FPに聞いた! 実際、老後までにいくらお金を貯めていれば安心なの?
人生における3大支出は「家、教育、老後」と言われています。特に老後資金についてはセカンドライフがスタートしてから巻き返すことが難しいため、早めにコツコツ準備できると有利です。
■60歳までに6000万円でときどき外食も可能
生命保険文化センターが行った調査に夫婦2人でいくらくらいあると「ゆとりある生活」ができると思いますかという質問があります。月額35.4万円が調査結果の平均値でした。
女性の平均寿命は86歳と言われています。平均寿命とは0歳時点での平均余命のこと。60歳まで生きた人の場合では女性だと平均余命は28.47歳で88歳より少し長めに生きることが平均的というデータになっています(厚生労働省「平成25年簡易生命表」)。60歳で退職し、夫婦2人で89歳までゆとりをもって過ごす場合は約1億2千万円(35.4万円×12ヶ月×29年間)必要という計算になります。
公的年金でまかなえる部分はどのくらいでしょうか。平成27年度の厚生年金受給額は標準的な夫婦の場合で月額約22.2万円です(夫の標準報酬月額42.8万円40年間就業、妻はずっと専業主婦)。年金受給開始年齢は65歳のため89歳までの24年間で受給できる金額は約6千万円(22.2万円×12ヶ月×24年間)となります。60歳で退職する場合は約6千万円(1億2千万円-6千万円)の備えが必要だという計算になります。
■最低限必要な金額は3000万円
ゆとりある生活をするために多くの人が必要と考える金額で試算すると約6000万円の備えが必要だとわかりました。6000千万円の差を埋めるためには60歳以降も延長して働くことや、老後の暮らしを節約することなども選択肢になります。
現在の60歳以上の家庭ではどのくらいの消費が平均的でしょうか。統計局の2014年家計調査によると世帯主が60~69歳の家庭で約26万円、70歳以上の家庭で約21万円となっています。このデータからは60~89歳までの生活で必要な金額は約8千万円(26万円×12ヶ月×10年+21万円×12ヶ月×19年)であると試算できます。厚生年金の標準的な受給金額を差し引くと60歳までに約2千万円の備えがあればなんとか足りるかもしれません。
しかし、注意点があります。家計調査の平均消費支出では住居費は約1.5万円となっています。同データの持ち家率を確認すると世帯主が60~69歳の家庭で87.9%、70歳以上の家庭で89.3%。賃貸派など住まいにお金が月額1.5万円よりもかかる予定であれば、その分は多めに準備する必要があります。また公的年金の支給開始年齢が引きあがる可能性なども考えると2000万円+αを備えられると心強いです。
大まかな目安として、まず60歳までに3000万円を目標にしてみると良いでしょう。すべて自分で貯金するだけとは限りません。会社の退職金制度を確認してみることや、将来実家に住める可能性なども整理してみると良いでしょう。0から貯金することを考える前に概ね準備できそうなものを差し引いて、それでも足りない金額を目標にすると現実的になります。
1000万円を貯めるために10年しかなければ年間100万円の貯金が必要ですが、20年あれば年間50万円の貯金で追いつきます。時間を味方につけて準備していきたいですね。
風呂内亜矢(ふろうち あや)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
IT企業に勤めていた26歳のとき、貯金80万円でマンションを衝動買いしたことをきっかけにお金の勉強と貯金を始める。現在は自宅を含め夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。テレビ、ラジオ、雑誌などメディア実績も多数。著書に『貯金80万円、独身の私にもできた! 自宅マンションを買って「お金の不安」に備える方法』がある。