永瀬廉「もっと気楽に生きたら絶対楽になるなと思う」映画『真夜中乙女戦争』特別インタビュー
学生のみなさんに観てほしい映画『真夜中乙女戦争』。本作は青春映画史上、恋愛映画史上、犯罪映画史上、“最高に過激で孤独な美しい夜更かし”を描いた物語です。
主演の永瀬廉(King & Prince)さん演じる、大学生の“私”は平凡で退屈な日々を送る大学生。やりたいこともなりたいものもない鬱屈とした日々を過ごす中で“先輩”や“黒服”と出会い、退屈だった日常が静かにきらめき出していく。
劇中で出てくる言葉の数々はきっと“私”と同世代であるみなさんの心に深く突き刺さるでしょう。
今回は本作で主演を務めるKing & Prince永瀬廉さんに、映画や恋の話、“私”と同じようにいろんなことを抱え悩む方に向けてアドバイスをいただきました。
今“私”と同じ境遇だなと共感できる部分も多かった
ーー原作や台本を読んで、どんな印象を持ちましたか?
お話をいただくまで原作は読んだことがなかったので、「真夜中乙女戦争」というタイトルを聞いて、女の子がいっぱい出てくる物語なのかなというのが第一印象でした(笑)。読んでみたら僕が想像していたものと違い、とても重くてダークな雰囲気を持っている作品だなと。でも「こういう時期、あったな〜」と年齢を重ねてから読んでも懐かしい気持ちになれたり、今“私”と同じ境遇だなと共感できる部分も多い作品なのではないかなと思いました。
ーー永瀬さんはどんなところに懐かしさを感じたり、共感しましたか?
僕の場合は共感が多くて、“私”と同じように自分と周りを比べてしまったり、孤独感や閉塞感という部分も描かれているので、いろんな“私”の感情にのっていけるなと思いました。ただ理解するのには時間がかかり、台本を読んでも一回ではなかなか理解できなかったです。最初は『真夜中乙女戦争』の世界観を感じて、そこから考えていきました。やはり難しかったです(笑)。
ーー黒服を演じた柄本佑さん、先輩を演じた池田エライザさんとの共演で、印象的なシーンを教えてください。
「死ぬほど暇ですが、僕の内側は死ぬほど忙しいです」というセリフがあるのですが、台本を読んだとき、「これはどう言おうかな」とすごく悩んでいました。“私”らしいなとは思っていたのですが、今後一生言うこともないような言い回しだなと。いざ本番を迎えたら、それまで“先輩”と2人で芝居してきたこともあり、その台詞が自分の中でナチュラルに出たんです。どう言おうかなという意識もなく、普通に“私”と“先輩”の会話として成り立った感じがしました。“先輩”という魅力的な人物に“私”だけじゃなくて、僕の内側からも惹かれるものがあったのかなという感覚になったのを覚えています。あとはLINEを聞くシーンや、最後の2人でのシーンもそうですが、“私”の話の内容に対等についてくる人物がいなかった中で、“先輩”も負けじと“私”の言葉遊びにのってきたので、そういうシーンは印象に残っています。
柄本さんとのシーンでは、ボーリングに行ったあとに「どうして僕の居場所がわかったんだ」と歩きながら聞くところです。そこで“黒服”は「人間は人生において必要なタイミングで必要な人物に会えるんだ。お前に会うこともできた」と言って、僕の顔を覗き込んでくるんです。言いながら見るんじゃなくて、大げさに覗き込んでくるあたりが“黒服”っぽいというか、すごく印象に残っていて。それを伝えたら柄本さんも「そこ、俺も印象に残っている」と言ってくださって、あの場面はセリフとかではなくシーンごと残っているんですよね。
“私”が“先輩”にしたのは、ひと目で恋するようなひと目ぼれ
ーー“私”は“黒服”と“先輩”のどこに惹かれたと思いますか?
“黒服”は“私”が持ってないものを全部持っている、なりたかった自分の最終形態のような感覚で、自由に生きて好きなことをして、カリスマ性もある。自分が言ってほしかった、心のどこかで求めていた言葉をくれて、どんどん自分の中に土足で踏み込んでくるので、そういう人がほしかったという部分もあると思います。
“先輩”は大学生活で、自分がなりたかったであろう人物像。でも“先輩”を知っていくにつれて、自分と似ている部分があるというのをどんどん知っていき、より心の距離が近くなって時間が増すごとに好きになる。気づいたら好きになっていたみたいな意味の“惹かれ”だと思います。だから面接のシーンで多分一目惚れはしていたのではないかなと。自分の中で認めないような、この感情は何なんだろうとわからず、悶々としていたのだと思います。
ーーそれぞれとの関係性は、永瀬さんにはどう映りましたか?
不思議ですよね。“黒服”は自分のやりたかったことを成し遂げようとしていて、でも“先輩”は守りたい。内のものをほぐしてくれたのは“先輩”で、開放したのは“黒服”という違いなのかなと思います。でも“黒服”のようにここまで自分を変えてくれる出会いや、“先輩”のようなひと目見ただけで心がグッと持っていかれることは、人生において本当に片手におさまるぐらいしかない。そう考えると運命的な出会いで、2人とも出会うべくして出会ったのだと思います。
――ちなみに、永瀬さんは一目惚れはしたことありますか?
