1人じゃ無理。でも、始めた。大学生・松井優人さんが仲間を巻き込みながら目指すもの
こんにちは! ガクラボメンバーの横山響子です。誰かが困っている現状を目の当たりにし、なにか助けたい、役に立ちたいと感じられた経験、ありませんか? 地域の農家の方の苦しい現状を目の当たりにしたことをきっかけに、学生ならではのあふれるパワーとチャレンジ精神でお困りごとを解決したい、貢献したい――そんな思いで結成された学生団体があります。農業という分野における生産と流通、双方の問題を解決するべくユニークで新規性のある活動を行っている学生団体「りふぁーむ」の代表の方にインタビューを行いました!
りふぁーむって?
りふぁーむは、兵庫県立大学社会情報科学部の松井優人さんが2025年に立ち上げた学生団体です。メンバーは全員現役の兵庫県立大学の学生9人で構成されていて、神戸市西区の農家から規格外野菜を仕入れて販売するなどの活動を行っています。今回は団体創設者でもあり、現代表も務めている松井さんにお話を伺いました。
――まず、「りふぁーむ」について、教えてください。いつ、どんなきっかけで立ち上げられたのですか?
松井さん
僕の大学では所属学部以外に「副専攻」というプログラムがあり、その一つにRREP(地域創生リーダー教育プログラム)という授業があります。地域の課題解決を意図するものなんですが、そこで初めて神戸市の農村地区を訪れたことがきっかけでした。
農家さんへのインタビューでは高齢化によって後継者がいないというお話を強調されていました。豊かだった農地がいまはたくさんの耕作放棄地になっていて、とてももったいないんです。その原因を聞くと、「作ったとしても売れない、こだわりを持って作ったとしてもそれを伝えることができないから、買いたたかれてしまう。その結果、自分たちの代で終わっちゃうんだよね」ということを言われて。頭では知っていましたが、実際に農業の現状を目の当たりにして、自分ごととして捉えるようになりました。
ただ、授業の中だとアイデアを提案して終わってしまうんです。それはもったいないし嫌だなと感じ、学生の立場でできることがないかなと思って活動を始めました。
――「りふぁーむ」という名前にはどんな意味や思いが込められているのでしょうか?
りふぁーむは「再び」を意味する英語の接頭語「re」、農園を意味する英語「farm」を合わせた造語です。農業という分野には固定観念が強かったり、イノベーティブな動きが起こりにくい面があるので、一回ちゃんと考え直して農業を再定義していこうよ、という意味を込めてつけました。
――現在、9人で活動されているということですが、松井さんやほかのメンバーはもともと、農業や野菜に関心がおありだったのでしょうか?
僕の場合、農地は身近にあったものの、農業に触れることはそれまで全然ありませんでした。さきほどお話しした大学の副専攻をきっかけに関心を持ち始めたという感じです。他のメンバーに関しては、たとえば、おじいさんやおばあさんの代が農業をやっていた人がいたり、全員ではないんですけども、幼い頃から農業に触れてきたというメンバーはいます。
人生で一番おいしかったトマトから始まった
――りふぁーむの活動内容について教えてください。
現在、メインに取り組んでいるのは、神戸市の個人経営の飲食店にアプローチし、地元、つまり神戸市のお野菜を仕入れてもらうよう働きかける活動です。飲食店でプロがおいしく調理した野菜を食べた人が興味を持って、その農家さんの野菜を買ってくれるようになると、より広がっていくのかなと思っています。
そのほか、子供食堂におじゃまして子どもたちと一緒に規格外野菜を使った料理をつくったり、地域で開催されるマルシェなどのイベントに参加したりもします。イベントに参加することで、リファームのことを知ってもらえたり、地域の方から信頼を得たりするきっかけにもなるので。
仕入れ先の農家さんは今13、14件ぐらいありますが、飲食店におろすとなるとニーズも増えるので、それに対応するため現在月に2、3件ぐらいのペースで増やしています。農家さんとコンタクトをとる際には、僕たち自身がこの人の話を聞いてみたいなって思う人を見つけて、SNSやイベントで声をかけることが多いです。
――りふぁーむでは規格外野菜の販売に取り組まれていますが、その理由を教えてください。
きっかけは、僕が最初に訪れたヤスオ農園さんが作っているトマトでした。僕から見たらそんなに傷ついていないと思うようなトマトでも、「これはB品、規格外だね」と説明されて。規格外野菜だと価値がぐんと下がってしまうとことを知ったんです。
そういう野菜が数多ある。それが一つ農家さんが儲からない要因になっているんじゃないかっていうことをすごく感じたんです。
ただ、もちろん食べてみるとめちゃくちゃ美味しくて。僕が人生で食べたなかで一番美味しいトマトだったんですよ。こんな美味しくて非常に手間暇をかけて育てられているにも関わらず、その価値が反映されていない。このもったいない現状を変えたい、と強く思いました。
それで、規格外野菜を神戸市内の人に広めたいなという思いで、活動を始めました。
「おいしい」が伝わった瞬間のよろこび
――大学生だからこそこの活動ができるという感じる部分はありますか?
金銭的な面でいうと、規格外野菜の販売はほぼ売り上げにならないのですが、ビジネスではないからこそ、そうしたことを気にせずに活動を始めることができたと思っています。メンバーも、報酬が得られるかどうかより、「誰かの役に立つことを一緒にやりたい」という思いで集まってくれています。地域の方が非常に関心を持ってくれるのもうれしいです。たとえば、イベントに民生委員の方が来て、自治会長さんと引き合わせてくださったり。「学生が何か地域のためにやっている」との思いで、りふぁーむを応援してくれる人は多いです。
――これまでの活動の中で、「これは忘れられない」と感じた出来事やエピソードはありますか?
