『海』 海 そう聞いて脳内で描き出される光景は、燦々と照りつける太陽のせいでサウナ石のように熱されたアスファルトが広がる駐車場。|「#Z世代の目線から」エッセイコンテスト7月
「#Z世代の目線から」エッセイコンテスト7月
特別掲載:『海』加賀夕 さん
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海
そう聞いて脳内で描き出される光景は、燦々と照りつける太陽のせいでサウナ石のように熱されたアスファルトが広がる駐車場。ビーチパラソルの下で無邪気な子どもたちを微笑みながら見守るお母さん。そしてビキニ姿でビーチバレーを楽しむ女の子たちや茶色や金色の髪をかき上げている男の子たち。かき氷や焼きそばを提供している海の家。そしてきらきらと照り返し輝くどこまでも続いている真っ青な水面。
海は広いな大きいな
そんな真夏の海らしき海が海として人の脳裏に焼き付いている。
そう、
だから
『海』と言われたときに冬の海が真っ先に思い浮かぶ人などいないのかもしれない。
ぼくは冬の海を思い起こしてみた。
かき分けてもかき分けても一向に晴れ間が見える気配がしないほどの厚みを持つ濃灰色の曇天の下で、肌を刺すようなひんやりとした空気の中、ただ荒涼と岩に打ち付ける波の音。あの頃溢れかえっていた人たちはどこにも見当たらず、もがき苦しんでも誰一人として助けてくれそうにない。そんな海がどこまでも続いている。
そんな海は人々の心に海として存在していないのであろうか。
海そのものは何も変わらずただ半年が過ぎただけだというのに。
海にはポジティブなイメージがある。それでいいと思う。それが海だから。
ただ、海が冬という時期を過ごしていることを記憶の中から抹殺してはいけないのではないだろうか。
著者:加賀夕 さん |
学校・学年:名古屋大学 2年 |
Twitterアカウント:@SZK_SiHal_888 |
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