「可能なら、布団から出ないで一日を過ごしたい」 寒い日なら特にそう感じることがある。布団というのは恐ろしいもので……|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:ほっとするもの
エッセイキーワード:ほっとするもの
エッセイタイトル:『ふとぅん』/著者:ウミナギ さん
「可能なら、布団から出ないで一日を過ごしたい」
寒い日なら特にそう感じることがある。布団というのは恐ろしいもので、毎朝抜け出すのに相当な体力を消費する。抜け出した後も、再び布団の中に戻らないように自身を抑え込む力が必要だ。出たいけど出たくない。そんな葛藤との戦闘を経て、私は家を出ることができる。
布団は、私にとってほっとする場所だ。帰宅し、やることを済ませ、ようやく布団に飛び込んだあの至福の瞬間といったら、どう言葉に表したらよいのだろう。全体重を預け、ぬくい布団に包まれるあの感覚。猫が一緒にいる時ならなおさらたまらない。一日の大変なことを忘れて自由を手にしたようなあの時間は、私が一番素の自分でいられている時なのかもしれない。寝てしまったらこの時を手放してしまう、と頑張って瞼を開いていても結局、睡魔に負けて目を閉じてしまうのがお決まりだ。
翌日の楽しみに胸を躍らせて眠りにつくときもある。しかし、毎日がそう上手くいっているわけではない。傷心して布団に潜る日もある。「なんで自分はダメなんだろう」「なんで上手くいかないんだろう」「明日が来るのが怖い」こんな気持ちを抱えている時だってある。人に相談することが苦手で、悩みがあっても自分からは話さないのが私だ。そんな私が自分の感情をぶちまけられる場所が布団だった。辛くて、枕に顔をうずめ声を殺して泣くこともあった。次の日に完全に心が晴れていることはなかったが、幾分か気持ちは楽になっていた。泣いたことも一つの要因だったと思うが、こういう時にも布団のありがたみを感じる。
一日の始まりと一日の終わりは、ほとんどの人が布団だと思う。少なくとも、私にとって布団は生活に欠かせない相棒のようなものである。
著者:ウミナギ さん |
学校・学年:専門学校日本デザイナー芸術学院 1年 |
著者コメント:布団が嫌いな人なんていない! |