近年、フリーランスとして活動する人が増えています。
本記事では「会社員からフリーランスに転身した場合」「会社員をしながら副業でフリーランスである場合」など、各状況に応じた年末調整・確定申告の基本を解説します。
フリーランスには基本的に源泉徴収票がありません。フリーランスや個人事業主で源泉徴収票がある人は、
という人です。
そもそも源泉徴収票とは、給料や報酬を支払う側が税金を差し引いた場合に発行する書類です。
フリーランスへの報酬の中にも源泉徴収の対象になるものがありますが、フリーランスに対しての源泉徴収票に関しては企業に発行義務がないため、発行されないことが多いのです。
そもそも会社員に源泉徴収票を発行しなくてはならないのは、年末調整を行う必要があるからです。会社員の毎月の給与から天引きされている所得税は概算によるものなので、年末調整で再計算を行い、天引きしていた額との過不足を調整する必要があるのです。
フリーランスの場合は、会社から給与を受け取っているわけではないので、年末調整を行う必要はありません。その代わりに、毎年2月から3月にかけて確定申告を行うことで所得税の納付を行います。
源泉徴収の有無に関わらず、フリーランスは確定申告をする必要があります。確定申告の際には帳票を作成する必要があり、作成時は源泉徴収の有無で記載方法が変わります。
ですので、フリーランスは各報酬に対して
を分けておく必要があるのです。
フリーランスに対して発行される書類の1つに「支払調書」(正式名称「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」)があります。
支払調書は、フリーランスに支払われる報酬に源泉徴収が行われている場合に発行されます。事業年の翌年1月までに作成され、報酬金額と支払い済みの税金が記載されています。
支払調書も企業に発行義務はなく、確定申告の際に提出しなくてはならない必須書類でもありません。
発行してくれる企業と発行してくれない企業があるのはそういった事情があるためです。
フリーランスの報酬にも所得税がかかります。
所得税はフリーランスが納めるのではなく、仕事の依頼主が源泉徴収を行い、税務署へ納付する仕組みになっています。報酬がフリーランスの銀行口座などに振り込まれる際は、源泉徴収された状態の金額で入金されるのです。
といっても、フリーランスのすべての報酬が源泉徴収の対象になるわけではありません。
所得税法(所得税法第204条1~8)では、以下の作業により発生した報酬や料金を支払う場合が、徴収対象になると規定されています。
このうちデザイン料に対する報酬は、対象範囲について次のように規定されています。
ただし、上記の範囲に規定されていないWebサイトのデザインなどでも、源泉徴収が必要になる場合があります。
フリーランスでデザインの仕事をする際、報酬に対して源泉徴収がかかるのかどうか疑問に思った場合は、税務署に確認することをおすすめします。国税庁の「国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」も参考になりますので、一読しておきましょう。
会社にはフリーランスに対して源泉徴収票や支払調書を発行する義務がありません。そのため、源泉徴収の対象になる報酬であっても、源泉徴収票や支払調書がない場合があります。
源泉徴収された金額がわからないとなると確定申告の際に困るので、請求書でも源泉徴収額を確認できない場合は、報酬を支払ってくれた企業に源泉徴収額がわかる書類をもらいましょう。
源泉徴収されていない場合は、フリーランスが確定申告をして納税します。
通常の帳票と同じように、報酬から必要経費を引いて申告するようにしましょう。
報酬の支払を税引き後の手取額で契約している場合の源泉徴収金額の計算方法を紹介します。
簡単に紹介するとこのようになります。
少し複雑になりますが国税庁の「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」を引用するとこのようになります。
ーーー
手取額÷0.8979=支払金額(報酬金額)
※0.8979=1-10%×102.1%
(手取額が897,900円超の場合に限ります。)
(手取額-102,100)÷0.7958=支払金額
※0.7958=1-20%×102.1%
※二段階税率は、支払金額が100万円を超える場合に、100万円までは10.21%で、100万円を超える部分が20.42%の税率になります。
支払金額:100,000円÷0.8979=111,370円
源泉徴収税額:111,370円×10.21%=11,370円 (1円未満の端数は切り捨てます。)
手取額:111,370円-11,370円=100,000円
(引用:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」)
(太字や見出し表示は著者によるもの)
ーーー
二段階税率とは、報酬金額100万円を基準に税率が異なるというものです。大きな取引をする場合に関係します。
源泉徴収されている場合の注意事項
報酬が源泉徴収されている場合の注意事項を2つ紹介します。
報酬が源泉徴収されている場合、クライアントから「源泉徴収額を記載した請求書を発行してください」と依頼されることがほとんどです。請求書には、消費税とは別に源泉徴収額を記載しましょう。
また、平成49年(2037年、令和19年)までは、源泉徴収税額に復興所得税が含まれます。
先程の計算式
の「0.21%」「0.42%」の部分がそうです。
計算する際に間違えないように気をつけてください。
フリーランスでも個人事業主として専業フリーランスになる人もいれば、会社員との副業や複業をする人もいます。
そこで、年末調整、あるいは確定申告の有無を働き方のパターン別で紹介します。自分の働き方に合わせて、源泉徴収票の発行があるのかどうかを確認してください。
年の途中で会社員からフリーランスに転身した場合、会社員としての給与所得とフリーランスでの所得(事業所得)を合わせて確定申告しなければなりません。
年の途中で会社を退職した場合は、年末調整が行われていない状態の源泉徴収票を、退職後に受け取ることになります。
その源泉徴収票とともに、フリーランスでの所得を合わせて、確定申告を行います。そして翌年以降から、確定申告のみ行います。
前職から源泉徴収票をもらえていない場合は、前職の総務や経理部門に問い合わせて発行してもらいましょう。原則として会社は退職1ヶ月以内に源泉徴収票を発行しなければなりませんし、紛失した場合の再発行手続きにも応じなければいけません。
どうしても発行してもらえない場合は、税務署に相談する形になります。
参考:源泉徴収票が届かない・紛失した際の対処法|再発行する方法を解説
会社員をしながら副業でフリーランスを行っている場合、年末調整と確定申告の両方を行います。
まず会社員での給与所得は年末調整し、源泉徴収票を受け取ります。そして源泉徴収票と合わせて、確定申告でフリーランスでの事業所得をまとめて提出します。
確定申告は2月中旬から3月中旬にかけて行われます。源泉徴収票は通常その年の12月あるいは翌年1月にかけて渡されるので、申告期間に間に合うように並行して準備を進めておきましょう。
翌年以降も副業でのフリーランスを続けていれば、同様に年末調整と確定申告を行います。
年の途中からフリーランスから会社員になった場合も、年末調整と確定申告を行わなければなりません。
手順は副業フリーランスと同様で、会社員での給与所得は年末調整を行います。その後発行された源泉徴収票を持って、フリーランス時代の所得と合わせて確定申告を行います。翌年以降は年末調整のみ行います。
確定申告の必要書類を税務署の窓口で提出する際は、平日の日中が受付になっています。会社員になると、時間的な制約が発生することもあるため、郵送やインターネット申告を活用して、仕事に支障が出ないように確定申告を行いましょう。
フリーランスで源泉徴収票が必要な人は、年度内にフリーランスに転職した人と会社員と副業・複業しているフリーランスです。
全フリーランスがやる必要がある確定申告では、源泉徴収されている報酬とされていない報酬を分ける必要がありますので、自分が受け取っている報酬がどちらのタイプなのかのチェックを怠らないようにしましょう。
(学生の窓口編集部)
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