大企業も欲しがる「DXスキル」って?香川大学創造工学部が教える、社会で求められる“思考実現術”

学生の窓口編集部

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を知っていますか? 最近よく耳にするようになったこの言葉ですが、実は現在、日本のあらゆる企業が「これが必要だ」と言い出しています。簡単に言うと、デジタルの力で社会を変えていける人を、心の底から欲しがっているわけです。

そこで今回いち早くDXについての学びを実践している香川大学の学生や教職員の皆さんにインタビュー。就活を始める大学3年生まで「DXとは何か知らなかった」という学生のお二人が、未経験から大学のDX推進の要となるまでにどのような学びがあったのか。大手企業も注目する、超実践的なDXスキルが学べるという香川大学の「デザイン思考」と、学生の皆さんが活用した、誰でも無料で実践的な学びができるという学習ツールについて詳しく教えてもらいました。

お話をしてくれた方は…

八重樫 理人教授

香川大学 創造工学部創造工学科 教授。香川大学 情報メディアセンターのセンター長も務める。

末廣 紀史さん

香川大学情報部の職員で、 情報メディアセンター DX推進部門に所属している。

矢谷 鷹将さん

香川大学大学院 創発科学研究科 修士課程に在籍しながら、香川大学情報メディアセンター「DXラボ」の学生スタッフとして様々な活動をおこなっている。

蛭田 雅貴さん

矢谷さんと同じく、香川大学大学院 創発科学研究科 修士課程に在籍しながら、香川大学情報メディアセンター「DXラボ」の学生スタッフとして様々な活動をおこなっている。

大学が持つ課題をDXの力で解決

──「香川大学がすごいことをやっている」「多くの大企業が香川大学に注目している」とお聞きして、やってきました。まずは大学院1年の矢谷 鷹将さんと蛭田 雅貴さん、どのような取り組みをされているか、教えてもらえますか?

後ほど詳しくご説明しますが、我々は大学のDX推進を行う「DXラボ」というチームに所属していて、大学が抱えるさまざまな課題を解決する取り組みを行っています。

代表的なものでいうと、問い合わせ対応の「チャットボット」というものを開発しました。これは大学でよくある「学生証をなくしてしまった」「落とし物を拾ったんだけどどこに持っていけばいい?」といった内容をTeamsのチャットで質問すると、AIが自動的に答えてくれるシステムです。

ぼくが作ったのは「履修登録受付システム」です。ネットから履修登録の取り消しなどが簡単にできるようなシステムを開発しました。

──それらのシステムは、実際に大学で導入されているのですか?

実際に導入しています。少し前に学務係の方から「紙申請だと管理がすごい大変」という話を聞いたんです。それを聞いて、「DXで、もっと簡易化できるんじゃないの?」と、1ヶ月くらいかけて履修登録の仕事をデジタル化するシステムを開発して、実際に運用してもらうことにしました。

チャットボットも導入済みです。他にもいくつかチャットボットを開発しているのですが、「質問対応が忙しすぎて、お昼休みもとれなかった」という担当事務の方に、とても喜んでもらっています。

──まるでシステムエンジニアのような仕事ですが、なぜお二人が?

ぼくたちは先ほども軽くお伝えした、香川大学の「DXラボ」に所属しています。DXラボは、学生を中心に、先生や職員さんと連携しながら大学DXを推進する活動をします。デジタル技術を通して大学が抱える課題を解決する手伝いをしているんです。

──学生の目線から、学校を良くする活動をされているのですね。なぜ参加を決めたのですか?

最初は「他大学ではやっていないことが経験できて、就活にめっちゃ有利だよ」と、先輩に誘われて入りました。実践的なスキルを身につけながら、学生バイトよりずっと良い待遇で、お給料もちゃんともらえる……という、正直おいしいことずくめな活動だと思います(笑)。

DXラボの活動の様子

──お二人が所属するDXラボの「DX」は「デジタルトランスフォーメーション」のことですね。デジタル技術を駆使してイノベーションを起こしていくといった概念です。この言葉は、以前から知っていましたか?

大学3年になるまで、ぜんぜん知りませんでした。DXラボに誘われたとき初めて聞いて、「かっこいい言葉だなあ」と思いました。

ぼくも大学3年で就活をするまでは聞いたことがありませんでした。どこの会社もこの言葉を使っていたので、「すごく重要な、いまの日本に必要なことなんだな」と実感した記憶があります。

創造工学部で身につく、DXの"戦闘力"

──ぜんぜん知らなかったということに驚きです! いまはそれらを駆使してDX推進をされているとのことですが、香川大学では「DX」について実戦的に学べるということでしょうか? 創造工学部の八重樫 理人教授、教えてください。

DXを直接扱った授業があるわけではありませんが、創造工学部では「デザイン思考」を中心に、知らず知らずのうちにDXの"戦闘力"が身につくようなカリキュラムを組んでいます。

「デザイン思考」というのは、課題解決のための方法です。「共感→問題定義→アイデア創出→具体化→検証」というプロセスを素早く何度も回しながら、本当に役立つ必要なモノをつくろう、という考え方ですね。矢谷君も蛭田君も、プロジェクトの中で知らずのうちに高められた「DXの戦闘力」を実感しているんじゃないかと思います。

