「身元保証人」は 連帯保証人とどう違う?負う責任と期間について
身元保証人とは、入社内定者などの被保証人が会社に損害をかけた場合、代わりに責任を負う人のことです。親族や友人、恩師などにお願いするのが一般的ですね。
卒業し企業へ就職するときに必要なことが多い「身元保証人」ですが、借金やローンなどの「保証人」をイメージし、身構えてしまうひとも多いのではないでしょうか。
身元保証人は最長でも5年までと決められているので永久に面倒をみるわけでもないし、会社の対応が不誠実と感じたら責任/負担の軽減、解除を申し出ることもできます。
被保証人が意図的な損害や犯罪行為を起こすと大きな責任を負うこともありますが、あとで弁償させることもできる「強い立場の保証人」と言えるでしょう。
▼こちらもチェック!
性格診断テストまとめ 隠された自分の性格が丸わかり!
身元保証人とは
保証人と聞いていいイメージを持っている人はあまりいませんよね。
それは、借金やローンなどの「身元連帯保証人」が、民法第446条において「債務者がその債務を履行できない場合、代わりに履行する責任を負う」とされ、万が一のときは「代わりに支払います」と約束させられるに等しいものだからです。
しかし、就職・転職時の「身元保証人」は、こういったイメージよりはるかに有利な立場に設定されています。
身元保証人の責任範囲はどこまで?後悔につながるリスクとは
身元保証人は、「身元保証二関スル法律」により責任の範囲や期限が定められています。必要以上に責任を負わなくて良いように配慮されているのです。
引き受けたら、何でもかんでも責任を追わなくてはならないと思い込んでしまいますが、身元保証人はかなり「法に守られた保証人」です。
身元保証契約は3年か5年!自動更新されない
「身元保証契約」の有効期間は3年間か5年間です。
- ・期間を定めない場合 … 3年間
- ・期間を定める場合/商工業見習い者 … 5年間
どちらも自動更新されません。
更新の手続きをしない限り自動的に「無関係なひと」になります。
会社は前もって身元保証人に通知する義務がある
また、会社は以下のような状態になった場合、前もって身元保証人に通知する義務があります。
- ・被保証人の「職務不適格」などから、賠償責任が発生しそうな場合
- ・被保証人の職種や勤務地が変わり、身元保証人の責任が重くなったり、監督困難になった場合
通知を会社が怠った場合は、責任/負担の軽減、将来に向けて保証契約の解除を申し出ることも可能です。つまり「事前にご連絡をいただいていません」と突っぱねることができるのです。
身元保証人は解除可能
会社が
- ・被保証人がその仕事に向いていない
- ・会社にウソをつくなどの不誠実がある
- ・「内勤者」が「外回りの営業職」に変更
など、「身元保証人」の負担が増加し不利になる可能性が上がったこと知りながら身元保証人に伝えない場合は、契約期間中であっても身元保証契約を解除できます。
さらに、身元保証人は、社員が犯罪行為を行った場合なども解除権を使って身元保証人から離脱可能です。
身元保証人と連帯保証人の違いとは
身元連帯保証人は、債務を全額保証する責任を負います。仮に社員に賠償資力があったとしても、身元連帯保証人は会社からの弁済請求を拒否できません。
一方で身元保証人の場合、債務責任は社員の破産宣告により発生します。
このように、身元保証人と身元連帯保証人では責任度合いが全く違います。
身元連帯保証人となってもらうことを承諾してもらう身元連帯保証書は、賠償資力の担保という意味で大きな効果を発揮するのです。
身元保証人の資格とは?就職・転職時は親や配偶者でもOK?
就職・転職時の身元保証人は二人求められることが多いです。一方は、親でもいい場合が多いですが、もう一方は親以外の血縁者や友人・知人にするよう求められることが大半です。
身元保証人としてNGとされがちな人は
- ・本人と生計を同じくしている親や配偶者
- ・年金受給者で年金以外の収入がほぼない場合
など、万が一の場合の金銭的負担に耐えられない可能性がある人です。
身元保証人に求められる資格とは
身元保証人に求められる資格は、
- ・きちんとした職業に就いている
- ・安定した収入がある
であることが多いです。
細かい条件は企業によって異なるので、身元保証人に関する条件については入社予定の会社に確認するといいでしょう。
就職・転職時の身元保証人をお願いされやすい人とは
就職・転職時に身元保証人をお願いされやすい人は、
- ・社員の親族
- ・社員の友人(学生は除く)
- ・社員の恩師
などが一般的です。
条件を満たすなら身元保証人は友人でも可能
身元保証人になれる条件を満たすなら、社員になる人の友人でも身元保証人になれます。
学生が新卒入社する場合に大学時代の同期にお願いするのは難しいかもしれませんが、転職の場合は転職前の会社の同期や同僚にお願いしても大丈夫でしょう。
身元保証人を立てられなかった場合は採用取り消しもあり得る?
身元保証人を立てられなかったからといって、すぐに採用取り消しになるわけではありません。どうしても心当たりがない場合は、就職予定の会社に相談しましょう。
- ・両親が他界している
- ・頼れる親族は年金暮らしである
など、人によってさまざまな事情があります。早めに相談してみましょう。
身元保証人代行サービスは利用するべき?
身元保証人代行サービスというものもありますが、トラブルも多いようです。
まずは会社に相談し、会社から「こちらの身元保証人代行サービスを使ってください」などと指示があった場合に使えばいいでしょう。
入院・手術時の身元保証人は就職時とは異なる意味がある
病院に入院したり手術するときも身元保証人が必要になる場合があります。
入院時の身元保証人は、
- ・入院費用などの支払い
- ・本人の退院・転院時の引き受け
- ・本人が亡くなった場合の遺体の引き取り
- ・本人に万が一があった場合の緊急連絡先
についての責任を負うケースが大半です。
就職・転職時の身元保証人よりも「責任が大きい」と感じた人が多いのではないでしょうか。
就職・転職時の身元保証人と同じ感覚でお願いされたとき、気軽に引き受けてしまうと後悔につながるかもしれませんね。
身元保証人が払ったお金を取りもどす「求償権」とは
被保証人が会社に損害を与えれば、賠償責任を負うのは避けられません。
ただしマジメに勤務中の事故なら同情もできるでしょうが、会社のお金を使い込んだ、ニセ契約をしてトンズラした、情報漏洩したなど、故意に起こした不祥事は言語道断です。
そんなときは被保証人に損害賠償を請求できる「求償権」を利用し支払ったお金を取り戻すことができます。いわゆる「弁償」ですね。
家族/親族が身元保証人になると「情」から求償しないケースが多いようですが、悪いことをしておきながら「逃げ得」では世のためひとのためになりません。
被保証人に世の中のキビしさを味あわせることも必要と考えられているのです。
身元保証人は連帯保証人よりは軽い!引き受けるときはよく考えて
身元保証人は、連帯保証人よりも責任が軽い保証人です。
とはいえ、保証人である限り責任もリスクも発生します。まずは誠実な人物/会社かを見定めることが重要です。
そのうえで法律を理解しておけば、さほど身構える必要はないでしょう。