学生ビジネスプランコンテスト「Jump Vol.2」決勝大会レポート!現役学生が考案したビジネスプランと結果は?!
JAグループのイノベーションラボ”AgVenture Lab”が開催する、学生ビジネスプランコンテスト「JUMP」が、2023年2月25日(土)に開催されました。この大会は既に起業している、これから起業を目指す、学生起業家のサポートを目的としており、昨年からスタートした大会です。
2回目の開催とある今年は、全国から76チームの応募があり、書類選考・面談選考を通過した10チームが決勝大会に進出!※1チーム辞退のため、9チームで実施
新規性、実現性、収益性、熱意、社会的インパクトの5つの審査基準を基に、7名の審査員及びオーディエンスによって受賞チームが決まる本大会。今回はその決勝大会の様子をお届けします。
学生ならではの視点・アイデアの詰まったプランと熱は、あなたの挑戦心を掻き立てるきっかけに繋がるかも?!
▼INDEX
1.『ロープ自走型輸送機を用いた効率的な動物の搬送』/チームLIFT
2.『ライブ直後の感動を共有し合えるメタバース上のオタク・コミュニティ事業』/チャン5
3.『居酒屋キャッチのDXサービス』/Catchee
4.『シニア向け完全栄養食ブランド 「ME TIME」』/株式会社LacuS
5.『モバイルボトリングサービスによる蔵元支援と清酒の輸出促進』/うぶごえ first breath
まずは前半5チームのビジネスプランの内容からお届けします。
1.『ロープ自走型輸送機を用いた効率的な動物の搬送』/チームLIFT
「Jump Vol.2」のトップバッターを務めたのは、東北大学の児玉さん率いる「LIFT」。宇宙エレベーターという未来の宇宙輸送技術を実現させるという夢の元、その技術を社会に還元出来ないかと様々な産業で試す中で出会ったのがジビエ分野。
チームLIFTのみなさんがハンターの方に調査を行ったところ、現在捕まえられたシカのうち現在約86.3%(※1)が廃棄されている事が判明。その原因の一つにシカの加工施設が近くになく、解体できる場所まで遠い事、運搬の際、シカを引きずってしまい衛生面に問題がある事を課題として認識。
そこで、チームLIFTは動物の搬送にかかる時間を短くすることを叶える「ロープ自走式輸送機」を導入するビジネスプランを提案。
ロープ自走式輸送機とは、その名の通り、小型の輸送機がロープの上を自走する機会で、小型ながら可搬重量はなんと100kg!
このロープ自走式輸送機を直接ハンターの方や、ハンターの方が所属する猟友会へ販売する事を想定し、販売形式は通常販売に加えて使った分だけorサブスクリプション形式の提供と幅広い販売方法を想定され、市場規模と利益を考えられてました。
審査員からの質問で、果物の運搬の方が収益があがるのではという問いに対し、児玉さんは、「当初は果物や農作物の被害を減らす目的だったが、調べるうちに動物の食害がある事が判明した。とはいえ自身も東北出身で動物を“害獣”という言葉で片付けるのは疑問があった。そこで考え方を変え捨てられる動物を一頭でも減らし、山の恵みとしてありがたく活用する考えに辿り着いた。」と回答。マネタイズよりも地域活性を優先した考えに協賛企業も感銘を受けていた様子でした。
また今後のビジネス展開として、シカだけでなくゆくゆくは熊などの重量に耐えきれるリフトの開発も行っていきたいと答えており、いち大学生ながらそのビジネスプランと想いは非常に考え抜かれた内容でした。
2.『ライブ直後の感動を共有し合えるメタバース上のオタク・コミュニティ事業』/チャン5
続いてはチームメンバー全員がアニメオタクから構成される「チャン5」。発表者の谷口さんも、当日キングダムのロングTシャツを着用し、会場は一気にオタクへの関心が高まった状態で発表がスタート!
