かれています。
「眉唾」の意味は、「だまされないように用心すること」という意味です。昔の人は、眉に唾をつければ、狐狸にだまされないと考えていたようです。
「眉唾」に「物」をつけた「眉唾物」とは、だまされないように用心すべき事物のこと。「いかがわしい、真偽の疑わしいもの」という意味です。
そのまま信用していいかどうか疑わしい時などに「その話は眉唾物だ」のように使います。
真偽が疑わしいことと眉毛に唾を塗ることにはどんな関係があるのでしょうか。実は、同じく眉毛に関連する慣用句で「眉毛を読まれる」という言葉があります。
「読む」とは「数を数える」という意味です。近世では、眉毛の本数を他人から数えられることは、心を見透かされることを意味していました。心を読まれると、人からいいようにされたり、ばかにされたりすると考えられていました。人だけでなく、キツネやタヌキにも化かされると恐れていました。
眉毛は目・鼻・口と同じように確かに自分の顔にある自分のもの。それなのに、自分で見ることはできません。そんな眉毛を他人から数えられるのは大変不安なことだったようです。
眉毛を読まれることへの対策として考え出されたのが、眉毛に唾をつけること、「眉唾」でした。眉毛を濡らしてしまえば、1本1本数えることができなくなります。キツネやタヌキに化かされたり、人にだまされたりする心配も減ります。そこから、目の前の話を信用していいかどうか疑わしい時などに「その話は眉唾(物)だ」と使うようになったと考えられます。
『新明解語源辞典』(三省堂)によると、「眉に唾をつける」は近世に、「眉唾物」は明治期以降にその用例が見えるようです。
眉に唾をつけるとキツネやタヌキにだまされないとは、現代の私たちから見るとおとぎ話です。鏡を見ればいつでも自分の顔が見える今、「眉唾(物)」は死語になるのかと思いきや、案外よく使われています。どんなに時代が変わっても、だまされることへの不安はなくならないということなのかもしれませんね。
信じてもらえていないかもと感じた時、疑わしい話を聞いた時、信じてはいけないと助言したい時。「眉唾」という言葉は、ビジネスでも日常生活でもさまざまに使えます。
周囲に信憑性が低いと思われていることが予想される時、次のように使えます。
うまい投資話などを持ちかける人物は、その経歴も華々しいことが多いものです。簡単に鵜呑みにできないと言いたい時、次のように使えます。
うまい話は、投資だけではありません。ダイエットや美容、旅行など人の欲望につけこむ話を聞かされた時、次のように使えます。
「眉唾」であることを言いたい時、他にもさまざまな言葉があります。言い換えたい時の表現を紹介します。
読みは「うさんくさい」。様子や態度が疑わしく、気が許せないさま。どことなく怪しいさま。「臭い」だけでも同じ意味。
読みは「におう」。巧みな隠蔽が施されて見た目からは分かりにくいが、なんとなく怪しい感じがする。疑わしい。
読みは「うたがわしい」。事実かどうか、不確かであること。不審で怪しい。
読みは「くびをひねる」。疑わしく思う。
読みは「かいぎてき」。物事の意味や価値について疑いを持っているさま。
読みは「あやしい」。普通と変わっていたり正体不明だったりするさま。疑念や警戒心、不思議な感じを起こさせるさま。
鏡はもちろんスマホでも、いつでも自分の顔を見ることができる現代。私たちは眉毛を読まれる心配なく、自分で自分を客観視できる安心感を手に入れたといえますね。とはいえ、心を見透かしたような物言いで人をだまそうとする人は、どんな時代であっても存在します。
現代のキツネは、眉毛を読むより心理を読むほうが得意の様子。眉毛の本数を数えられる不安がなくなっても、引き続き眉唾物のもうけ話には引っかからないようにしましょう。
(前田めぐる)
※画像はイメージです。
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