実はフレキシブルな職場!成長と働きやすさを実感できる特許庁の仕事とは
みなさんは、“霞ヶ関で働く”と聞くと、いわゆる“官公庁で働く”というイメージを抱く人が多いのでは? ニュースなどで報道される内容から、「残業が多い」、「激務で消耗しそう」と想像する人も多いでしょう。
しかしそんな官公庁のなかでも特許庁は、「働きやすい職場」としてさまざまな企業ランキングで上位に入っています。
なぜ特許庁は働きやすいと評判高いのでしょうか? その実態を探るべく、特許庁職員の方にお話をうかがいました。
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インタビューに答えていただいた方はこちら!
特許庁 審査第二部 搬送 審査官補 荒木さん
特許庁に入庁して3年目。「審査官補」として指導審査官のもとで指導を受けながら特許審査実務を習得すべく日々研鑽を積んでいます。学生時代に特許を出願したことを機に、審査官という職業を知ったそうです。
そもそも官公庁での特許庁の役割って?
日本の産業発展に向けた取組を行っている特許庁。役割は主に6つで、産業財産権の適切な付与、産業財産権施策の企画立案、国際的な制度調和と途上国協力の推進、産業財産権制度の見直し、中小企業・大学等に対する支援、産業財産権情報提供の拡充等を担っています。
特許庁で働く特許審査官は、出願されたさまざまな発明に対して特許を認めるか否かを審査する職種。さらに行政官としての側面も持ち、例えば、知財活用を促進させる企画立案、国外特許庁との折衝、特許に関する法整備などに携わる人もいます。
月のタスクを自分の裁量でこなす!
特許庁ならではの仕事の進め方
――荒木さんが普段取り組んでいる業務の内容を教えてください。
私自身は電気等のスイッチの特許審査をしています。なお、私が所属している審査第二部では、主に機械系の特許審査をしており、自動車、航空機、エレベーター、ベルトコンベア、USBコネクタなど、出願される内容はさまざまです。
――特許審査はどのように行うのでしょうか。
まず出願された書類を読んで、発明の内容を理解します。次に行うのが、似たような技術や同じ技術がすでに公開されていないか確認する先行技術調査です。世界中の特許文献や論文はもとより、最近では動画なども調査する必要があります。
すでに同じような発明があった場合は、なぜ特許とならないのかを説明するための拒絶理由通知書を作成します。拒絶理由通知書を出願人に通知して案件が終了するときもあれば、修正された書類が再度提出され、改めて審査を行うこともあります。
――修正もできるのですね。
はい。特許請求の範囲は明文化する必要があるため、「この技術のここからここまでの範囲を特許として認めてほしい」というように出願書類に記載されているんです。その範囲が広すぎて先行技術と重複してしまった場合、権利範囲を狭める修正をすれば認められることもあります。
――なるほど! それでは荒木さんの1日の業務のスケジュールを教えてください。
日によって違いはありますが、昨日は午前中に出願書類を読んで発明内容を理解し、午後は先行技術調査を行いました。残業なしで帰ることができました。
特許庁では登庁時間をある程度自分で調整できるので、私は朝8時に登庁して仕事を始めています。午前中は出願書類を読んでいることが多いです。案件によってまちまちですが、私が理想としている流れとしては、午前中に書類を読んで先行技術調査をして、夕方には特許にできるかを判断し、必要な通知書類を書けたらと思っています。これを1日1件のペースで進められるのが理想ですね。
ただ、実際は審査以外の周辺業務もこなしていますし、出願された技術の内容が複雑な場合は1日で審査が終わらないことも珍しくありません。最も時間がかかるのは先行技術調査で、この作業だけで数日費やしたときもありました。
――何時くらいに退庁することが多いですか。
8時出勤の場合は16時45分が定時なので、その時間で帰ることが多いです。残業をする日もありますが、それでも朝早く来ている分、18時くらいには切り上げています。
――官公庁の人はもっと遅くまで働いているイメージがあったので、意外でした。
特許庁の審査業務では1カ月のうちにやらなければならない仕事量があらかじめ決まっているので、働く時間を調整しやすいんです。月のタスクを達成できるよう、「今日はここまでにしよう」、「今日はがんばって多めにやろう」のように、フレキシブルに働いています。
大学時代の学びも活かせる!