職員の方と打ち合わせしたとき、「最初から全部カンペキなモノを作ろう」と発想されることに驚いたことがあります。試作品をとにかく早く作って、動かしてみながら少しずつ改善していく、というデザイン思考が当たり前だと思ってましたから。

取り組みの一部 /教職員の体験に基づいて業務の抱える課題を分析

ぼくも矢谷君とまったく同じことを感じました。DXについて直接学んでいたわけではありませんでしたが、大学の課題を解決する上で「デザイン思考」が、とても役に立っていると実感しています。

──末廣紀史さんは、大学職員の立場から学内のシステムを担当されていますが、創造工学部におけるデザイン思考の学びについては、どう思われますか?

私は大学にくる前、システム会社のエンジニアとして働いていました。いまになって痛感するのは、技術に詳しい人こそ、過去の知識や成功体験がむしろ足を引っ張り、害になってしまっているということです。

昔のものづくりは、最初に設計をカッチリ固めて、それからブレないように、時間をかけて開発するのが当たり前でした。でも技術が進歩したいまは、5分でアプリを作って、すぐに実際に試してもらうことが可能になっています。

DXラボの学生がわずか1週間で開発。今までは書類での提出だった作業をデジタル化してこれまでの手間を省略している

デザイン思考でシステムを開発しなきゃならないのに、無意識に従来型の開発手法で開発してしまうことが私自身多々あります。だからこそ、2021年にDXラボを発足させたとき、学生に加わってもらう必要があると考えました。矢谷君も蛭田君も、余計な知識がない分、既存の概念を壊すような斬新なアイデアが生まれやすい。デザイン思考が彼らにとっては当たり前なんです。

2人は創造工学部の1期生で、いまは大学院に進んでいますが、研究室にいたデザイン思考を当初から学んでいた、いわば「デザイン思考ネイティブ」の同期は、この“デザイン思考”が評価され、志望する企業への内定もかなり早い段階で獲得していました。
入社してすぐ活躍できる思考や技術が彼らには備わっていると考えています。

技術だけじゃなく、「本当の困りごと」を見抜く力が大切

──それだけ社会が欲しがる実力を身につけているわけですね。お二人は高校時代からプログラミングやシステム開発をやってきて、その上で香川大学に入学したのでしょうか?

いえ、そういった知識はありませんでした。創造工学部の技術を学ぶだけでなく、「実際に使っている人がどう考えているかを知り、本当に望むモノを作れる」というところに惹かれて入りました。

ぼくも同じく知識があったわけではなかったので、DXラボでのシステム開発も、初めは何もわからないところから、自分たちで調べて進めてきました。

──てっきり講師の方に教えてもらって、技術開発をされているのだと思っていました!

香川大学では最新版のMicrosoft 365を使えるのですが、その中にPower Platformという、簡単にアプリやシステムを作れるツールが入っていて……Webサイトで使い方を調べながら開発しています。

ぼくは"Microsoft Learn"というツールを活用しながら学んでいます。このツールでは、目的別にITスキルを学べるんです。たとえば「貯まったデータを活かしたいけど、何かできないかな?」と思ったときには、データサイエンティストのカテゴリをみれば、データ分析の具体的な方法を、タダで教えてくれます。

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誰でも無料で始められる、マイクロソフトの認定資格取得プログラム"Microsoft Learn"とは?

クラウドやAIなどITに関するオンライン講座が約4300以上用意されており、香川大学の皆さんのように、自分が実現したい目的別に実践的な学びがオンライン上で手軽に受講可能。

今なら"Microsoft Learn"でオンライン講座を受講した高校生や学生に限り、無料でマイクロソフト認定試験の受験資格が得られます。試験に合格すれば、マイクロソフトが発行する公式の認定資格が取得できるのが大きなポイント!スマホでも手軽にできるため、スキマ時間を活用しながら学習が可能です。

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「具体的にこれがしたい」という目的がはっきりすれば、あとはその作り方を調べるだけです。最初のうちは、なんでバグが起きるのかわからなくて、数日間悩んだりもしましたが……。やっていくうちにだんだんと上達してきました。

5年前には考えられなかったことですが、いまではMicrosoft Learnで学んで、Power Platformを使えば、誰でも数日のうちにアプリやシステムが作れてしまうんです。学べる環境は既に用意されています。

これからの時代のエンジニアには、プログラミング能力に加え、「ユーザーに価値を提供できる技術の組み合わせ」を考えることも求められています。いまDXラボには8人の学生スタッフがいますが、その学生スタッフには、相手の意見を真に受けすぎず、「本当にそれはユーザの抱える課題なの?」と問うようにと言っています。この問いをしながら開発を進める経験が、就職してから初めてアプリやシステムを作り始める人との大きな差になるのではないかと感じます。

ぼくたちは相談内容をそのままシステムにするのではなく、使う人の「本当の困りごと」を見抜くように意識しています。ただデジタル化すればいいって問題じゃないケースもあるからです。

──それはたとえば、どういったケースでしょうか?

