「答えがない課題に対してどのように取り組むか」研究開発職の面白さとやりがい【ミズノ株式会社】
2010年新卒入社
所属部署:グローバル研究開発部
経歴:バイオメカニクスの基礎研究、競技者や一般生活者のアパレル/用具/シューズの企画研究開発を経験。バドミントンの海外事業促進を経験。 現在はユーザーのブランドロイヤリティ、従業員エンゲージメントを研究しながら、イノベーションセンターの設立に関与。
「将来の“なりたい自分”がまだわからない」ーーそんな悩みを抱えるみなさんに、さまざまな企業で活躍する先輩たちの姿を通してロールモデルを見つけてもらう企画「#先輩ロールモデル」。
今回は日本の大手総合スポーツ用品メーカー「ミズノ株式会社」で働く先輩社会人にインタビュー。研究開発職として活躍する串田啓介さんに、学生時代のお話や現在の仕事内容、やりがいなどについて伺いました!
――どのような学生時代を過ごしていましたか?
大学では工学部に所属していました。毎日カリキュラムがパンパンに詰まっていて、講義に出席、実験、レポートを提出、試験を受けて……とかなり忙しい学生時代を過ごしていましたね。
私は工学部の中でも機械工学を専攻していました。ロボットのシステムを組むことや、動かしたときの物理現象がどうなるのかなど、分かりやすく言うと、ロボットの設計を通して「目に見える・見えない動き」を研究していました。子どもの頃から実験をしたり、知らないことを調べて伝えたりするのが好きだったため、忙しい毎日でしたが非常に楽しかったです。
研究以外では、さまざまなスポーツを体験できるサークルに所属していました。私は中学・高校とテニス部に所属していたので、テニスについての企画を考えて部員に体験してもらうこともしていましたね。
――充実した学生生活ですね。就活では研究職を目指して活動していたのでしょうか?
はい。大学時代の研究で得た経験や知識を活かしたいと考え、研究職や開発職での採用を目指して活動をしていました。ただ業界は幅広く見ていたのですが、私が特に興味を抱いていたのが「企画」や「自分の考えを提案して形にすること」。そのため、あまり大きな機械についてはなかなか興味が持てず、スポーツ用品や携帯電話など、より暮らしに身近な業界を目指して活動をしていました。
――ミズノに入社を決めた一番の理由を教えてください。
「興味が尽きない」と思ったからです。大学時代にさまざまなスポーツを経験して、スポーツの楽しさや奥深さを実感していました。仲間と一緒に汗を流して活動する時間は、暮らしの中で非常にいい働きをもたらしてくれます。初めて会った人や言語が違う人同士でも、スポーツを介して繋がれた経験がありました。
ミズノは総合スポーツ用品メーカーであるからこそ、あらゆるスポーツ用品に携われる上に、想像もできない感動や経験ができるだろうと思いました。そういった“興味が尽きない点”が一番の決め手となりましたね。
――就活前にやっておいて良かったことはありますか?
新しい分野に飛び込んだことです。例えばサークルでは「ボッチャ」のような当時はまだ馴染みがなかった競技を行うこともありました。「やったことがないから参加しない」ではなくて、「やったことがないからこそ飛び込んでみよう」と挑戦したことで、新しい視点が生まれたり、人脈が広がったりしました。勇気を出して飛び込んだ経験は、就活中にも力を与えてくれましたね。
――現在の仕事について教えてください。
分かりやすくお伝えすると「シューズの研究」をしています。シューズの機能性がどのように発揮されて、ユーザーの方々が体験できているのか」ということを、定量で示せるような仕事を担当しています。
もう一つ研究者目線で担当しているのが、ユーザーや従業員を含めた「心の研究・計測」です。ユーザーのブランドロイヤリティ、従業員のエンゲージメントを測るために、「ミズノのブランドが好き」「ミズノで働き続けたい」という気持ちがどのような要素で上がったり下がったりするのか、またそれらを定量評価できないのかといった研究を行っています。
最近では今秋完成予定の、スポーツによる社会イノベーション創出を目指した新研究開発拠点「イノベーションセンター」の設立にも関与しています。
――研究開発職の仕事の面白さについて教えてください。
「人の体には多くの物理現象がある」と知れることです。普段何気なく使っている体でも、使い方・使われ方で、一つの学問が成り立つくらいに深掘りができるんです。筋肉の動きや骨の役割など、体には不思議が多くあり、そのどれもが奥深い。研究するたびに面白さを感じていますね。
もう一つはミズノならではになりますが、さまざまなアスリートの方と接する機会が多いところです。インタビューをしたり、商品を着用していただいたときの効果を検証したり、コミュニケーションを取りながらお仕事をさせていただく機会は、ミズノの研究職ならではの面白さだと思います。
――例えばドラマで、選手が商品を着用し器具をつけてランニングマシンを走るといったシーンを見ますが、まさにあのようなイメージでしょうか?