りふぁーむでは提携している農家さんの野菜を地域で販売しているのですが、自分が本当においしいと思った野菜のよさが伝ったと感じたときのことは、忘れられないです。「めっちゃおいしかった」とか「めっちゃつやつやだね」、「めっちゃ大きいね」といった言葉をもらったときは、とても嬉しかったです。それから、農家さんも、りふぁーむの販売システムをすごく喜んでくれていて。注文も配送もすべて僕たちが行うシステムを取っているんです。注文が入ったらりふぁーむ側が農家さんの元まで野菜を取りに行って、購入者に届けています。自分が作ったシステムをものすごく喜んでいただいているのを見ると、やってよかったなと感じます。
人に頼り、巻き込むことの大切さ
――活動を通じて、ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?
2点、あげたいなと思います。まず、いろんな人生があるということです。僕たちは新規就農の方、つまり、まったく違う業種の仕事をしていたけれど、その仕事をやめて農業を始めた人にお話を聞く機会が多いんですが、何かしら理由があって新しく農業を始められるわけで、バックグラウンドが多種多様なんです。そういう方々の行きついた先が農業だと思うと、農業の持つパワーをすごく感じます。
もう一つは、人に頼るのが大事だと気が付いたことです。元来、僕は人に頼れない性格ではあったんですけど、活動するなかで自分1人じゃ何もできないんだと感じることが多く、人をどんどん巻き込むことがとても大事だと思うようになりました。いろんな人を巻き込んでいくことで、できることがどんどん大きくなっていくし、変わっていく面白さがあります。ちなみに、可能なら対面で会って信頼関係を構築したほうがいいなとも感じています。
――「学生のうちにこの活動をやっていてよかった」と感じるのは、どんな瞬間ですか?
情熱だけで動けるっていうところもありますし、やっぱり社会人になってからよりも学生の間に活動を開始する方がハードルが低いんじゃないかと思います。周囲の方々の応援の力もあって、挑戦して失敗してもやり直せる環境が整っていると思うので、やりたいことを実践する時間としては最適だと思います。
――りふぁーむでの経験が将来に影響しているものはありますか?
就活でよく聞かれる「軸」となるものが明確になってきたことです。やりたいことをやってみると、向き・不向きというところも分かってくるので、自分を知る面でも良い経験になっています。具体的にいえば、人とお喋りもしたいし、農業もしたいし、ITエンジニアもしたいし……みたいな、欲張りですけど、それらが一緒にできる仕事が自分に向いてるのかなっていうところは気づけました。
流通も生産も、どちらも変えていきたい
――今後、りふぁーむで挑戦したいことは何ですか?
今後の挑戦としてまずは、りふぁーむで最近アプリを制作したので、そのアプリを使ってどんどん神戸市内の人たちに地元野菜の魅力を広めたいです。そしていずれは日本全国で農業の流通の課題を解決したいと思っています。
ただ、作っていく人が減り、農地が余っていくという問題があると思うので、流通だけじゃなくて僕たちも生産側というか、農家として神戸の野菜を生産し神戸の皆さんに届けたいという思いもあります。つまり流通も生産もどっちも解決したいということです。
団体の立ち位置というか果たす役割としては、農業従事者の方の高齢化が進んでいますので、イノベーティブなことはしたいです。また、泥臭く大変な場面で学生が活躍する意味が大きいと思うので、僕らがしっかり足動かして地域の人々、たとえば飲食店と農家さんをつなぐ架け橋になりたいと思っています。
――最後に、同世代の読者に向けて、メッセージをお願いします。
活動を始めるとき、1人だけでやろうとしたら多分挫折していただろうと思います。だから協力を得るためにもまず周囲に話し始めてみることがすごく大事なのかな。そうすると多分、興味を持ってくれる子がいるはずです。さらに大人に話したら、協力してくれる人が現れて……というふうになって、どんどん自分のやりたいことに近づいていくように思うんです。なので、まずは小さな形からでいいので、とにかく始めてみるためにも、周りの人にやりたいことを打ち明けてみてほしいです。
――ありがとうございました!
取材を終えて
ここまで規模が大きい活動をされていることや、学生でありながら、たくさんの社会人の方との営業に行かれていることにとても驚きました。特筆すべきはそのビジネスモデルにあると思いました。規格外野菜の新たな活用方法を確立しただけでなく、松井さんご自身がIT技術を発揮して開発した独自アプリなどを用い、農業従事者の方の負担を可能な限り減らし、さらに廃棄予定だった野菜を学生の力で届けるという、極限まで相手を想っている事業形態に感銘を受けました。
また、松井さんご自身の活動に対する推進力も素晴らしいと感じました。私ももちろん、同じようにだれかが困っている現実に直面して助けたいと思ったことはありますが、誰かにその思いを打ち明けることに怖気づいてしまって実行に移すことができなかった経験が何度もあります。
松井さんとお話していて、彼の規格外野菜を届けたいというアツい思いはもちろん、関わりを持った周囲の方への責任感も強い方であり、使命感すら帯びているように感じました。野菜の魅力ももちろん、松井さんご自身のお人柄が周囲の方を惹きつけて巻き込み、それが多くの人に喜ばれる事業を形成する力になっていると思いました。
⇒「りふぁーむ」Instagramアカウント
@refarm_kobe
⇒「りふぁーむ」Webサイト
https://www.refarmkobe.com/
文・横山響子(ガクラボメンバー)/編集:学生の窓口編集部
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