「劣等感」の克服方法。幼いころに家庭や学校などで負ったストレスが原因?『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』#Z世代pickブック

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こんにちは! Z世代ブックピッカーのひっき(出版甲子園実行委員会所属)です。

うまくは表現できないけれど、漠然と持っている感情を心理学の面から見てみると、新たな気づきが生まれることがあります。

今回は「人の生きづらさはどこから来るのか」について、公認心理師・みき いちたろう氏の著書『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)よりお届けします。

この「生きづらさ」はどこから来るのか?

「トラウマ」と聞いて、あなたはどんなイメージをお持ちでしょうか?

どこか遠い世界の話? 特別な体験をした人が被こうむる症状? 耳にしたことがあるけれど詳しくはわからない……等々、そのイメージは様々だと思いますが、いずれにしても自分とは直接には関係のないものとお感じではないでしょうか?
トラウマは、遠い世界の存在ではありません。日常の不調や悩み、生きづらさといったあなたがふだん感じている症状としても現れています。トラウマは私たちにとって、とても身近な存在なのです。

これから、トラウマによると思われるお悩みについて、身近なケースをいくつかご覧いただきます。

ケース1:人の気持ちを考えすぎる

伊織さんは、第一声で「すみません」と言いながらカウンセリングルームに入ってこられました。その後も、ペコペコしながら、「すみません」を繰り返していました。
なぜかわからないが強い罪悪感があり、人に気を遣いすぎることで悩んでいるとのことでした。他人の気持ちを考えすぎて、自分が悪いと考えてしまう。「怒られるかも?」とか、「申し訳ない」という気持ちが強く、すぐに謝ってしまうのです。

趣味で休日にテニスをしていますが、ミスショットがあるたびに「すみません、ごめんなさい」と口癖のように謝っています。この間は、何もミスをしていないのに、つい「すみません」と言ってコーチから笑われてしまったそうです。

友だちから「そんなことで謝らなくてもいいんじゃない?」と言われて、さすがに自分でもおかしいと思うようになりました。自信を持とうと思ってもどうしてもへりくだってしまうのです。自分を大事にする、ということがよくわかりません。

押しの強い人にいいように利用されたりすることもよくあります。
伊織さんが幼いころ、母親は病気がちでした。「自分が良い子ではないからお母さんは病気なのだ」と考えていたそうです。「子どもながらに何もできずに申し訳ない」と今でも罪悪感があります。父親は出張が多く、家にいることが少なかったそうです。弟は喘息持ちで、いつもその弟のことも気遣って、母親の代わりに家事やいろいろなお世話をしていたそうです。伊織さんにとっては、自分のことよりも周りのことを考えることが普通だといいます。

ケース2:なぜだかわからないけれど自信がない、将来が不安

瑛さんは、誰もが聞いたことがある有名大学を卒業し、業界トップの金融機関で働いています。上司からも期待をされていますが、いつも自分に自信がなく、自分の実力が偽物のように感じられるといいます。

自分はおかしい、自分は汚れている、というスティグマ感(罪悪感、劣等感)が強く、それが他者にバレないか、という不安が根底につきまとっているといいます。「自分に自信がない」という訴えに相談を受けたカウンセラーも「そんな有名大学を出て、一流企業にいらっしゃるのに、ですか?」と思わず尋ねてしまうほどです。

瑛さんは、「いや、大学もガリ勉で入ったもので、周りの秀才たちとは違います」「今の会社も、学歴のおかげで入ったようなものです」と卑下するように答えるのです。瑛さんは、「かなり気張って接してはじめて堂々としていられる」といいます。頭の中で、自分を責める声がして、仕事でうまくいかないことがあると自分を罵倒してくるそうです。

そして、ずっと将来が漠然と不安であることにも苛まれています。このまま自分の人生が何もないままで終わってしまうのではないか?自分は何者にもなれないのではないか?というなんとも言えない不安があるのです。

そして、ビジネス書や自己啓発の本を読む間は癒やされますが、しばらくするとまた不安になります。休みの日も、何か研鑽を積んでいないと焦りと不安でいても立ってもいられなくなります。

ただ、例えば闇雲にビジネススクールや英会話を受講しても意味がないだろう、というのは頭ではわかるのです。しかし、何もしていないことが不安でしかたありません。一方、幼いころから受験勉強をしてきて、努力を続けて「もうこれ以上頑張り続けることはできない」という疲労感も感じています。異動することになったのですが、その忙しい部署で自分がついていけるか不安を感じています。

原因のわからない生きづらさ

トラウマによって生じる症状はまだまだたくさんありますが、特に身近なケースを紹介しました。

それぞれ、実際にあるケースをもとに、本人を特定できない形で再構成したものですが、いかがでしょうか? 皆さまにも当てはまるものがあったかもしれませんし、「私の場合は、もっとこんなことで悩んでいる」とお感じだったかもしれません。「えっ、こんな身近な悩みもトラウマが原因なの?」と思われたかもしれません。

内容は様々ですが、すべて発達性トラウマによると思われるケースです。各ケースについてほぼ共通しているのが、発達段階において、家庭や学校などで持続的・慢性的なストレスを受けてきたということです。

ある人は夫婦の不和、ある人は兄弟・両親・嫁姑など家族や親戚同士の揉め事に巻き込まれたり、親の過干渉や機能不全であったり、ある人はいじめやハラスメントを受けた結果であったりします。

そして、同じく共通するのが、生きづらさの原因がわからずに困っているということです。専門家に相談しようにもどこに相談していいかわからない。そもそも自分の苦しみをうまく言語化できない。生きづらさを表現する適切な情報もない。カウンセリングではとても良くなるようには思えない。かといって病院で治してもらえそうもない、と途方に暮れてしまっているのです。中には、「自分は発達障害では?」などと不安に思い、実際に検査、診断を受けているようなケースもあります。

Z世代ブックピッカーのレビューコメント

上で挙げられている、「すぐ謝ってしまう」「将来が不安」といったケースは、私はあまり感じたことのないものでしたが、人が感じる生きづらさは人それぞれ異なり、それゆえに原因がわからず困っている人が多いのだと思いました。自分のことに限らず、生きづらさを感じ、苦しんでいる人がいるという事実がもっと世の中の人に伝わってほしいですし、私もそういった前提を持って周りの友人などと関わっていきたいと思いました。

『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』

著者:みき いちたろう  発売:2023年2月17日  定価:1,320円 (税込み)
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
詳細ページ:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2934-4
書籍レビュー:
読み終わる頃には、今までうまく言語化できなかった不安な感情が何だったのか気付けるようになると思います。「自分を大切にすること」は当たり前にすべきことなのに、意外とできていなかったことに気付かされました。また、人を尊重するためには、その人のことを受け入れることから始めますが、自分の想像の及ばない人に出会ったとき、「何かしらの生きづらさを感じているのではないか」と想像を働かせ、受け入れ、尊重できるようになれたら良いなと思いました。

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【HP】http://spk.picaso.jp/

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