皆さんは言葉をバラしてみたご経験はあるだろうか。 例えば、ひぐらしをバラしてみよう。…|エッセイ企画「#Z世代の目線から」キーワード:目標
エッセイキーワード:目標
エッセイタイトル:『脱タイパ宣言!』/著者:岩木泰斗 さん
1232文字/4分くらいで読み終わります。
皆さんは言葉をバラしてみたご経験はあるだろうか。
例えば、ひぐらしをバラしてみよう。私が「ひぐらしは日を暮らすからひぐらしと言われるのだろうか」と考えたとする。
そして、そんな風に言葉をバラしたとき、私は考える。
「まだ科学が発展してない時代、人々はこのカナカナっと鳴く蝉が太陽の沈む時間を決めていると考えて、ひぐらしと名付けたのだろうか。ということは、ひぐらしはまるで神のような存在だと思われていたかもしれない。」
最近、こういうしょうもないことを思いついてはスマホのメモに残すようにしている。
突飛な発想だと思う。しかし、これがなかなか楽しいのである。それで一人、帰り道でニヤニヤする。
私たちは普段、言葉の分解を行わない時間の方が多い。というか、ほとんどの人はそんなことはしないだろう。私と同じような人がいたらぜひ教えてほしい。頭のおかしいもの同士で仲良くしようじゃないか。
しかし、私がこうしている間にも、この世の何かを指示する言葉はどんどん生まれ、古い言葉はどんどん使われなくなる。たくさん得られる一方で、たくさん失う。
たくさん得られるがゆえに、しっかりと向き合うことができない。それが苦しい。
日々の生活の中で、私はどんどん低い方に流れてしまう。音楽はサブスクだし、うまくできないものはすぐに諦めてしまっていた。だから、小学校から大学まで同じスポーツを続けている人たちを本当に尊敬している。
さまざまな娯楽が溢れている現代で同じことを10年以上続けられるなんて奇跡に近いのではないだろうかとすら思う。
ふと気がつくと携帯を触ることが増えた。
SNSに触れていると、かわいい猫たちがよく流れてくる。それを見るたび、裏側で猫がひどいことをされていないかなど心配になる。
何が本当で何が嘘か、その境界がどんどん曖昧になっていく。
一方、SNSで突飛なことをやって人気を得るも実像とかけ離れて苦しくなる人たちがいる。他方、その人格の解離も知らず、華やかな世界に憧れる人々もいる。
私も華やかな世界に憧れを抱く一人である。一度はチヤホヤされてみたい。しかし、自分の言動がデータとして残ってしまうことはどこか怖さを感じる。芸能人は日常までも晒さないといけない時代である。社会が楽しく、クリーンになることはいいことであると思いつつも、肩身の狭さも感じる。
以前は、ひぐらしと聞いたとき、私の思考は「あー、カナカナってなく蝉の名前ね」で止まっていた。今は違う。
今ある言葉、これまで受け継がれてきたものを少しでもいいから大事に抱えながらゆっくり歩きたい。
そうして、死ぬまでの時間を過ごしたいと思う。時間を無駄に贅沢に費やす。タイムパフォーマンス(タイパ)を求めるご時世には徹底的に抵抗するつもりである。
時間はお金のためにあるものじゃない、「自分にとっての大切なもの」を少しでも長く胸にしまうためにあるものだ。
私はそう思いたい。
著者:岩木泰斗 さん |
学校・学年:同志社大学 4年 |
サイト:https://sweepea.jp |
著者コメント:『てにはを辞典』めっちゃ面白いです。 |
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