【SMBCグループに聞く!】金融グループの強みを生かした“シャカカチ”とは
地球温暖化、少子高齢化、貧困・格差の拡大……。いま、私たちはさまざまな社会課題に直面しています。そんな中、SMBCグループでは社会的価値の創造に、“シャカカチ”というあいことばのもと、積極的に取り組んでいます。
「社会的価値の創造」とは、社会課題を起点に企業の活動を通じて、お客さまや社会の中長期的な成長に資する付加価値を提供することです。では、SMBCグループは具体的にどのような活動を通じて、“シャカカチ”を実践しているのでしょうか。
本記事では、三井住友フィナンシャルグループ執行役員 グループCSuO(Chief Sustainability Officer)である高梨さん(「高」は「はしごだか」が正式表記)と、マイナビ学生の窓口・編集長の降旗さんとの対談を通して、シャカカチに取り組む背景と具体的な取り組みを紹介します。
<プロフィール>
高梨さん(写真左)
三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 グループCSuO(Chief Sustainability Officer)。
1993年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。2022年4月よりサステナビリティ企画部長、2023年4月より現職。
降旗編集長(写真右)
「マイナビ学生の窓口」編集長。
約300名の学生が在籍する『ガクラボ』を主宰し、常に学生目線を取り入れながらコンテンツを作成している。
なぜSMBCグループは「社会的価値の創造」を目指すのか
――SMBCグループでは2023年4月から経営の柱のひとつとして「社会的価値の創造」を掲げられています。この方針に至った背景を教えてください。
高梨さん:理由は二つあります。まず、“ものさしの変化”、つまり企業を評価するステークホルダーの視点が変化してきたことです。銀行にとってのステークホルダーは、たとえばお客さまや株主、投資家、従業員ですね。ちなみに、この従業員には将来の従業員、つまり学生さんや中途入社を検討されている方々も含まれています。
これまで、ステークホルダーには収益やバランスシートといった経済的な指標で評価されることが多かったのですが、現在はそれに加えて社会課題の解決や社会貢献といった「社会的価値」が重視されるようになってきました。
二つ目の理由は、金融グループとしての役割です。たとえば、銀行の業績は国の成長と連動します。そのため、銀行には社会課題の解決を通じて日本全体の成長に貢献する責務がありますし、社会課題を起点に、我々のビジネス自体も成長すると考えています。
降旗さん:社会課題を起点にビジネスを成長させるというのは、どういうことでしょうか?
高梨さん:たとえば大きな社会課題のひとつである地球の温暖化。これだけ温室効果ガスの削減が叫ばれるようになると、当然ながら脱炭素ビジネスが盛り上がってきますよね。そうした脱炭素ビジネスを展開する企業を支援することで、SMBCグループとしても成長できると考えています。
降旗さん:社会課題の解決を目指す企業を支援するというのは、SMBCグループさんのような大手金融グループならではの取り組み、まさに“社会的価値の創造”ですね。
――降旗さんは普段から学生の声を直接聞くことが多いと思います。現代の学生は、こうした社会課題の解決や社会的価値の創造にどんな想いを持っているのでしょうか。
降旗さん:Z世代と呼ばれる学生たちは、幼少期に東日本大震災を経験し、学生時代にコロナ禍を過ごした世代です。それもあってか、社会課題に対する意識が他の世代と比べても非常に高いと感じています。
そんな彼らの特性は就職活動にも表れていると感じますね。企業のどこを重視するかというランキングでは、「社会貢献度」が5位以内には必ず入ってきている印象です。もちろん、「安定さ」や「給与」といった項目は常に上位ですが、就職先を選ぶ最後の決め手として社会貢献度が入ってくる可能性はかなり高いといえます。
今や企業の社会貢献に対する姿勢は、その企業のイメージやブランディングに大きな影響を与える指標になっているといっていいでしょう。特にCSR(企業の社会的責任)だけでなく、ビジネスと社会貢献を一体となって進めている企業は、学生からの評価が高い傾向です。
高梨さん:そこまで意識が高まっているのですね。
降旗さん:はい。そもそも高校の授業でSDGsについて学ぶような世代ですから。また、SNSネイティブなので情報感度も高く、他の世代とはベースのマインドセットから異なっていると感じます。
SMBCグループが取り組む“シャカカチ”誕生の背景
――SMBCグループでは「社会的価値の創造」について、“シャカカチ”というキーワードを設定し、推進されています。このキーワードが生まれた背景について教えてください。
高梨さん:中期経営計画で「社会的価値の創造」を掲げたものの、言葉としてどうしても硬くて、従業員にとっては身近に感じにくいという課題がありました。そこで、もっとワクワク感があって、前向きなイメージを持てるようなキーワードとして“シャカカチ”という言葉を考案したのです。
降旗さん:ユニークですし、インパクトがありますよね。一度聞いたら頭にも残りやすいです。
高梨さん:最初は戸惑う声もありましたけどね(笑)。時間が経つと徐々に浸透して、今では社内でもよく“シャカカチ”という単語を耳にするようになりました。当社はグローバルにも事業を展開していますが、そうした海外拠点でも“Shaka-kachi”と言ってくれるようになってきているんですよ。
降旗さん:海外でも! それはすごいですね。でも、たしかに“シャカカチ”って意外と発音しやすいのかも。
高梨さん:最初は通じないだろうと思って、「Create Social Value」などを使っていたのですが、海外の従業員には日本で使われている「シャカカチ」をむしろ使いたいと思ってもらえたようです。今後はSMBCグループのブランディングのひとつとして、さらに活用していくつもりです。
――シャカカチに取り組む上での具体的なミッションや目標について教えてください。
高梨さん:ミッションのひとつは「全員参加」です。“シャカカチ”にメインで取り組む部署の所属人数は100人程度で、彼らだけががんばっても、社会的なインパクトは起こせません。“シャカカチ”を広め、企業の成長につなげるためには、グローバルを含めた約13万人の従業員一人ひとりが“シャカカチ”をあいことばに社会課題に対する意識を持ち、日々の行動に移すことが必要です。
降旗さん:他の企業でも最近はパーパスを設定して、社内への浸透を目指している企業も多いですよね。ただ、トップダウンでパーパスを設定しても、なかなか現場の温度感が上がらないことも少なくありません。SMBCグループさんでは、“シャカカチ”の浸透のためにどのようなアクションをしておられるのでしょう。
高梨さん:たとえば日々の業務の中で、従業員が社会課題についてお客さまとディスカッションするための資料を作成したり、お客さま同士をマッチングし、社会課題の解決につなげる取り組みを行っています。また、各営業拠点で社会的価値創造に取り組む日を設定し、お客さまを含む地域社会とも連携の上、社会課題解決に向けた取り組みを企画・実施する「シャカカチDAY」という取り組みも行っています。具体的な事例として、若者の人口流出を課題とする地域で、地元企業の魅力を小学生に伝えるためのバスツアーを実施した拠点がありました。ほかにも従業員の“シャカカチ”の取り組みを表彰する制度を設けたりと、さまざまな施策を実施しています。
降旗さん:学生を巻き込むような取り組みも行っているのでしょうか?
