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「人気だったから軽い気持ちで入れてみましたが、いまでは自分も大好きで」と笑うのは、店主の村松さん。そんな奥深いアーコール家具の魅力や代表的なデザイン、大切に使い続けるためのコツを聞きました。
アーコールチェアの魅力って?
日本での人気の火付け役は2人の女性
当時、モデルの雅姫さんが大人気で、彼女の愛用品が雑誌で紹介されると、片っ端から売り切れになるほど。そんな雅姫さんがアーコールの古いチェアをご自身でペイントされていたんです。
さらにその後、イギリスのファッションデザイナーであるマーガレット・ハウエルさんが、生産終了していた椅子の復刻をアーコールに依頼して。このお二人の影響で、日本でアーコールが広く認知されるようになりました。
丸みのあるやわらかいフォルムが特徴
アーコールの家具は丸みのあるやわらかなフォルムが特徴。熱を用いて木を曲げる成型技術でその独特のカーブを実現しました。アーコールはいまでも家具を作り続けていますが、装飾が多かったり、サイズが大きくなってしまったり……。僕は1960年代前後に作られたデザインが一番かっこいいと思っています。
実はかわいさだけではない! 機能美で男性も魅了
最初はやさしいデザインから女性向けの家具のイメージを持っていましたが、実はいろいろなデザインがあるんですよね。
買い付けでいろいろな形を目にしていくうちに次第にはまっていき、いまでは買い付けに行くとアーコールチェアだけに焦点が当たって、ほかはぼけて見えるくらいになりました(笑)。
ひとつひとつ違う! アーコールチェアのデザイン紹介
マーガレット・ハウエルが復刻を願った「スタッキングチェア」
子ども時代に家庭で慣れ親しんでいた思い出の椅子を復刻してもらいたいと、彼女自らアーコールに繰り返し依頼して復刻が実現しました。
「スタッキングチェア」は、直線的なデザインが印象的ですよね。背もたれが丸く、やわらかな雰囲気のフープバックチェア(写真下)と比べると、その違いがよくわかります。
雅姫さんが当時、雑誌で紹介されたのも「スタッキングチェア」なんです。日本で一番人気が高いデザインで、本国でも日本の業者が高値でも買うことから、価格が驚くほど高騰しているんですよ。
細くて長い背もたれが印象的な「クエーカーチェア」
背もたれの部分がほかのデザインと比べて高いのが特徴です。弓のように曲げられた背もたれで、イギリスのクラシックなデザインとして有名です。
部屋に一脚あると、空間がぐっと華やかになるので、ディスプレイを楽しむ椅子として部屋の一角に置いても素敵ですね。
機能性にも注目したい「スティックバックチェア」
スティックバックチェアの一番の魅力は後ろ姿にあります。後ろの脚と背もたれの中心3本がつながっているため、背もたれの荷重を分散させることができます。
各パーツに掛かる負担を減らすことで、椅子全体の耐久性を高めることができるんですよね。デザインがかっこいいだけでなく、理にかなった構造も素晴らしいと思います。
ほかの椅子より座板が厚いなど、レアものも!
写真右の椅子は、これまで一度も見たことがないもの。ここまで座板が厚いのも珍しいし、座面がおしりの形に合わせて削られていて、恥ずかしいくらいフィットしているんです(笑)。でも、アーコールのシールが貼ってあるので製造は確かにアーコールのものなんですよ。
古いものをより長く使い続けるために
「状態の良いヴィンテージ家具と、新しい家具の組み合わせを楽しんでもらいたい」と村松さん。味わいを残しながら、木の表面を磨き上げた家具はどのテイストの家具にもなじみやすいので、初めてヴィンテージ家具を取り入れる方にもぴったり。
仕入れ時の状態に合わせてメンテナンス
がたつきのあるものは一度分解して楔(くさび)を打ち直し、再度のり付けをして組み上げていきます。椅子1脚のメンテナンスに、ほぼ1日掛かるときもあるそう。
もちろん、がたつきがない椅子も、やすりをかけて古い塗装を剥がし、すべすべになるまで磨き上げる作業は同じ。よみがえった艶やかさと、さらさらの肌触りに、椅子もうれしそうです。
「どのお店がよい」というわけではなく、さまざまな考え方があると思っています。
多少ガタついたり、塗装がはがれて木目が乾燥していたりしても、安く手に入れて自分で直しながら使うもよし、それを味としてそのまま使うもよし。ただ、僕たちは長く愛用してもらいたいので、しっかり直してからお渡ししたいと考えています。
使用環境に合わせた仕上げ塗装を
仕上げ塗装がはがれたままのものを使い続けると、木がさらに乾燥していき、木の継ぎ目に隙間ができていきます。乾燥から家具を守るという意味でも仕上げの塗装は大切です。
うちはオイル仕上げが基本ですが、オイルは木の中に染み込んで固まる性質があるため、外部からの水濡れが心配な場合やエアコンなどで乾燥が心配な環境では、オイル仕上げではなく、ラッカー仕上げをおすすめしています。
まとめ
同店の買い付けは年に2、3回。入荷情報や予約・問い合わせは公式サイトやFacebookから受け付けているので、購入を検討している人はこの機会をお見逃しなく。お気に入りの1点との出会いがあるかもしれませんよ。
不具合を直して現代の家具になじむよう磨き上げるなど、買い付け後の丁寧なメンテナンスに定評のあるトランジスタ。ヴィンテージアイテムに興味がある人は、こうした使い手の生活に合わせたメンテナンスを提案してくれるお店に相談してみて。
取材協力
transista(トランジスタ)
東京都武蔵野市吉祥寺本町3-20-5-102
TEL: 0422-51-5707
12:00〜18:00営業、火・水曜定休
ご来店いただく場合は事前に予約が必要です。
なお、営業日や営業時間は変更になる場合があります。詳細は問い合わせを。
※価格はすべて税込み