小学生の頃にありましたし、“私”の気持ちもそういうひと目で恋しちゃった感覚に似ていましたね。
俺も負けないでいようという気持ちを内に秘める
ーー昨年「おかえりモネ」で演じた亮も、今回の“私”も心の中にいろんなものを抱えていました。そういった役が続いたことで、役者としてやりがいを感じた部分はありますか?
全部違うキャラクターですし、抱えているものも違うので、どの作品でもやりがいはあります。この人物はこういうことで悩んでるのか、という演じることへのワクワクはだんだん大きくなっているのを感じますね。どんなキャラクターを演じられるのかが一番の楽しみかもしれないです。
ーーKing & Princeのみなさんも映画やドラマ、舞台で主演を張られていますが、刺激を受けたり、参考にすることはありますか?
岸(優太)さんはJr.の頃から演技の経験が多かったので話を聞いたり、僕が初めて主演した『うちの執事が言うことには』では神宮寺(勇太)とも読み合わせをしました。最近はお互いの作品を見て、すごかった、俺も負けないでいようという気持ちを内に秘めることが多いと思います。
もっと気楽に生きたら絶対楽になるのになと思う
ーー大学生の“私”から見ると、永瀬さん自身はすでに社会に出て働いている先輩ですが、いろんなことを抱え思い悩む“私”、そして“私”のような方に対して、メッセージやアドバイスしたいことはありますか?
もっと気楽に生きたら絶対楽になるのになと思います。“私”はいろんなことに対して余裕がないですし、物事に対して素直になれなくなっていて、そこも実は共感したところでもありました。僕の場合は背負い込むとどうしても変なところに力が入って、逆にリラックスしているときのほうが力を発揮できたと思うことがあったので、気楽にというのを伝えたいです。
ーー永瀬さんは今、少し余裕を持てているのでしょうか?
どちらかというと、硬かったものがほぐされていきつつあるという感じです。やはり楽しく仕事したいじゃないですか。もちろん頑張るときは頑張るのですが、基本は気軽に、もっとフラットな気持ちでいればいいんじゃないかなということに気づきました。
ーー2021年は今まで以上により忙しかった一年だったと思います。2020年と今の自分を比べてみて、変化を感じることはありますか?
確かに2021年は多分、人生で1番忙しかったのではないかなと思います。作品を抱えながら同時進行で、24時間テレビもあり、シングルやアルバムの製作やグループの打ち合わせも多かったです。それだけ仕事をしていたので、気軽にということにも気付けたのかなと思います。仕事がたくさんあったからこそ、リラックスできたのかもしれません。例えばテレビ番組に出演するときも、宣伝しなきゃ、いいところを見せなきゃというプレッシャーを感じるのではなくて、その番組自体を楽しむという1番大事なことを掴みかけている感覚はあるので、そこが変わりました。
ーーお忙しい中で自分を見失うことはないですか?
“私”もそうですが、やはり夜寝る前にいろいろ考えたりもします。でも“私”ほど悩んだりはしないかもしれないです。誰かに頼ったりもしますし、友だちなどの心の支えがいっぱいあるので、僕は辛いなと思ったことは全然なかったです。
PROFILE
永瀬廉(King & Prince)
1999年1月23日生まれ、東京都出身。
2018年5月にKing & PrinceとしてCDデビュー。2019年に映画『うちの執事が言うことには』で映画初主演を務める。『弱虫ペダル』(20/主演)では第44回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞を受賞。その後も連続テレビ小説「おかえりモネ」で主人公の幼なじみ及川亮を熱演。現在はドラマ「わげもん~長崎通訳異聞~」(毎週土曜放送)に出演中。冠番組「King & Princeる。」毎週日曜放送。
映画『真夜中乙女戦争』
1月21日(金)全国公開
4月、上京し東京で一人暮らしを始めた大学生の“私”(永瀬廉)。友達はいない。恋人もいない。大学の講義は恐ろしく退屈で、やりたいこともなりたいものもなく鬱屈とした日々の中、深夜バイトの帰り道にいつも東京タワーを眺めていた。そんなある日、不思議な魅力を放つ凛々しく聡明な“先輩”(池田エライザ)と人の心を一瞬で掌握してしまうカリスマ的な魅力を持つ男“黒服”(柄本佑)と出会い“私”の日常は一変。“黒服”に導かれささやかな悪戯を仕掛ける“私”。さらに“先輩”とも距離が近づき、静かに煌めきだす“私”の日常。しかし、次第に“黒服”と孤独な同志たちの言動は激しさを増していき、“私”と“先輩”を巻き込んだ壮大な“東京破壊計画=真夜中乙女戦争”が秘密裏に始動する。
痛々しくも眩しい物語は予想不可能なラストへと加速していく。
永瀬 廉(King & Prince)
池田エライザ
篠原悠伸 安藤彰則 山口まゆ
佐野晶哉(Aぇ!group/関西ジャニーズ Jr.) 成河 / 渡辺真起子
柄本 佑
ⓒ2022『真夜中乙女戦争』製作委員会
取材・文/東海林その子
編集/学生の窓口編集部