イベントレポート後編『ITスキルで年収1000万が普通になる?世界トッププログラマーに聞くこれからの仕事』プログラミングは就活で役に立つの?
2020年12月10日(木)にAtCoder株式会社の代表取締役社長、高橋直大さんをお招きして、マイナビ学生の窓口の会員限定で実施したイベント『ITスキルで年収1000万が普通になる?世界トッププログラマーに聞くこれからの仕事』のレポートをお届けします。
本記事では、後編の【プログラミングは就活で役に立つ?】【視聴者からの質問】のまとめを紹介します。イベントに参加した方はその振り返りとして、参加できなかった方は内容を参考に自分の仕事との向き合い方を考えてみてください。
お話してくれるのはこの2人

高橋直大さん
AtCoder株式会社/代表取締役社長
「AtCoder(アットコーダー)」というプログラミングコンテストを自身で立ち上げ、企画・運営を行っている。2008年、マイクロソフトが主催するプログラミングコンテストで世界3位になり、それ以降も頻繁に世界的なコンテストで上位ランクを記録している。
書籍『最強最速アルゴリズマー養成講座』
著者Twitter:@chokudai
【AtCoderとは】
世界三大競技プログラミングコンテストに名前を連ねる、日本発のコンテスト。全世界のトッププログラマーたちが日々技術を競い合っているだけでなく、「AtCoderJobs」という、コンテストのレーティングを活用した採用プラットフォームにも手を広げている。

インタビュアー しゅんダイアリーさん
株式会社Diary代表取締役/金沢大学在学中
就活ユーチューバーとして活動中。大学2年からYouTubeを始め現在金沢大学4年生でチャンネル登録者数は3.9万人。就活インタビュー企画ではこれまで50社以上に取材を行ってきた。昨年クラウドファンディングで120万円を集め、株式会社Diaryを設立。企業の採用支援や動画PRを行っている。
Twitter:@shundiary0817
YouTube:しゅんダイアリーshundiary
目次
1.就活でITスキルはどうアピールすればいいの?
2.そもそも「AtCoder」って何? 文系でもできる?
3.当日寄せられた学生からの質問
就活でITスキルはどうアピールすればいいの?
英語でいうTOEICのように、ITスキルの世界で就活で使えそうな判断基準はあるんでしょうか?
まさに「AtCoder」がそうですが、AtCoderをやっている人はまだそこまで多くないし、面接官にも明確な判断基準を持っていない人はたくさんいます。TOEICと比べると明確な判断材料ないので、そこは変えていきたいと思っています。
技術者はスキルベースやスコアがあると思っていましたが、文系のように面接が行われたうえで採用されることが多いんですか?
プログラミングの能力をどう判断しているかは、会社の新しさによっても全然違いますね。一番ダメなのが、自己申告をそのまま信じる会社。嘘か本当かもわからず受け入れてしまうパターンですね。もう少しまともであれば、今まで作った成果物を持ってこいと言うでしょう。ただ、それだと技術力がすごいのかアイデアがすごいのかがわかりません。
というのも、例えばドラクエみたいな名作と、全然売れていないRPGがあったとします。どっちが面白いかと言えばドラクエですが、それはストーリーやシステムが面白いのであって、プログラミングはどっちが上など、みんな意識しないですよね? 多分、RPGを作っている以上、そこの難易度はそんなに変わらないんですよ。
今、IT技術者の面接では「ホワイトボードコーディング」というものもあって、これは面接の場で問題を出して、ホワイトボードでコードを書かせてエンジニアが採点するというものです。そういうのは割とわかりやすいかもしれませんね。
高橋さんが自社面接で人を見極めるとき、「こういう人と働きたい」という基準があったら教えてください。
技術的な会話が通じる、というのが基本ですね。技術の話をしているときに、一部の単語は知らなくてもいいんです。でも、その単語の説明で使う別の単語すらわからないとなると、さすがに説明のしようもなくなってしまいますから。
IT技術者を目指すのか、ITを武器に普通の総合職を目指すのかで話は全然違いますが、IT技術者なら、開発に必要な単語の意味はわかっていてほしいと思います。
最新技術を持っている必要はありませんが、せめてIPA(情報処理技術者試験)の試験に出る単語が通じると、安心感も出てきますね。
文系の場合はまた別です。文系の人がITスキル持てば、他の人が手作業でやっていることをコンピュータで済ませられるかもしれません。
例えば理系の人が文章を書くと、句読点がピリオドやカンマだったりするのですが、これを直せと言われたときに、一文字ずつ直していたら大変ですよね。でも、テキストエディタで置換できることを知っていれば、すぐに終わります。手作業と違い、ミスもしません。
そもそも「AtCoder」って何? 文系でもできる?