特許庁で働くやりがいと苦労
――仕事で大変なことや、今まで苦労した点などを教えてください。
発明の内容を理解することが1番難しいです。私が今扱っているのは電気に関するものの発明ですが、学生時代の専攻は機械系だったので内容がまったく異なります。入庁した当初は技術の内容が初めて見るものばかりで、内部構造などを理解するのが大変でした。
それでも周りにはさまざまなバックグラウンドを持つ方がいるので、「この分野だったらこの人がよく知っている」というように、知識が多い方々にすぐに聞けるのはありがたいです。ひとりで進めていると、思い込みや迷いが生じることもありますが、ほかの審査官に質問や相談ができるので、最後には自信をもって判断することができます。
――荒木さん自身のバックグラウンド、例えば学生時代の専門分野が活かされたことはありますか?
そうですね。担当は電気に関するものですが、様々な案件を審査する中で、学生時代に専門的に学んでいた機械系の知識を活かして、よい審査につなげられたこともありました。学生時代の経験や知識も活かせるので、学んできた内容が無駄にならなくていいな、と感じています。
――ほかにもどのような点に働きがいを感じるか教えてください。
まだ3年目で審査官補という立場なので、実は自分ひとりで特許を認めたことがなくて……。でも、審査官になれば自分の名前で認めた特許が製品として世に出ていることを実感できるので働きがいを感じると、先輩たちから聞いています。
しかし、審査官補としても出願人とのやりとりのなかで、特許の権利範囲の調整をうまく進められたときは、働きがいを感じました。やりとりは書面ですしこちらから修正することはできませんが、それでもこちらから通知する文章に「こうしたら特許になるかもしれない」という想いを可能な限り詰め込んでいます。だからこそ、こちらの意図が伝わったときには「がんばってよかったな」と感じました。
働きやすく成長を感じられる!
個人の裁量が大きい職場
――特許審査官として働くときに必要な知識やスキルはありますか。
まずは理系の基礎知識でしょうか。どの分野の発明を読むときも、基礎知識がないと発明を理解することができません。あと、日本語の文章力です。特許出願のやりとりは書面主義なので、自分の考えをしっかり文章にして、論理的に伝えることが求められます。それができないと出願人も混乱してしまい、権利範囲を必要以上に調整することになってしまうからです。
また、英語力もあるといいと思います。先行技術の調査には、日本語だけでなく外国語の文献も読まなければならない場合もあります。もちろん翻訳ソフトはありますが、せめて英語くらいは自力で読めるようにしておくといいと思います。ドイツ語や中国語など、ほかの外国語の力も役立つはずです。
――特許法に関する知識も必要でしょうか。
確かに業務には特許に関連する法律の知識も求められますが、私は学生時代にまったく法律に触れたことがなくて……。実は特許審査官には、そういう人が多い印象です。
――そうなんですね! 入庁後に研修はありましたか?
入庁後は約3ヵ月間の研修があり、特許法をはじめとする法律についてみっちり勉強しました。私のように学生時代に法律を専門としていない人でも大丈夫ですが、自分から積極的に学ぼうとする姿勢は重要だと思います。
ほかには公務員として働くための基礎を養う研修や、審査で使う英語やソフトウェアの操作方法を学ぶ研修もありました。審査官になるまでも、なってからも、研修が充実しており、しっかり鍛え上げてもらえるので心配いりません。
審査官補として現場に出たあともOJTのようなものがあり、指導審査官が1~2人ついて業務を数年間一緒に行います。仕事中に迷ったときも質問すると丁寧に教えてくれるので心強いです。
――新人を何年もかけて育ててくれるほど、サポートが手厚いのですね。
はい。審査官補の期間は最終学歴によって異なっていて、学部卒は4年、修士卒は3年、博士卒は2年です。私は修士卒だったので、順調に進めば来年には審査官として一歩を踏み出せます。
サポートはほかにもあり、各専門分野に関連した技術研修が印象的でした。私が参加したのは自動車のエンジンの分解や組み立ての研修です。実際にものに触れて手を動かす研修なのでおもしろかったですし、勉強になりました。電気系の基礎が学べる体験型のセミナーや、学会発表を聞きに行く機会もあります。
――特許庁では留学に行かれる方もいるそうですね。
海外で先端技術を学んだり、欧米等の知財制度を調査するための留学制度があり、同じ部署内にもドイツやアメリカに行っていた方々がいます。審査官としてのキャリアをある程度積む必要があるので留学にはすぐ行けるわけではありませんが、「海外に行きたいです」とアピールし続ければチャンスがめぐってくるはずです。キャリアに関する希望を上司が聞いてくれる機会があるので、やりたい仕事ができる可能性は高いと思います。
――特許庁のどのような点に働きやすさを感じますか?
