なんで携帯電話って、電車内で話すのとマナー違反なの?【学生記者】
電車内で通話している人を見たとき、「マナーが悪いな」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。物心ついたときから、マナーとして「電車内で通話するのはよくないことだ」と当たり前のように教わってきたからだと思います。事実、一般社団法人日本民営鉄道協会が毎年度実施しているアンケートでは、迷惑行為だと思うものの上位に「携帯電話・スマートフォンの着信音や通話」がランクインしています。
しかし、僕はあるとき「携帯電話がペースメーカーに影響を及ぼした例は一度も報告されていない」と総務省が発表しているのを知り、なぜこのマナーが社会で定着しているのだろうかと疑問に思いました。調べてみると、90年代末、携帯電話が登場した当時は、車内での通話は賛否両論わかれていたそうです。そこで今回は、車内での通話がどうしてマナー違反として社会の中で認識されていったのかを説明していきたいと思います!
電車は公共空間!
電車は切符を買えば誰でも乗ることができ、結果として見知らぬ人が一緒に居合わせるという特徴をもっています。このような特徴をもつ空間のことを、公共空間といい、図書館、公園、スーパーマーケットやカフェなども公共空間のひとつです。この公共空間ではそれぞれマナーが存在し、社会の一員である私たちはそのマナー守ることを暗黙の了解としています。
親密空間って何!?
公共空間は、一定の条件を満たせば誰でも入ることができる空間でした。一方で、そこに入る条件が厳しく制限されていて、結果としてよく知っている人同士が居合わせる空間のことを、親密空間といいます。代表的な例は、サークルや部活の活動部屋などです。多くの場合、「その部に入部している学生」という条件を満たしている人のみだけが入ることを許されます。よりわかりやすいものだと、家庭も家族という集団が形成する親密空間に当てはまります。
携帯電話の通話は親密空間を作る!?
ここで少し通話に話を戻してみたいと思います。家にある固定電話の場合、一家で共有している電話であるため家族の誰が取るかわからず、相手の確認や名乗り出る必要が生じます。また一般的に外部の人にも知らされている番号なので、公共的な性質を持っていると言えます。一方、携帯電話の場合、使用する人は個人が想定されていて、基本的にどの携帯にも1台にひとつ番号があります。また、電話をかけてくる相手も多くの場合が電話帳に入っている知り合いです。そのため、固定電話とは少し性質が異なり、私的な性質を帯びていると言えます。電話の特徴は、空間的に離れた場所にいる人間の間に、双方向で即時的なコミュニケーションを可能にすることです。つまり、携帯電話は自分と知っている相手との間で閉ざされたコミュニケーション空間、親密空間を形成することができるのです。
電車内の通話は、公共空間と親密空間の矛盾が生じる!
これまで説明してきたことをまとめると、電車内で携帯電話を利用し通話している人は、電車という公共空間にいながら、通話によって親密空間にも属するという矛盾が生じます。他の乗客からすると、電車内という公共の空間に見知らぬ他者とのプライベートな空間を持ち込まれるわけです。部活やサークルの中に家族のルールを持ち込んだり、他の友人グループの話を無理やりすると、不快に感じるのと同様のメカニズムです。
社会問題になって、鉄道会社がマナー化した
1990年代末になり、電車内など公共空間における携帯電話の利用をめぐる論争が社会問題として生じました。携帯電話の普及が進むと、電車内における携帯電話の利用は控えるべきだとする声と、小声での通話なら構わないとする声の両方が挙がり、結果として多くの鉄道会社が携帯電話の利用を控えるべきだとする方針を選びました。そして繰り返し車内放送や標識がかかげられ、現在のようにマナーが定着したのです。
電車内の化粧も同じ! まずは社会に興味をもってみること!
電車内の携帯電話をめぐるマナーを紹介してきましたが、いかがでしたか? 通話と同じでよく問題になる電車内での化粧についても同じように説明することができます。当然のように言われているマナーでも、改めてなぜそうなのかを考えることは、社会の成り立ちについて考えるきっかけとなるはず。大学生のみなさんも、毎日の通学や何気ない風景の中で「なんでこういうルールになっているんだろう」と疑問に思うことを探してみては? きっといろいろな発見が潜んでいると思います!
<大学生のまずこれステップ>
1. スマホではなく、周囲の風景に目を向けてみる!
2. 不思議な光景に対して、また不思議に思ったことをまとめてみる!
3. 自分なりに考えたり、調べてみる!
文・須賀健斗