「眉唾」「眉唾物」ってどういう意味? 正しい使い方を解説【例文つき】

2024/04/25

ビジネス用語

社会人ライフ

スキルアップ

うまいもうけ話を聞いた時などによく「眉唾だね」と言ったりしますよね。「だまされないように用心する」という意味で他にも「眉に唾をつける」「眉に唾をする」「眉に唾を塗る」という言い方があります。

だまされないようにすることと眉毛に唾を塗ることに、どんな関係があるのでしょうか。詳しい解説とともに、「眉唾」の使い方や言い換えなども紹介します。

▼こちらも合わせてチェック!
【嫌われ度診断】 あなたの好感度はどれくらい?

「眉唾」とは?

「眉唾」は「まゆつば」と読みます。どんな意味があるのでしょうか。

眉唾の意味

「眉唾」は辞書には次のように書かれています。

【眉唾】まゆつば
(眉に唾をつければ、狐狸にだまされないという俗信に基づく)
欺かれないように用心をすること。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)


「眉唾」の意味は、「だまされないように用心すること」という意味です。昔の人は、眉に唾をつければ、狐狸にだまされないと考えていたようです。

眉唾物の意味

「眉唾」に「物」をつけた「眉唾物」とは、だまされないように用心すべき事物のこと。「いかがわしい、真偽の疑わしいもの」という意味です。

【眉唾物】まゆつばもの
だまされないように用心しなくてはならないこと。真偽の疑わしいこと。またそのもの。
(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)


そのまま信用していいかどうか疑わしい時などに「その話は眉唾物だ」のように使います。

「眉唾」の由来

真偽が疑わしいことと眉毛に唾を塗ることにはどんな関係があるのでしょうか。実は、同じく眉毛に関連する慣用句で「眉毛を読まれる」という言葉があります。

【眉毛を読まれる】まゆげをよまれる
自分の考えや心の動きを相手に見透かされてしまうことのたとえ。
(注釈)「読まれる」は数えられる。相手に自分の眉毛の本数を数えられてしまうように、心の中を見透かされる意から。「眉毛を数えられる」ともいう。
(『用例でわかる故事ことわざ辞典』学習研究社)


「読む」とは「数を数える」という意味です。近世では、眉毛の本数を他人から数えられることは、心を見透かされることを意味していました。心を読まれると、人からいいようにされたり、ばかにされたりすると考えられていました。人だけでなく、キツネやタヌキにも化かされると恐れていました。

眉毛は目・鼻・口と同じように確かに自分の顔にある自分のもの。それなのに、自分で見ることはできません。そんな眉毛を他人から数えられるのは大変不安なことだったようです。

「女は化け物、姫路のおさかべ狐もかへって眉毛よまるべし」
(女は化け物。姫路の於佐賀部狐も逆に化かされてしまうだろう)
(浮世草子『好色五人女』井原西鶴作・1686年刊)


眉毛を読まれることへの対策として考え出されたのが、眉毛に唾をつけること、「眉唾」でした。眉毛を濡らしてしまえば、1本1本数えることができなくなります。キツネやタヌキに化かされたり、人にだまされたりする心配も減ります。そこから、目の前の話を信用していいかどうか疑わしい時などに「その話は眉唾(物)だ」と使うようになったと考えられます。

『新明解語源辞典』(三省堂)によると、「眉に唾をつける」は近世に、「眉唾物」は明治期以降にその用例が見えるようです。

眉に唾をつけるとキツネやタヌキにだまされないとは、現代の私たちから見るとおとぎ話です。鏡を見ればいつでも自分の顔が見える今、「眉唾(物)」は死語になるのかと思いきや、案外よく使われています。どんなに時代が変わっても、だまされることへの不安はなくならないということなのかもしれませんね。

「眉唾」の正しい使い方・例文

信じてもらえていないかもと感じた時、疑わしい話を聞いた時、信じてはいけないと助言したい時。「眉唾」という言葉は、ビジネスでも日常生活でもさまざまに使えます。

プレゼンや営業などで説明する時

周囲に信憑性が低いと思われていることが予想される時、次のように使えます。

そんな話は眉唾だと思われるでしょうが、実はここに信頼性の高いデータがあります。

人物や経歴などに疑念がある時

うまい投資話などを持ちかける人物は、その経歴も華々しいことが多いものです。簡単に鵜呑みにできないと言いたい時、次のように使えます。

いくら彼が優秀でも、半年で一億円企業に再生するなど眉唾としか思えない。

うまい話に誘われた時

うまい話は、投資だけではありません。ダイエットや美容、旅行など人の欲望につけこむ話を聞かされた時、次のように使えます。

そんなダイエット法は眉唾物だよ。身体にも良くないはずだ。

「眉唾」の類義語・言い換え表現

「眉唾」であることを言いたい時、他にもさまざまな言葉があります。言い換えたい時の表現を紹介します。

1)胡散臭い

読みは「うさんくさい」。様子や態度が疑わしく、気が許せないさま。どことなく怪しいさま。「臭い」だけでも同じ意味。

2)匂う

読みは「におう」。巧みな隠蔽が施されて見た目からは分かりにくいが、なんとなく怪しい感じがする。疑わしい。

3)疑わしい

読みは「うたがわしい」。事実かどうか、不確かであること。不審で怪しい。

4)首を捻る

読みは「くびをひねる」。疑わしく思う。

5)懐疑的

読みは「かいぎてき」。物事の意味や価値について疑いを持っているさま。

6)怪しい

読みは「あやしい」。普通と変わっていたり正体不明だったりするさま。疑念や警戒心、不思議な感じを起こさせるさま。

自分で眉を数えられる時代になっても

鏡はもちろんスマホでも、いつでも自分の顔を見ることができる現代。私たちは眉毛を読まれる心配なく、自分で自分を客観視できる安心感を手に入れたといえますね。とはいえ、心を見透かしたような物言いで人をだまそうとする人は、どんな時代であっても存在します。

現代のキツネは、眉毛を読むより心理を読むほうが得意の様子。眉毛の本数を数えられる不安がなくなっても、引き続き眉唾物のもうけ話には引っかからないようにしましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです。

【著者プロフィール】前田めぐる(文章術講師)

コピーライターとして「言葉と文章」に関わり続けてきた経験をもとに、企業・自治体・団体向け広報講座の講師を務める。ワークを取り入れた文章術研修では‘伝える’を‘伝わる’に変換する文章の書き方を伝授。「楽しくて分かりやすく、すぐ実務に活かせる」と定評がある。

執筆・ライティングの専門領域は、【言葉・敬語・文章術・マーケティング・リスクコミュニケーション】。公益社団法人日本広報協会広報アドバイザー、文章術講師。著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』など。京都在住。

関連記事

新着記事

もっと見る

HOT TOPIC話題のコンテンツ

注目キーワード

 ビジネス用語・カタカナ語80選

 キャリアロードマップの一歩目

  • ピックアップ