同期と話が合わなかったらどうすればいい? 『羅生門』の下人によると……【菊池良のお悩み相談室】

2018/11/08

社会人ライフ

新社会人からリアルな悩みを募集し、独自の視点からアドバイスをもらうこの「お悩み相談室」。
今回は、「同期とまったく話が合わない」と悩んでいる人に、面接官に向けた逆採用サイト「世界一即戦力な男」がヒットし、著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)を持つライターの菊池良さんが回答します。

同期と話が合わないイラスト・わかる

Q.同期と話が合わない
同期とまったく話が合いません。たくさん話を振られて、それに答えるのですが、「でも…」と否定をされるため、会話をする気にならないのです。こちらからは仕事以外の話はしないようにしているのですが、話しかけられるのでそれがストレスです。
(24歳、女性、機械・精密機器)




もし芥川龍之介『羅生門』の下人が相談に答えたら……


ある日の暮方の事である。一人の下人が、オフイスビルで仕事をしていた。下人の隣にいるのは、痩せた、白髪頭の、猿のような同僚である。

「おのれ、週末はどこへ行く。」

 同僚は、下人の方を向いて、怨めしそうに睥睨(へいげい)しながら聞いた。肉食鳥のような鋭い眼だった。

 下人は、首をすくめて、地蔵のように執拗く黙っている。同僚は、これに燃えるような怒りを覚えた。

「何をするんだ。云え。云わぬと、これだぞよ。」

 同僚は、太刀の鞘を払って、刃をその眼の前に突き付けた。下人は、大きなあくびをして、退屈そうに立ち上がり、「殺すなら殺せ。」と一言云った。

 そして、下人は、すばやく、同僚のスウツを剥ぎ取った。それから手荒くオフイスビルの下へ蹴落とした。しばらく、同僚が死んだように倒れている間に、下人はスウツをメルカリで売り払うと、またたく間に夜の底へ消えていった。

 下人の行方は、誰も知らない。

下人の悩み相談まとめ


同僚のスーツを売り払いましょう!

そんなわけにもいきません


芥川龍之介の『羅生門』は教科書に載っていることもあり、とても有名な小説です。ある日、下人が羅生門に訪れると、死体の髪の毛を剥いでいる老婆がいる。老婆はその髪の毛をカツラにして売ろうとしていたわけです。
下人はその老婆から、着物を剥ぎ取って逃げる。その後の行方は誰も知らない……印象的なフレーズで終わるので覚えている人も多いと思います。

『羅生門』は老婆と下人を通して、善悪とは何なのかと揺さぶりをかけてきます。死体から髪の毛を抜く行為は、やってはいけないのかもしれない。しかし、それが生きていくために仕方のない行為だとしたら?
あるいは、老婆から着物を剥ぎ取ることは窃盗です。しかし、悪事を働いている老婆に対してなら、因果応報とも言えるのかもしれない。

さて、『羅生門』の下人は、行方をくらませたあと、どこへ行ったのでしょうか。おそらく再就職したことでしょう。そして、就職先で同僚との人間関係に悩んだら、かつてのようにスーツを剥ぎ取って行方をくらませたのではないでしょうか。

しかし、現実的にはそうもいきません。では、何を剥ぎ取ればいいのでしょうか。それは「話しかける時間」です。相手が話しかける時間をなくせばいいのです。
たとえば、話しかけられるのが昼休みならば、話しかけられる前に1人でランチに行きましょう。仕事中に話しかけられるのでしたら、「え?」とまさか話しかけられるとは思っていなかったと戸惑ってから返事をしましょう。

さらに抜本的にやるのでしたら、「話しかける意思」を剥ぎ取ることも1つの手です。「私は仕事以外の話をしない」というアピールをもっとするのです。孤高の人間だというブランディングができれば、話しかける人も自然といなくなります。

しかし、「意思を剥ぎ取る」なんて、そこまでしてもいいのか、と悩む人もいるでしょう。『羅生門』の下人に則って考えるとすれば、話したくない人間に話し続け、ストレスを与える人間にはそこまでしてもいいのかもしれません。

このように、『羅生門』で問いかけられたテーマは日常でも役立つことがわかりますね。
みなさんも、日常生活で悩むことがあったら羅生門の下人を思い出してみてください。きっと、解決の糸口が見つかりますよ。


文・菊池良
ライター、編集者。学生時代に公開した、面接官に向けた逆採用サイト「世界一即戦力な男」がヒット。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著・神田桂一)、『世界一即戦力な男』。
Twitter:@kossetsu


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