「いい言葉についていけ」―現役大学生、萩本欽一さんが大学生に伝えたいこと 3ページ目
■大学生活を左右する「人付き合い」
――1年間通ってみて、「これは面白いな」と感じたことは他にありますか?
萩本さん やっぱり試験でしょう。そこで学ぶ学習内容の中で社会に出て使えるのはほとんどないけど、その試験に向けて準備することは社会に出ても使える。どんな問題が出るのかも、先生をしっかりと観察して見極めることでわかりますよ。これが「人を読む」ってこと。試験で90点以上取れたものは全て先生を読み切った結果だと思うよ。
――そうしたアプローチで学んでも、より学校を楽しめるかもしれませんね。
萩本さん 興味深かったのは、みんな「友達を作るのが下手!」ということ。お話ができないんだろうね。人と接するときの最初の言葉が見付からないからだと思うけど、もったいないと思うよ。友達がたくさんいるとみんな助けてくれるし、学生生活もずいぶん楽になったよ。だから何かと悩んでいる人は友達が少なかったりする。
――友人を作ることは大事ですが、やはり作り方がわからない人も多くいます。
萩本さん 一番いいのはね、「自ら損をすること」です。損をするやつってみんな大好きだよ。だって得をしようとするやつは好きにならないでしょ。分かりやすいのだと「食事で多めに出す」なんてのはいいよね。だって周りはうれしいもの。人は集まってくるよ。だけど損なら何でもいいんじゃなくて、どの損をすればいいか見極めるのも大事だって思う。
――人付き合いに注力するのもいいことでしょうね。
萩本さん 大学は友達だけでなくて「先生」だっているんだから。先生は待っているんだよ。わからなかったら聞けばいいんだよ。でも人付き合いが苦手な子が多いから、なかなか聞きにいけないんだろうね。聞きに行けば会話も生まれるし、そこで物語も生まれるじゃないかって。だって大学の先生だよ。仲良くなれば社会人になっても頼りになるかもしれないし、大学時代の人付き合いって大事だと思うよ。俺も友達をたくさん作って、学校生活を面白いと思って通っているし充実している。若い子たちも何でもいいから足跡を残せばいいと思うよ。
■面白くないことを面白くする考えが大事
――学内の友人など、若者たちとの交流で何か感じたことはありますか?
萩本さん さっきの友達作りもそうだけど、「将来何をしようと思っているか計画がない子が多い」ということも感じたね。「もったいない」って気がした。
――夢がない……のでしょうね。
萩本さん ただね、中にはしっかりとした考えをもっている子もいて、例えば「私、介護とか幼稚園とか人をお世話する仕事がしたい」という子がいたの。その子にね「最高だね、あんたが先生になったら子供たちの人気者になるし、ばあちゃんの面倒見たらみんなから慕われるよ」と言ったらその子うれしかったみたいで泣き出しちゃったのよ。たぶん彼女のやりたい仕事に対して周りの大人が反対なりしたんじゃないのかと思う。そのときにね、今の大人と大学生くらいのまだ子供の世代の価値観がずれてるなって気がした。
――萩本さんに認められてうれしかったのでしょうね。
萩本さん 他にもね、4年生でしょんぼりしているのがいて「就職決まってないんだ」って言うんだよ。そいつにね、「俺はいろんな名人に話聞いたけど、やりたくてやった人はほとんどいなかった」って話をしたのよ。名人って呼ばれる人たちも最初はしたくなかったけど、「今は幸せだ」って言うの。「俺の統計だとね、その仕事が好きで始めたやつよりも、好きでもない仕事を好きになった人のほうが幸せだって言っている率が高いように感じるよ」って言ったら、その学生は「就職の幅が広がったよ! 欽ちゃんサンキュー!」って。
――やりたい仕事に就けないことは決して不幸ではないと。
萩本さん そう。やりたい仕事に就けなかったからといってそれでおしまいじゃない。好きでないけど成功した人は世の中にたくさんいる。昔の人はみんなそうだったんだよ。でも違う形で成功してきたんだから。「嫌いな仕事を好きになるように、面白くなるように自分で考える」ってことが大事。どんな仕事でも面白くできるやつはしちゃうんだよ。それが成功する人なんだよ。