高梨さん:もちろんです。SMBCグループではオンラインで金融取引や証券取引などが一括して行える「Olive」という総合金融サービスを提供しているのですが、これをどうやって学生向けにマーケティングすればいいのかについて、学生と共同で企画を進めた支店があります。私たちが考えた内容に、学生が容赦なくダメ出しするそうです(笑)。
降旗さん:おもしろいですね! 私たちも学生とコンテンツを作り上げることがありますが、学生からダメ出しが入ることが多々あります(笑)。
国内だけでなくグローバルでも! 「シャカカチ」の具体事例を紹介
――SMBCグループとして「シャカカチ」に取り組んでいる事例を教えてください。
高梨さん:SMBCグループでは、企業として主体的に取り組むべき重点課題として「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」という5つを設定しています。「環境」ですとカーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギー導入の鍵となる「系統用蓄電池事業」に国内初の融資を行ったり、「貧困・格差」ですとインド農村部の家庭に清潔な水道水を届けるための融資を実行したり……取り組みは膨大な数になりますね。
また、2025年4月には学校や家庭以外の「居場所」として、こどもたちが企業や地域と交流しながら、読書や学習、こども食堂での食事などさまざまな体験ができる場として「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」をスタートするなど、未来を担うこどもたちのための支援も行っています。
降旗さん:本当に幅広く活動を行っておられるのですね。おそらく、多くの学生にとってSMBCグループさんのイメージは「銀行」、「金融機関」くらいの漠然としたものではないでしょうか。SMBCグループさんがそのような社会的価値の創造を行っておられることが、“シャカカチ”のキーワードと共に広まってほしいと思いますね。
――そうした社会的価値創造の取り組みが、今後SMBCグループにどのような効果をもたらすと考えていますか?
高梨さん:社会的価値の創造は、最終的にさまざまな利益をもたらすと考えています。収益はもちろん、事業基盤の強化や従業員のエンゲージメント向上、ブランド向上などにつながり、企業価値の向上に貢献してくれるでしょう。
また、学生に魅力を感じてもらえることで、優秀な人材の確保につながることも期待できます。
降旗さん:おっしゃるとおりだと思います。現在の学生は長期的な視点で物事を考えるようになっています。せっかくいろいろな取り組みをしていても、それらがばらばらになっていると、うまく価値を伝えられません。“シャカカチ”のようなキーワードで、一貫したメッセージを伝えることは非常に重要でしょう。
――今後、SMBCグループとして注力していきたい課題について教えてください。
高梨さん:我々は金融グループであり、お金の流れを活性化させる役割を担っています。幅広い分野の企業とパートナーシップを築き、社会課題の解決を直接的・間接的に支援できるのが強みです。
そのため、今後は社会課題の解決につながる取り組みにお金が回る仕組みを構築していきたいですね。具体的には、富裕層の寄付を促進するためのアドバイザリー業務の強化や、政府が推進するインパクト投資に取り組んでいます。
そのためにも、まずはSMBCグループ自身が社会的価値創造の取り組みをリードし、そこからお客さまやパートナーへ取り組みを拡大させ、最終的には社会的価値創造の取り組みの輪が社会全体に拡大していく流れを目指しています。
降旗さん:私としては、ぜひ学生への金融教育にも期待したいですね。学生の約半数が奨学金を借りていて、お金に対する不安を抱えている人も少なくありません。投資やお金の使い方など、そういった分野の情報がまさに今必要とされているのではないでしょうか。
高梨さん:金融経済教育については我々ももちろん重視していて、金融経済教育ゲームなんかも開発しているんですよ。学生だけでなく社会人も含めて、将来の不安の解消に少しでも貢献できるよう取り組んでいきたいと思います。
――最後に学生へのメッセージをお願いします。
高梨さん:今、社会情勢はかなり不安定な状態です。ただ、我々としては変わらず、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向けて、愚直に取り組みを続けていきたいと考えています。学生の皆さん、SMBCグループの取り組みに共感していただけたら、ぜひ我々の取り組みに何らかの形で関わっていただければ嬉しいです。
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SMBCグループが取り組む“シャカカチ”。膨大な数の取り組みの中には、「そんなこともしているの!?」と思わずびっくりするものもあるかもしれません。この記事を読んで“シャカカチ”が気になった方は、ぜひSMBCグループのサイトをチェックしてみてください。