簡単なITスキルでも、普段の業務の効率化に活かせるということですね。ところで、AtCoderは誰でもすぐに始められるのでしょうか?
その説明の前に「AtCoderって何やねん」というところからお話ししておきましょう。AtCoderは日本のプログラミングコンテストのサイトで、アメリカ、ロシアのサイトと並ぶ、世界3大プログラミングコンテストのひとつです。ユーザーも増えていて、大体この1年で倍増し、日本人だけでも10万ユーザーを超えています。
プログラミングコンテストとは、問題をどれだけ早く、正確に解けるかを競う、アルゴリズムの開発コンテストのことです。
アルゴリズムは「物事の手順」みたいな意味ですね。与えられた問題のアルゴリズムを考え、プログラムを書き、提出する。そうするとプログラムが合っているかどうかが自動採点され、1位から1万位くらいまでの順位がつくようになっています。どんな問題が出るかというと、こんな感じです。
問題例1のほうはモロに数学という感じで、問題例2はもっと実務的な感じですよね。
AtCoderには理系の大学生がたくさん参加していて、今のところは東京大学や京都大、東京工業大学、早稲田大学、大阪大学など、優秀層に偏っているという特徴があります。
実はグーグルやフェイスブックなどもプログラミングコンテストを開催しているのですが、やはりプログラミングコンテストで上位に入ると、そうした世界的企業に入社しやすいというメリットもあります。AtCoderに参加しているプログラマーたちは、IT企業はもちろん、メーカーや金融系、通信系にも多く、みんなレベルの高いところにいます。
ちなみに、AtCoderのレーティング(格付け)がプログラミングスキル評価のデファクトスタンダード(事実上の標準)になっていて、スキルのレベルによって色分けされています。
最近のイケているIT企業だったら「あなたは何色?」と聞いてくるので、「何色です」と返すだけで実力がわかってしまいます。「TOEICの何点台」と似たような感じですよね。
文系の人でも、試しにコンテストに参加することもできるんですか?
AtCoderは「ライトなプログラミングコンテスト」を目指しています。事前準備は必要ですが、「AtCoder Programming Guide for beginners」という教材を使えば、プログラミングがわからない状態からAtCoderの問題が解けるレベルにまでなります。
AtCoderで高順位を取れたら、エンジニア系じゃなくても就活の際のアピールになりますか?
なります。文系の人が「AtCoderをやっています」と言えば、「何それ?」と聞いてもらえるので、ここで自分のスキルをアピールできますし、IT系と違い、これをアピールする人が少ないから武器になります。実用的ですしね。
先程、文章内のピリオド、カンマを句読点に変える、という話をしましたが、もうちょっと複雑に、例えば「文章に出てくる整数について、単位を間違えちゃったから全部10倍にしたい」となった場合、テキストエディタでは無理です。でも、プログラミングに慣れていれば、1分や2分でできちゃいます。
採用する側からしたら、そういう人材が社内にいるだけで作業が効率化されますよね。文系の人もプログラミングはネタにもなるし、そのことで入社後も活躍できるかもしれませんね。
まさに、そのとおりだと思います。
当日寄せられた学生からの質問
知れば知るほど奥深いプログラミングの世界。でもプログラミングに慣れた人が増えすぎれば、長所にはしにくいのでは? ここからは、そんな疑問に答えた質疑応答コーナーの模様を【会員限定公開】でお届けします!