最近ですとテレワークができる環境がある点です。通勤しない分ほかのことに時間を活用できますし、体力も温存できてありがたいです。私は基本的に指導審査官と出勤日を合わせ、週に2回テレワークをしています。
――テレワーク中に相談事があるときはどうしているのでしょうか。
チャットですぐに聞けますし、オンラインで画面共有をしながら話すこともできるのでひとりで抱え込まずに在宅勤務ができます。
――先ほど「自分で出勤時間を調整できる」とおっしゃっていたのも印象的でした。
フレックス制度のおかげです。月に働かなければいけない最低限の労働時間やコアタイムはありますが、そこをクリアしていれば登庁や退庁の時間を調整できます。「月曜日は休み明けだから遅めに登庁して短時間で切り上げよう」、「火曜日は早めに行って長く仕事をしよう」、など日によって調整することも可能です。私も最近フレックス制度を活用し始めて、自分の都合に合わせて勤務時間をコントロールできることに働きやすさを感じました。
――ほかにはどのような制度や福利厚生が整えられているか教えてください。
育児休業制度や産前産後休暇制度もあり、男女問わず利用者が多いです。また、育児のために勤務時間を短くできる制度も用意されていて、保育園の送り迎えのために利用されている方もいます。女性職員の方からも「育児をしながら働きやすい」という話を聞きました。
普段から休みを取りやすい職場で、有給休暇の消化率も高い印象をもっています。入庁後すぐに有給休暇が15日分付与されるため、私も最初の3カ月の研修が終わってからかなり使いました。時間休暇も使えるので午前中は休んで午後から登庁することもできます。先ほどの勤務時間のコントロールと併せることで、プライベート時間をしっかり確保できます。
――1日単位ではなく、時間単位で休めるのはありがたいですね。
休むときはしっかり休んで、働くときは働く。メリハリを付けてフレキシブルに働ける職場だと感じています。
あとは働き方改革の一環で、少し前からフリーアドレスが導入されました。席が固定だと同じ人とコミュニケーションをとることが多いですが、フリーアドレスは毎日座る場所を変えられるので普段とは違う人と話しやすくなります。さまざまな人の意外な一面を知れておもしろいですね。
パーティションで囲まれた集中しやすい机や、電動昇降机など座席も多種多様です。「今日は集中したいからこの席」、「人と話したいから周りに人がいる席にしよう」など気分によって席を選択して業務に取り組めます。
技術を大事にできる人と働きたい
――特許庁で、どのような人と一緒に働きたいですか。
特許審査官は技術を扱っているので、一つひとつの技術を大事だと思える人と働きたいです。
コミュニケーションが得意な人も活躍できる職場だと思います。普段の業務は書類上のやりとりがほとんどですが、電話や面接などで人と話し合う機会もあるからです。私も特許庁に入庁して、書類を読んだり書いたりするだけではなく、直接コミュニケーションをとる機会があることに驚きました。また、審査はひとりだけで黙々と進めることもできますが、同僚や先輩などともしっかりコミュニケーションをとっていくことも重要です。
個人的には、さまざまな人に入庁してほしいと感じています。特許庁には話し好きの人もいれば寡黙な人もいますし、珍しい趣味を持っている方も多いです。バックボーンが多様だからこそ各自の経験を活かせるので、ぜひ多くの方に興味を持っていただけたらと思います。
――荒木さんはご自身の今後のキャリアについて、どう考えていますか。
まずは一人前の審査官になれるよう、日々の業務にしっかり取り組んでいきます。その後のことはまだ漠然としか考えていませんが、発明をされている方々や庁内の業務をサポートできるようなベース作りをしたいです。
審査官は審査だけでなく、行政官としてのキャリアを積むこともできます。特許や知的財産の制度をよりよくしたり、海外と協力したり、審査しやすいシステムを作ったりする仕事もあり、特技を活かしやすい職場です。私はソフトウェア開発に興味があるので、そうした観点からみなさんの審査を支援できたらいいな、と思っています。
――最後に読者に一言お願いします。
何にでも興味のある人が活躍しやすい職場なので、好奇心旺盛な方にはぴったりです。
個人に合った働き方で、成長もできる!
個人の裁量で働き方を調整でき、ワークライフバランスを両立しやすい職場を実現している特許庁。入庁後の研修も充実しており、初めて法律や特許に触れる人でも一人前の審査官になれるようサポートしています。審査官になれば自分の名前で特許を認めるなど、やりがいも充分。働きやすいだけでなく、成長を感じられる職場で活躍したいと考えている就活生や転職希望者の方は、審査官の採用情報をチェックしてみてはいかがでしょうか?
■特許庁
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