【連載】『あの人の学生時代。』#17:貝印株式会社 代表取締役社長 遠藤宏治「Do my best」 2ページ目
憧れの留学時代に知った、準備することの大切さ
――大学卒業後はいよいよ憧れの海外生活ですか?
はい。ロサンゼルスにある大学のMBA(経営管理学修士号)課程に進みました。予習と復習をしっかりやらないと授業についていけないので、大学の倍以上は勉強しましたね。それでも、授業でケーススタディーなどをディスカッションするときは大変でした。ビジネスでも言えることですが、アメリカ人はとにかくよく発言します。アピールする姿勢が強いんですよね。やはり個人主義というか、「自己」というものをかなり意識し、自分に対して自信を持っています。それは、「自分はどうしたいのか、どうありたいのか」と、つねに自己に問いかけているからでしょうね。
――日本とは文化も考え方も違うので、英語での授業は大変そうですね。
そのため、授業についていくためにきっちり予習と復習をしました。事前にテキストを予習しておくと、授業でも大体の内容を予測できます。これは英語だけの話ではなく、私は仕事でもよく「こと前準備をせよ」と言うのですが、できる限りの準備をしておくことがいい結果に結びつく第一歩だと思いますね。
たとえば、誰か人に会うならその人のバックグラウンドを頭に入れてから会うとか、どんなことにでも通じる大切なことだと思います。準備をしておくと、たとえ意外なことやトラブルが起きても、戸惑うことなくある程度は対応できますからね。
――何事も準備が大切というわけですね。ところで、英語でのコミュニケーションはうまくいったのですか?
やはり大変でしたが、必要に迫られていたので一生懸命勉強しました。会話はもちろんですが、本などは英語で書かれたものには英語の文化や考え方が背景にあるため、日本語に訳すと理解に多少のズレが生じます。そのため、外国の書物はできれば原語で読んだほうが理解は深まるし、英語で書かれたものはやはり英語で理解するという感覚を学びました。
グローバル化が進み、これから外国人とのコミュニケーションに英語は必要不可欠です。学生のみなさんにも自分の思いや人間性を英語で的確に伝える力を身につけてほしいと思いますね。
――それがなかなか難しいんですよね……(泣)。
よく英語を話したいという声を聞きますが、「外国人と話したい」「電話に応対したい」というように、目的が漠然としていることが多いと感じることがあります。目的が曖昧だったり広すぎたりすると途中でやめてしまうことにもなるので、もっと明確な目標を持つようにすればいいのではないでしょうか。
当社でも英会話の研修を行っていますが、たとえば「1年後に海外の見本市で実際に買い付けを行う」というように、目的を具体的に絞り込ませています。そうすれば、1年後によかった点や悪かった点を振り返ることができます。英語力はやはり現場でどれだけ使えるかが大切なので、目的を絞り込み自分らしさを盛り込んでいけば、コミュニケーションは必ずうまくいくと思います。