『スマホ失明』近視人口の急増はスマホが影響? #Z世代Pick
こんにちは。Z世代ブックピッカー・lunaです。
みなさんは1日に何時間スマホを使っていますか? 電車の中、ちょっとしたスキマ時間、寝る前・朝起きてすぐ布団の中で。いまや子供から大人まで、老若男女問わず、多くの人があらゆる場面でスマホを使っているかと思います。そんな現状に対して、眼科医の川本晃司氏は、ある光景が浮かんでいるそうです。
数年後、あるいは数十年後──……。元気だった小学生が大人になり、白い杖をついて点字ブロックの上を歩く姿。サラリーマンが年を取り、介助者に手を引かれて階段を昇り降りする姿。女性が、あるいは高齢者が、盲導犬に導かれて歩く姿。そう、彼らが視力を失った姿です。
なぜ、そんな姿が思い浮かんだのか? 川本氏はこう続けます。
実は今、私だけでなく、世界中の眼科医が、同じビジョンと恐れを共有しています。これから、「失明人口」が爆発的に増加する可能性が高いからです。
川本氏の著書『スマホ失明』では、スマホの使い過ぎが失明の可能性を高めると警鐘を鳴らしており、その理由と対策が書かれています。今回はそんな『スマホ失明』より一部抜粋してご紹介します。
※本記事は川本晃司著『スマホ失明』(かんき出版)より一部抜粋し、再編集したものです。
スマホの登場で、あらゆることが「近業」に
スマホが普及する十数年前までは、近業をしようと思ったら、それができる所まで、わざわざ移動する必要がありました。
例えば、テレビを見ようと思えば、テレビが置いてある部屋に行かなければいけないし、ゲームをしようと思えば、ゲームセンターに行くか、やはりゲーム機を繋いだテレビがある部屋に行かねばなりませんでした。パソコンで調べものをするなら、パソコンを設置している場所に行かなければいけないし、本を読もうと思ったら、本を買いに行ったり、図書館に行ったりして、まずは本を入手する必要がありました。
つまり、特定の場所に行くまでは、近業をもたらすものに触れないでいられたのです。
しかし、スマホが普及した現在は違います。
テレビや動画を見ようと思えば、ポケットから取り出したスマホで、その場で見ることができますし、ゲームだってその場でプレイできます。調べものもパソコンを使わずにその場でできますし、本だって好きなときにダウンロードして読むことができます。小さな画面に、思いっきり目を近づけた状態で。
そう、スマホの普及により、私たちは、テレビ視聴、動画視聴、映画視聴、ゲーム、調べもの、読書といったことを頻繁に、近業で行うようになりました。SNS等によるコミュニケーションもしかり、買い物もしかりです。
いまや、近視悪化を助長するツールを、誰もがポケットやカバンに入れて、持ち歩けるようになりました。スマホの普及により私たちは、あらゆる近業を可能にするツールを、肌身離さず持ち運ぶことができるようになったのです。
そして、このことが将来、私たちに、「失明」という、とてつもなく高いコストを強いるのです。
■実際に読んでみた感想
最近、私自身著しく視力が落ちていることに気づき、スマホやパソコンを絶え間なく見ていることが原因の一つだと考え、この本を手にしました。近年のスマホの普及により、「スマホ依存」が問題視されています。スマホ依存の弊害として、最も顕著に表れるものは近視の進行だと考えられています。筆者の川本氏によると、新型コロナウイルスの影響で、若者、特に小中高生の視力の悪化が目立っているようです。
スマホは、子供たちにとってはYouTubeを見たり、ゲームをしたりすることができる最高の遊びのツールですが、親たちにとっても、子供たちがそれに熱中していることで、おとなしくしてくれる「最高の子守り役」となっている事実に驚きました。スマホは、それ一つで様々なことができる便利なものですが、それと同時に失明する可能性を秘めているものでもあります。その事実を認識するとともに、我々はスマホ以外に時間を有意義に使えるような何かを見つける必要があると思いました。皆さんも「スマホ失明」を他人事と思わずに、ぜひ一度読んでみてください。(luna)
■著者からおわりに
「人間は行動した後悔より、行動しなかった後悔のほうが深く残る」これは、米国コーネル大学の心理学者である、トーマス・ギロビッチ博士の言葉です。私は近視対策についても、まったく同じことが言えると思っています。
人生の質(QOL)を大きく左右する目の健康に関して、その対処法を知っていたにもかかわらず、「何も行動しなかった」となれば、悔やんでも悔やみきれない後悔が必ず残ります。そして、その後悔は生涯つきまとうのです。

『スマホ失明』
定価 : 1,430円(税込)
頁数 : 220頁
ISBN : 978-4-7612-7643-0
発行日 : 2022年12月21日
■著者情報
川本 晃司(かわもと・こうじ)
眼科専門医(医学博士)・MBA(経営学修士) 1967年山口県生まれ。高校卒業後、産業廃棄物処理の日雇い労働をしていたが、一念発起して受験勉強を始め、28歳の時に山口大学医学部に入学。34歳で眼科医となり、44歳で眼科クリニック・かわもと眼科の院長となる。専門は角膜。2021年に北九州市立大学ビジネススクールでMBAを取得。現在は眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行っている。現在の研究テーマは「医療現『場』の行動経済学」と「医師と患者の認知心理学」。