はい。選手だけではなく従業員が着用して検証する機会も多いです。私がこれまで一番大変だったのは、「このウエアを着て2時間歩き続けてください」というもの(笑)。このような経験を仕事を通してできるのも、面白さの一つです。
――印象に残っているエピソードを教えてください。
ある時期に子ども向けの「キッズシューズ」の研究開発を行いました。当時ちょうど私に子どもが生まれたタイミングで、子どもと一緒にどのようなシューズがいいのか考えたり、試作品を履かせてみたりなど、一緒に設計をしていました。
商品になるまでは約2年かかるのですが、その間に成長した子どもがまた違う動きができるようになるので、再度試させてもらうこともありました。出来上がったシューズを見たときに、まるで“家族みんなで作ったシューズ”だと感慨深く、非常に印象に残っています。
――この仕事のやりがいを教えてください。
誰かの笑顔に繋がることです。例えばスポーツ用品を使ってくれたアスリートが「チームで優勝しました」「新しい記録が出ました」などと報告をしてくれたときは非常に嬉しいです。
キッズシューズの場合でしたら、「子どもが一人で履けるようになった」「体を動かすのが好きになった」といった話を聞くと、日々のやりがいに繋がっていると感じます。
――今の仕事で求められるスキルを教えてください。
「答えがない課題に対してどのように取り組んでいくか」という姿勢です。研究は答えがなく未知数な部分を開拓していく仕事でもあります。うまく結果が出ないときでも「まずはその状況を楽しもう」とポジティブに考えて、新しいやり方に挑戦していける気持ちが必要だと思います。
あとは、基本的な数学、物理、化学、英語などの知識も必要になってきます。個人的には難しいことを分かりやすく伝える「日本語力」も必須だと感じています。日本語力を高めるためには、読書や有名な研究者の論文を読んでインプットを増やすこと。インプットを増やすと、説明が分かりやすい書き方やまとめ方が身についていくと思います。
――研究開発職の方は、入社後どのようなキャリアステップを歩むケースが多いのでしょうか?
大きく2つあります。1つ目は、入社後は基礎研究に配属されることが多いのですが、そのまま基礎研究を続けて、その分野に深く携わるパターンです。2つ目が基礎研究の分野である程度「計測」や「検証」ができるようになった上で、アパレルやシューズなどの部門の開発職として働くパターンがあります。
担当する業務については比較的希望が叶いやすいと感じています。「いつかこのような仕事がしたいです」と口に出し、真面目に勉強を続けていくと希望のポジションが叶いやすいです。そうなるためにも、「自分のやりたいことに繋がっていくんだ」という気持ちを持って、目の前の業務を続けることが大切だと思います。
――ありがとうございます。最後に学生の皆さんへメッセージをお願いします。
自分と向き合い「これまで何をしてきて」「何が得意で」「何を成し遂げたいのか」をじっくりと考える時間をとってみてください。仮に新卒で希望が通らなくても、いつか自分が思い描いた理想に辿り着ける道というのは、案外多くあると思います。
自分と向き合って見えてきた「やりたいこと」を常に持ち続けながら、学生生活を思いっきり楽しんでください!
文:田中青紗
編集:学生の窓口編集部
取材協力:ミズノ株式会社