ちょうどいま進めているプロジェクトなんですが、大学では、モノを買ったり、どこかに出張をする際には「申請書」を提出して、判子を押してもらう必要があります。それを簡易化しようと蓋を開けてみると、偉い人→もっと偉い人→もっともっと偉い人、ってスタンプラリーの順番がすごく大事だと。でも、「申請作業そのモノを早くしたい」のなら、そもそも回覧形式じゃなくて、一斉に承認できるようにすればいいじゃん」となりました。

どこの企業でもやっているようなことですが、あらためて規則を見直すと、実際には判子を押すのは理事か副学長だけで良かったんです。「いままでやっていたから、なんとなく続けていた」ということがわかりました。

リーダーが事前に確認したいなら、Teamsで資料を共有して"いいね"を押すだけでも良いわけです。デジタル化する前に「仕事のやり方」を見直せました。

ただデジタルに置き換えるのではなく、いまの仕事のやり方そのモノを見直して変革していくのがDXだと考えています。とはいえ長年仕事をしていると、それが当たり前になっていて、見過ごしてしまうのですが、学生は、明らかにおかしいところはおかしいと気づいてくれます。

「学生」じゃなく、一人前のエンジニアとして

──かなり奥深いDXにまで着手されていますが、学生が仕事に関わることについては、どのように考えられているのでしょうか?

正直に言うと、学生が全学のシステムを担当するのはどうだろう……と、初めのうちは不安に思っていました。

学生がエンジニアとしてしっかりとプロジェクトを回すので、いまでは職員が学生に質問するような場面にも遭遇します。もう学生ではなくエンジニアとして認識されているのかと。

エンジニアとして認められて良かったです(笑)。

自分の開発したシステムを身近な人が仕事に使うわけですから、責任重大ですし、背筋を伸ばして取り組んでいます。

学生と一緒にプロジェクトを進めることによって、これまで愚痴が多かった職員も、ポジティブな意識を持つようになりました。学生にかっこ悪いところは見せられませんから。

DXラボの取り組みにたいして他大学からは「学生さんにそんなことをさせていいの」と言われることもありますが、そもそも我々は矢谷くんや蛭田くんを即戦略の“エンジニア”として考えています。考え方が異なります。

職員の方や先生たちと一緒にプロジェクトを進めるのはすごいワクワクしますし、技術面だけでなく、コミュニケーションスキルも学べるなと感じています。

本人達は謙遜しますが、矢谷君も蛭田君も、ユーザーに価値を提供できるエンジニアとして、どんどん成長しています。

──お二人は、大学院卒業後の進路についてどう考えているのでしょうか?

いま就活の真っただ中ですが、大学での学びを通して“DXの即戦力になれる”と自信を持って言えます。身につけたモノを活かせる仕事に就きたいですね。

僕もこの経験を活かして、実際にシステムを使う人、ユーザーの立場になって考えられるエンジニアになりたいと思っています。

──お二人とも、すでに立派なエンジニアとして活躍されていますものね。今回の記事を通して、DXについて興味を持たれる学生も多いのではないかと思います。最後に、八重樫先生から読者に向けたメッセージをいただけますか?

香川大学では最先端なDXの取り組みをしています。日本で一番小さな県にある大学ということで、小回りが効くので、都会では時間がかかるような実証実験も、すぐに取りかかれます。面積が狭く、人口密度が高いことから「日本の縮図」といわれることもある香川で身近な課題に取り組むことが、意外と日本全体の課題解決にも繋がってくれるのではないかと期待しています。

大げさに聞こえるかもしれませんが、ここは「社会に出る前から、社会を変えていくことができる」場所です。「DXに興味がある」「実践的なスキルが学びたい」という人は香川大学創造工学部創造工学科に進学していただき、DXラボに参加してくれたら。DXラボでお会いできるのを楽しみにしています。


***

多くの企業が求める「DX」のスキル。香川大学では、DX推進だけでなく、「本当の困りごと」を見抜いてアウトプットする「デザイン思考」が学べます。これから大学進学を考えているという人は、ぜひ香川大学での学びを体感してみてはいかがでしょうか?

香川大学 創造工学部ウェブサイトはこちら

また、八重樫先生のお話にもあった通り、現代は自ら学べる環境は既に用意されています。いま直接教えてもらえる環境がないという人も、無料のツールを使って学べる時代です。記事内で紹介した"Microsoft Learn"では学習コンテンツが充実しており、しかもすべてが無料で、その数なんと4300以上。初級・中級・上級と、自分のレベルに合った学習内容を選べるので、初心者の人でも安心です。

また"Microsoft Learn"での学びを通して資格取得も可能。DX人材は、日本全体で求められている人材です。ここには理系だから、文系だからという括りは無く、社会人さえも学び直しが求められています。就職にも間違いなく強いと考えられます。これは、「日本のあらゆる企業が求めるスキルを持っている」という、いわば“証明書”も取得できるわけです。文系・理系問わず「やりたい」という気持ちを大切にして、その一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

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