社会人は年末年始のバカンス、学生は春休みを活用した長期旅行や卒業旅行を計画している時期ではないでしょうか。海外旅行ではアクティブに観光したいし、名物料理も堪能したい。あわよくば、その国ならではのお手頃価格な掘り出し物も手に入れたい......。さまざまな期待が膨らみますが、悩ましいのはお金の持ち運びです。旅先でいくら使うか定かではないし、かといって多額の現金を持ち歩くのはなんだか不安です。そんな、気になる旅先でのお財布問題についてまとめました。
1.どうやって持っていく?
まずは、旅先でのお金の所持・支払方法にはどんなものがあるか、知っておきましょう。
■現地通貨
旅行中、必ずお世話になるのがその国の現地通貨。入手したら紙幣や硬貨の種類・形などに、なるべく早く馴染むようにしましょう。交通機関や飲料水の購入、チップなど、小額紙幣や硬貨を使う機会は多いので、最初の両替では小銭も織り交ぜてもらうのがいいでしょう。また、次回使う予定がない限りは、確実に使い切れる額だけを持ち、足りなければ追加で入手するのがオススメです。硬貨は余っても再両替ができないので、帰国が近付いたら優先的に使いきりましょう。なお、その国の独自通貨と米ドルやユーロを併用している国もありますが、観光客がよく訪れるような店では大抵、どちらでも支払うことができます。
■クレジットカード
海外で存在意義をぐっと増すのがクレジットカード。ショップやレストランの支払いはもちろん、利用価値が高いのがキャッシング機能です。日本国内なら「キャッシング=借金」のイメージが強くて使うのをためらいがちですが、海外では、必要な額だけ現地通貨で引き出せるので利用価値大です。また、海外損害保険が付帯しているものが多いのも大きなメリットですが、旅行代金をカード払いにしたときのみ適用されるなど、カードにより利用条件・保障内容が異なるので、申込時によく確認しましょう。借入の上限額も、事前に確認したほうがいいでしょう。
■T/C(トラベラーズ・チェック)
現金より良いレートで購入できる旅行小切手で、入手したら上の欄に、支払い時に下の欄にサインをして使います。紛失しても控えの番号で再発行ができるのがメリットですが、署名に多少手間がかかること、カードに比べてかさばること、一部の国以外ではそのまま使えないので結局現金に換える必要があることなどが難点で、かつてより使われる機会は少なくなりました。両替の際、別途手数料がかかるケースもあります。
■トラベルプリペイド・カード
渡航前に日本で必要な額を入金しておけば、キャッシュカードとして現地のATMから現地通貨を引き出せるカード。身分証明書さえあれば、審査不要で手軽に購入できるのがメリットです。また、提携しているショップやレストランの支払いも可能。安全性が高く再発行も手軽ですが、海外でしか引き出すことしかできないので、残高は次回の旅までお預けです。1日の引き出しの限度額が決まっているものもあるので事前に確認しましょう。
■国際キャッシュカード
口座さえあれば、国内と同じ感覚で海外のATMから現地通貨を引き出せる国際キャッシュカード。数カ国を周る旅行でも非常に便利です。ただ、クレジットカード等と違って、紛失・盗難などのトラブルに遭った場合に海外で再発行ができないのがデメリットです。
■日本円
現地で両替をする予定のときはそれなりの額を、日本で両替を済ませるとしたら少額を予備として持っていきましょう。少額の両替にも対応できるよう、千円札も多めに持っていくと便利です。空港から自宅までの交通費など、帰国後に使用予定の日本円は、現地についたらまとめて別の場所に保管しておくことをおススメします。
以上から総合的に考えると、ATMが発達した国では小額の現地通貨と現地通貨を引き出せるカード類を所持しておくのが利便性・安全性の面でおススメです。ATMがあまり発達していない国では、現地通貨と日本円を所持しておく必要があります。そのような国での両替は、一般的に日本より現地でしたほうがレートが有利なようです。
さて、これらのお金やカード類は、旅行中はどうやって管理するのがいいのでしょうか。
2.どうする? お金の持ち運び〜リスク分散のススメ〜
まず、必要最小限の現地通貨は、すぐに取り出せるメインの財布に入れておきましょう。旅行中は使わないカード類、運転免許証などは日本に置いておくのが無難です。もっといいのは財布ごと日本に置いておき、安物でいいので旅行用に、軽くて使いやすい財布を用意しておくこと。日本と比べて紙幣の利用率が高い国が多いので、札が別に入るタイプが便利。チェーンでカバンと繋げられるタイプもオススメです。
次に、まとまった現金に加えてクレジットカードやプリペイドカードなど、高額の買い物が可能なものは、外部からは分かりにくい隠し財布に入れておくことをお勧めします。代表的なものは「首から下げるタイプ」か「腹巻タイプ」。首から紐で下げて服の内側にしまうタイプは、中身を取り出すのは簡単ですが、紐が外から見えるため、物盗りに引っ張られてしまう可能性も否定できません。一方腹巻タイプは、安心感は抜群ですが取り出すのが面倒なのが難点。いざ使うときに、人前でベルトを外してガサゴソする破目にならないように、直前に中身を出しておきましょう。なお、スカートの場合はいつのまにか腹巻がずり落ちていた、なんてことがないようにご注意を。こうして財布を2つに分けておけば、万一スリや引ったくりに遭ったときでも、被害は最小限で食い止められます。
その日に使う予定がない現金や予備のカード、予備の日本円などは、パスポート(アメリカなど、パスポート携帯が必要な国を除く)となどの貴重品と一緒にホテルのセキュリティボックスに置いておくのがベストです。ただし、くれぐれもチェックアウトの際に取り出すのを忘れないように。なお、セキュリティボックスがないホテルの場合は、フロントに預けるか、これらも隠し財布に入れておくことになります。
これらに加えて、T/Cの控えやカードの番号、盗難・紛失時の連絡先など、いざというときに必要な情報は、スーツケースと携帯用カバンなど、複数の場所に忍ばせておくのがいいでしょう。
「再発行できるカード類はそれほど厳重に管理しなくても」と思うかもしれませんが、手続きのために貴重な旅の時間をロスしてしまうのはやはりもったいないものです。ある旅のベテランの人は、不測の事態に備え、上着の内ポケットや手帳カバーの裏、あるときは靴の中敷きの下にまで予備の現金やカードを忍ばせているそうです。もちろん渡航先の治安にもよりますが、あらかじめできる限りのリスク対策をしておいたほうが、行く先々で必要以上に身構えることなく、思いっきり旅を楽しめるのではないでしょうか。
文・奥村裕美子
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