日本一獲得回数なんと15回! 全国津軽三味線コンクールで優勝した大学生が語る三味線の魅力とは
2015年11月に開催された「第14回全国津軽三味線コンクール 大阪大会」で、立教大学の学生が「大賞の部」「唄づけの部」の2部門で優勝。特に「唄づけの部」は2連覇となりました。そこで今回は、優勝した立教大学経営学部経営学科3年の加藤佑典さんに、三味線を始めようとしたきっかけやその魅力を伺いました。
■小学生のときにすでに全国を目指していた!
――まず、三味線に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
加藤さん 父が趣味で自宅近くの津軽三味線教室に通っていました。父に付いて稽古場に顔を出すうちに、自分もやってみたいと思いました。それが小学校3年生のころです。
――お父さんの影響だったのですね。
加藤さん 稽古を始めて1年で30曲くらいの民謡を楽譜を見ずに弾けるようになりました。このころから、津軽三味線の全国コンクールに挑戦してみようと思うようになり、小学4年生で初めて全国コンクールに出場しました。その後、高校卒業までに日本一8回、大学進学後は7回日本一を頂きました。能力以上の賞をたくさん頂き、本当にありがたく思っています。
――大変素晴らしい成績を残されていますが、普段はどのような練習をされているのでしょうか?
加藤さん 高校を卒業するまでは、毎日2時間くらい稽古をしていました。大学生になった今でも毎日弾いています……と言いたいところですが、講義やサークル、また一人暮らしなので家事やアルバイトもあり、限られた時間で稽古をしている状況です。
――大学生の一人暮らしは意外とやることが多かったりしますよね。練習不足になったりしませんか?
加藤さん 週末には浅草にある『民謡の店みどり』で唄と三味線を担当していますので、お店で思う存分民謡をうたったり、三味線を弾いたりしていますよ。
――実践練習を多くされているということですね。
■演奏者の個性や世界観が音色に出せる
――三味線のどんなところが魅力と思いますか?
加藤さん 津軽三味線といえば「津軽じょんから節」が有名ですが、これを三味線のみで演奏した場合、同じ曲であっても演奏者によって全く異なる曲になってしまいます。これは、演奏者一人一人が自分の個性や世界観を持っていて、自分なりの津軽じょんから節を観客にアピールしようとするからです。
――同じ曲でも人によって違う曲になるのは面白いですね。
加藤さん 名人クラスにもなると、さらにその場限りの即興演奏も加わります。演奏技術だけでなく、作曲や表現力のセンス、さらには一瞬で観客をとりこにする気迫など、さまざまな要素を詰め込んで表現できることが、津軽三味線の面白いところです。
――三味線の難しいと思うこと、また苦労していることは?
加藤さん 早弾きや技巧的な演奏に注目が集まる津軽三味線ですが、実は津軽三味線奏者にとって一番難しいことは、人まねでない自分の三味線(音色)を表現することです。「音色を聞いただけで誰が弾いているのかがわかる」、演奏者にとってこれ以上うれしいことはありません。
もちろん、自分の音色を完成させることは簡単なことではありませんし、私もまだまだです。しかし、どんなに時間がかかっても、このことだけは生涯チャレンジする価値があると思っています。
――今後の展望はありますか?
加藤さん 大学卒業後は就職したいと考えています。三味線だけでなく、もっといろんな分野に挑戦してみたいですね。ただ、2015年の年末くらいまでコンクールや舞台があり、就職活動の準備がほとんどできなかったので、今まさに就職活動のことで頭がいっぱいです。できれば三味線と同じように、お客さまとの信頼関係を第一に考える仕事に就きたいと思っています。もちろん、就職しても三味線は趣味として続けていきますし、日本だけでなく海外の方にも私の三味線を聞いていただけたらいいなと思っています。
――ありがとうございました!
加藤さんは、『民謡の店みどり』で不定期ですが演奏を披露されています。興味があるけどなかなか聞く機会がないという人は、お店を訪れてみるのもいいでしょう。何度も日本一に輝いた素晴らしい演奏を聞く貴重な経験ができますよ!
『民謡の店みどり』HP
⇒http://www.geocities.jp/asakusa_midori/
取材協力:立教大学
(中田ボンベ@dcp)