大学生におすすめしたい、ファンタジー小説20選! 3ページ目
大人になる前に読みたいファンタジー小説
ファンタジー小説10『魔女の宅急便 それぞれの旅立ち』角野栄子 ~大人になったキキが抱えるもの~
ジブリの映画作品でご存知の方も多い『魔女の宅急便』。これまでシリーズ5作が刊行され、2009年に最終巻『それぞれの旅立ち』が刊行されました。作品の中で、キキは男女の双子に恵まれ、母として奮闘しています。「魔女」になりたいと願うキキの息子と、魔女になるべきか迷う娘。「家族」とは、「血」とは、について考えさせられる物語です。
ファンタジー小説11『ピーター・パン』J.M.バリ ~こどもでいつづけることの難しさ~
ディズニー版では子供達が冒険に夢中になっていますが、原作ではピーター・パンの純真無垢さがより際立って描かれています。両親が自分の将来について話しているのを聞いて「大人になりたくない」と逃げだしたピーターはネバーランドで暮します。「永遠のこども」であるピーターが叫ぶ、大人への怒り、嫌悪。大人になる前と後では感じ方が変わるファンタジー小説です。
ファンタジー小説12『びりっかすの神様』岡田淳 ~びりってそんなに悪いこと?~
クラスでテストの点などが「びり」だったときに見える翼を生えた小さな少年。「びりっかすの神様」と言われるこの小さな少年に会うために、クラスのみんなが「びり」を目指します。社会に出ると、右を見ても左を見ても競争社会、という状況に何度か出会います。「比べること」や「自分の基準」に迷いが出たとき、この本を手に取ってみてください。
ファンタジー小説13『ローワンと魔法の地図』E.ロッダ ~臆病のままでも、前に進める~
村の川が枯れてしまい、世話をしている家畜を助けるために、主人公のローワンは5人の仲間達と竜の住む山へ向かいます。冒険や退治のお話となると、男性ばかりが登場しますが、このお話は3人の男、3人の女が竜の元へと向かいます。魔法を使わず、自分達の力で立ち向かうところもこの物語の魅力です。
ファンタジー小説14『空飛び猫』アシューラ・K・ルグウィン ~逃げるために羽を生やした猫が選ぶ道~
ゴミ箱で生まれた子猫達には、羽が生えていました。きっと注目を浴びてしまう、と考えた母さん猫は、子供達に町から離れるよう諭します。母親は「普通」でも、子供も「普通」で生まれるとは限りません。そのとき、母親はどう接するべきか。たくましく生きる彼らをほほえましく見つめながら読むことができます。
ファンタジー小説15『ナルニア国 朝びらき丸東の海へ』C.S.ルイス ~己に打ち克つということ~
『ナルニア国ものがたり』のシリーズ第三巻です。ルーシーとエドマンドはいとこの家でナルニア国と繋がり、カスピアン王子と再会します。行く先々で「心の災難」に出会う彼ら。負の誘惑に弱いエドマンド、目先の欲に駆られるいとこのユースチス……いつだって敵は自分の心にいる、ということを教えてくれるシリーズです。
ファンタジー小説16『ニルスのふしぎな旅』セルマ・ラーゲルレーヴ ~いたずらっこの成長物語~
いじめっ子のニルスは、妖精を捕まえようとして魔法をかけられ小さくされてしまいます。家畜から復習を受けそうになったニルスは、ガチョウにつかまり、空の冒険へと飛び立ちます。狭い世界でいじめることしか楽しみを見出せなかった少年が、広い世界を旅して多くのことを学ぶ、成長物語です。
ファンタジー小説17『モモ』ミヒャエル・エンデ ~時間泥棒にご用心~
孤児のモモは、「傾聴」が得意な女の子で町の人から愛されていました。ところが、「効率よく動けば時間が確保できる」とうそぶく「時間どろぼう」が現れ、人々はモモと過ごす時間を減らし、どんどんと時間に追われるようになります。時間とは決して効率だけ重視すればいいというものではありません。「待つ」こと、「熟考すること」もまた大切なのだ、と気づかせてくれるファンタジー小説です。
ファンタジー小説18『小さなスプーンおばさん』アルフ・プリョイセン ~あら、大変。まあいいか、の精神~
ある日突然、何の前触れもなく小さくなってしまうスプーンおばさん。でも慌てません。小さくなったら、小さくなったなりにできることはあるはず、と主婦らしくてきぱきと物事をやってのけてしまいます。どんなときも悠然と構えてユーモアに問題を解決するおばさんに勇気をもらえるお話です。
ファンタジー小説19『ハリー・ポッターシリーズ』J.K.ローリング ~すべては最終巻で明かされる~
一時代を築いた21世紀の傑作ファンタジー小説。平凡な少年が魔法使いだった、という楽しいファンタジーかと思いきや、さまざまな夫婦の愛があり、さまざまな親子の愛があり、男女の愛がある……登場人物ひとりひとりの「愛」の形を、全編に伏線を張りながら丁寧に回収しており、最終巻では報われない愛を貫いたひとりの男が中心となって語られます。ぜひ学生のうちに読んでもらいたいシリーズです。
ファンタジー小説20 『チョコレート・アンダーグラウンド』アレックス・シアラー ~投票に行かないとチョコが禁止に~
選挙の投票に行かなかった結果、チョコレートを禁止する法律ができてしまった世界を描いています。チョコレートを持っているだけで収容所に連行される人、原料は捕まらない、と密かにチョコレートを作り密売する少年達……選挙によって生活が変わるのは子供達も同じこと。これを読むと、選挙に対する思いが変わるかもしれません。
ファンタジー小説は、主に子供達に向けて書かれています。大人達が「子供達に伝えたいこと」を子供達に伝わるよう、時に楽しく、時に怖く、夢中になってもらえるように書かれています。実用書やビジネス書に疲れてしまったら、ファンタジー小説で息抜きしてはいかがでしょう。かたい頭が、やわらかくなりますよ。
・執筆者:絵ノ本 桃子(ナレッジ・リンクス)
出版取次、図書館などに勤務した後、ライター・出版プロデューサーとして数々の書籍の執筆や企画制作に携わる。現在は親子で読書を楽しむ提案を発信するWebメディア兼本屋 「親子絵本専門店NanuK」を運営している。