アニメオタクにはライブ直後やグッズ販売などの興奮ポイントがあり、そのタイミングでオタクはその興奮を誰かと共有したい、話したいという気持ちになる。一方で、オタクという気質の特徴として他の人に話しかける事のハードルの高さを課題としてあげられていました。構成員全員がオタクであるからこそ、より説得力のある課題だと感じました。
そこでその課題を解決するためのサービスとして、メタバース空間を作成し、会話をサポートするアバターを導入することで、オタク同士の会話を障壁なく盛り上げるというビジネスプランを提案。
収益を得るためのポイントとしては、過去の映像やテキストなどのログ、アバターや声のカスタマイズ課金、ガチャの3つを現時点で想定。
チャン5は、この事業の一番の強みとして、事業を行っていくメンバー全員がオタクである事を訴求。自分たちがオタクであるからこそ誰よりユーザーの気持ちがわかる。そこに寄り添ったサービス提供を行っていける事であることを挙げ、審査員も強く共感していました。
3.『居酒屋キャッチのDXサービス』/Catchee
Z世代の気持ちが分かる事を強みとした「Catchee」。当日、急にその場のテンションで飲みに行きたい!となる若者の居酒屋探しを助けるサービスの提案。
“急に飲みに行く事になったけれど、当日だとなかなか入れる店が決まらない...”
この記事を読んでいる多くの学生さんも1度は経験があるのではないでしょうか?
お店側も同様に、当日のキャンセル等が入ると席を埋める手段がないという実態があります。
そんな時、頼れるものがキャッチ(違法)という歯がゆい想いをアプリ化によって合法へ変えるというのが、「Catchee」の提案するビジネスプラン。
「Catchee」では、お店の帰り際に次に予約したいお客さんをアプリ上でキャッチして退店、お客さんが次のお客さんを呼び込むという内容。
審査員からは、最初にアプリ上でユーザーとお店のある程度の担保を指摘され、そこについては課題として残ったものの、学生ならではのアイデアであった事、サービスとしてあったらいいなを具現化していた事について、高く評価されていました。
4.『シニア向け完全栄養食ブランド 「ME TIME」』/株式会社LacuS
続いて登場したのは、大学に所属しながら既に起業を行っている古津さん率いる「株式会社LacuS」。
提案されたビジネスプランは、高齢者をターゲットとした完全栄養食ブランドの展開。その中でも今回はファーストプロダクトとなるアイスクリームのプレゼンテーション。アイスクリームのコンセプトとしては、「"とる"に寄り添うアイス。」というもの。
高齢者は年々固形物を飲み込む事や、栄養摂取が難しくなるという課題に対し、株式会社LacuSの提供するアイスクリームは、厚生労働省の摂取基準を全て満たす完全栄養食を実現。当日は、実際のアイスクリームを持ち込んでおり、審査員に提供しながらプレゼンを実施していました。
プレゼン後の審査員からの質疑応答の時間では、アイスクリーム自体の美味しさを高く評価され、高齢者というターゲットの他に、息子世代、ダイエットを考えるユーザーもターゲットとなり得るという期待の声があがっていました。
5.『モバイルボトリングサービスによる蔵元支援と清酒の輸出促進』/うぶごえ first breath
前半戦のラストを務めたのは、早期リタイアの後、現在大学院へ通っている齋藤さんの発表。
齋藤さんは仕事柄、美味しいワインを求めて欧米に行く機会がよくあり、そこで商品が消費者の手元に届く流れに対し、賞賛と対価が還元される循環をしている事を目の当たりにしていたそうです。そこで改めて日本の酒蔵に目を向けたとき、酒造りは地方の重要な産業の一つであるにも関わらず、毎月約3件の酒蔵が廃業している事実がある事を知ったそうです。清酒はワインに比べて成分上持ちが悪い事が要因の一つである事から、齋藤さんが目を付けたのは製造工程でした。
そこで「うぶごえ first breath」として発表された今回のビジネスプランは、モバイルボトリングサービスというもの。具体的には、トラックに最新の瓶詰め機を乗せ、酒蔵に出向いて瓶詰めを代行するという内容。
サービスのメリットとして、酒蔵側は設備投資の圧縮と低コストでの高品質な瓶詰めを可能とすること、消費者はいつでもどこでも生まれたての美味しいお酒を楽しむ事が出来ることを訴求。
さらに、事業の大きな推しポイントとして、得た利益を酒蔵と分け合い、酒蔵の経営改善の力となる事で日本の産業と文化を次の世代に継承していく想いを発表し、プレゼンは終了。
審査員から付加価値となる“味”について質問を受けた際は、「生酒の賞味期限は約1ヵ月と言われているが、消費者の手元に届く際は既にその期限は切れている。実際に酒蔵に行くと普段飲んでいるものと味も香りも全く違う。」としっかり訴求ポイントとして説明できる事を伝え、今後の展開に期待感の膨らむ内容となっていました。