2019年03月18日 更新

引越しの退去時、敷金は戻る? 費用請求される場合も

敷金を預けていても今まで借りていた部屋から退去するときにも費用が発生することがあります。ただでさえ出費がかさむ引越しのタイミングで退去費用まで発生する状況は大きな負担になります。そこで、退去時に発生する費用や、退去費を抑えて敷金を返還してもらうためにできる取り組みなど、気になるポイントを解説していきます。

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退去時に発生する費用

賃貸物件を退去する際に発生する可能性がある費用は「原状回復費用」と「クリーニング費用」です。

原状回復は物件を借りて使っている間に減少した建物価値をもとの状態に戻すことで、端的に言えば「借りている間につけた傷などは修理して返しなさいよ」ということです。
一方で、クリーニング費用は物件を次の人へ貸し出す前に物件の消毒や清掃、床や壁紙の張替えなどをする費用のことです。

退去時の原状回復は借主の義務

借主の原状回復は義務であり、クリーニングは義務ではないので、クリーニング代は必ず発生する費用ではありませんが、賃貸契約の際に特約としてクリーニング代金の請求が盛り込まれており、特約内容に基づいて請求されることが大半です。

契約書は一度契約すると、あまり見返すことのないものですし、その内容をしっかりと理解した上で契約を結んでいる人は、多くはないのではないでしょうか。ですが、退去時には賃貸借契約の内容をよく確認しておくことが重要なポイントです。それにより、無駄な費用負担をしないで済むケースもあります。

退去費用の具体例、費用発生の仕方

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原状回復費用の全額を借主が負担するわけではありません。人が生活すると建物に多少の痛みが出るのは当たり前ですし、賃貸契約はそれを踏まえた上で結ばれるので、普通に使っていて発生する劣化まで負担する必要はないとされています(経年劣化と言います)。

借主が負担するのは「普通の使い方をしていれば発生しない傷や破損、変色など」と「普通の使い方をしていても発生するけれども、その後の対応を怠って発生した傷や破損、変色など」です。

経年劣化とそうでないものの例

経年劣化とそうでないものの具体的な例を紹介しましょう。

家具を置いていた場所にできた床のへこみは普通の使い方でできるもののため貸主が負担しますが、椅子を引きずってできた床の傷は「普通の使い方をしていれば発生しない傷」に当たるので借主が負担します。
ほかにも、アパート備え付けのクーラーが古くなって故障した場合は貸主が修理すべきですが、漏れてきた水を放置していて壁に染みができた場合は「対応を怠って発生して広がった変色」にあたります。
タバコによる壁の変色は想定される劣化の範囲内ですが、あまりにも変色がひどすぎる場合は普通の使い方の範囲外とされることもあります。

このような例がありますが、他の家からの水漏れや地震など、借主に責任がない場合は問題ありませんし、古くなった設備を最新のものに交換するグレードアップの費用も貸主が負担する決まりになっています。

クリーニング費用は義務ではないが、払うことが多い

クリーニング費用は義務ではありませんので、請求されるのは賃貸契約の特約で決められている場合のみです。初めに交わした契約書に記載されていれば、どんなに物件をきれいにしていてもクリーニング費用を請求されることになります。

ただし、客観的に見て請求された費用があまりに高すぎるケースや、契約時に不利な条件や具体的な想定金額についての説明がされていなかったケースなどでは特約が無効になることがあります。
高額な請求をされた場合は国民生活センターの窓口に相談してみましょう。

退去費用の請求や敷金の戻りは退去の後日に

一般的に、物件を退去する際に退去にかかる費用の見積書が作成されます。
退去日には借主もしくは管理会社の立ち合いの下で物件の状態と原状回復が必要な個所を確認し、1ヶ月程度で新住所へ請求書や明細が届くことが多いようです。

このとき、敷金を預けていた場合は請求費用が敷金から差し引かれます。敷金で賄えた場合は残金を返してもらえますが、足が出た場合は不足金額を請求されます。請求書が届いたら期日までに支払いましょう。

退去時の発生費用を少なくするために

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退去費用がどのくらいの額になるかは物件の使い方によって変わります。乱暴で汚い使い方をしていれば修理費用がかさみますし、きれいな使い方をしていれば敷金が返却されます。
ここでは退去時に発生する費用を抑えるためにできることをまとめました。

入居時に「物件状況及び原状回復確認リスト」を作成する

ドアや床についている傷が、自分が引越してくる前からある傷かどうかを確認しておかないと、退去時の確認で傷が元々あった、なかったと揉めてしまいます。
入居時に記入シートを渡されることもありますが、なかった場合は自身で作成して貸主と内容を共有しておきましょう。

こまめな掃除とトラブルの早期解決

換気扇の油汚れや風呂・トイレのカビを放置していると、手入れを怠ったとして原状回復を求められることがあります。
こまめに掃除をして汚れを溜めないことはもちろん、トラブルが起きたらすぐに対応しましょう。

壁にクギやネジで穴を開けない

画鋲と違い、クギやネジは穴が大きくて深いので原状回復に該当するケースがほとんどです。釘やネジを必要とする家具の購入を避けるか、修繕費用を請求されることを覚悟して使用しましょう。
壁紙がはがれないタイプの両面タイプもあります。取り付けたいものに合わせて、そういったものをうまく活用するのも手です。

退去前には隅々まで大掃除をする

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どうせクリーニングをするからと汚れたままで退去するのはよくありません。
立ち合い確認でもきれいに掃除されている状態とそうでない状態では印象がまったく違いますし、クリーニング費用に影響することも考えられます。

自分でもしっかりと退去時の現状確認をする

任せっぱなしではなく自分でも確認することが大切です。自分に覚えがない傷や変色に対して現状復帰を求められたら、話し合いをして納得した上で応じましょう。
入居時もですが、必要に応じて部屋の状況を写真に撮って記録を残す、ということもポイントです。

まとめ

引越しでは新居の初期費用の陰に隠れて見落としがちですが、退去の際にも費用がかかる場合があります。この退去費は日ごろの使い方で大きく差がでてくるポイントです。ある程度は仕方ないとはいえ出費は抑えたいものですし、敷金も返ってきた方が嬉しいですよね。
退去の準備は契約の時から始まっていますが、退去が決まってからでもできることはあるので取り組んでみてください。
監修:矢野翔一
暮らしやお金のアドバイザー
宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP) 関西学院大学法学部法律学科卒。 数々の保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産業務を手掛ける。 引越しや住宅ローンといった暮らしやお金の様々な悩みに対してアドバイスを行う。
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