映画『スクロール』青春を駆け抜ける若者のリアルがここに！生きるを問う「自分たちの物語」魅力3選
こんにちは！学窓ラボ学生ライターの菊地里帆子（きくちりほこ）です。
今回は2/3公開『スクロール』のオンライン試写会に参加しました。
原作はYOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作者としても知られる橋爪駿輝先生が描く小説。
あらすじ
学生時代に友だちだった〈僕〉とユウスケのもとに、友人の森が自殺したという報せが届く。就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに想いをアップすることで何とか自分を保っていた〈僕〉と、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。森の死をきっかけに“生きること・愛すること”を見つめ直す二人に、〈僕〉の書き込みに共鳴し特別な自分になりたいと願う〈私〉と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯していく。青春の出口に立った4人が見つけた、きらめく明日への入口とは──？
何者にもなれない4人が、ひとつの死をきっかけに、明日への一歩を踏み出す。私たちが目にするのは、4人の中にきらめく、私たち自身の欠片。痛みを知る者にしか見えない光を描く、絶望を抱きしめる希望の物語。
凡庸で刹那的でありふれたわたしたちのリアルが詰め込まれた青春譚です。近い将来、社会人として過ごす自分はいったい幾つのどうしようもない理不尽と戦わなくてはならないのでしょうか。
青春の出口まであと少し、主体性と協調性を兼ね備えなければならない日々まであと数か月。学生ブランド失効間近の私にとって魅力的だった瞬間を3つご紹介します。
「どれくらい好き？」
好きの尺度とは何でしょうか。ひとやもの、出来事でも構いません。もし尋ねられたら、皆さんはなんて答えますか。
大きさで表現するのも、何かと比較して答えるのもアリですが、あまりにも好きなものってどんなに言葉を尽くしても難しいとは思いませんか。死ぬほど大好きなひとや最後の晩餐に食べたいものの好き度合いって計り知れない気がしています。
だからこそ、古川琴音さん演じる〈私〉の「好き」の表現がわたしには心から魅力的に映りました。自分ならなんて言うだろう、と語彙の引き出しを開けながら、〈私〉の言葉を掬ってみてください。
「この社会で夢など見てはいけない」
皆さんは日本社会には夢があると思いますか。
少子高齢化、人材不足、国内需要の縮小、新聞の見出しを飾るのは大抵ネガティブな文言。就活生は年収と年間休日を見比べて、やりたくない仕事の面接も受ける日々。しかしその先に待っているのは幸せなのでしょうか。
本作品の登場人物たちのように、「この絶望がずっと続くなら、その時はこの世を去ろう」と思ってしまう日が来てしまうのでしょうか。それでも自分と社会を繋ぎとめる「なにか」を探そうとするのでしょうか。
社会の歯車の一部としてきちんと意味を見出せる社会人になりたい、そう思える瞬間をつぶさに拾い集めてみてください。
幸せ＝ただの結果
「結婚して家建てて子どもと一緒に何不自由なく幸せに暮らすこと」これを今の時代にクリアすることは容易ではないと大学生の私は思っています。仮にここでは生物学上の意味として、男性には男性の、女性には女性のしあわせがあるとして、それぞれの幸せの交点を探し出すのってかなり難しいのではないでしょうか。だからこそ結果を幸せと呼ぶ方が、気が楽なのではないでしょうか。
「進化しなくて良いとなったら人間どうなっちゃうんですか？」
どうやったって子孫の繁栄には男性と女性が不可欠な現代ですが、もしも、進化も興隆も必要なくなったら。生物学上の意味を越えた貴方の価値は何だと思いますか？そしてそこでどんな幸せを見出しますか？
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。本作はかなり鈍色の物語です。でもきっとこれが普通に生きるということなのだと思います。
みんな少しずつ鈍痛に耐えていて、その苦しみを抱きかかえていて、それでも毎日「好き」と一緒に生きている。社会の歯車になって自分を潰したとて、決まった速度で回さなければ、協調性の欠如を指摘されるのです。それなら自分の「好き」くらい大事に、「好き」をもらった記憶を大切に、生きていきたいと思うはずです。
文：菊地里帆子（学窓ラボ）
映画『スクロール』は2月3日（金）全国ロードショー！
©橋爪駿輝/講談社 ©2023映画『スクロール』製作委員会
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